even if you...4 - つね   様

『異変』







(なんで…なんで西野が……精神科…なんかに…?)




つかさのことが心配になった淳平はその日の夕方からずっとつかさの家の前でつかさの帰りを待っていた。








そして、一時間後…



つかさとつかさの母が道の向こうから歩いて来た。







「淳平くん!?」





「西野!」




「どうしたの!?こんな時間に。」



「あ、うん。ちょっと話したくなってね。」




そうして話していると、つかさの母が話し掛けてきた



「あなたが淳平くんね。つかさから良く聞いてるわ。これからもつかさをよろしくね。」


「あ、はい。こちらこそよろしくお願いします。」




「つかさ、じゃあ先に帰ってるから話してらっしゃい。」




「うん、わかった。」


そうして、つかさの母は家に入っていった。


「ここで話すのもなんだし、公園でも行こうか。」



つかさが微笑みながら言った。その笑顔は精神病院なんかとは全く無縁のものだと思えた。



「うん。じゃあ行こうか。」













そして二人は公園に入り、ベンチに座った。







しばらく経って淳平は呟くように言った。



「西野…大丈夫なのか?」




「えっ、大丈夫だよ。今日はちょっと用事があってね…」



淳平は真実を聞こうとして言った。










「用事って…嘘だろ」



「なんで?ホントだよ。」


つかさがごまかそうとしているのは、簡単に感じ取れた。






「西野、今日……、西野が病院に入って行くの見たんだ……。」





つかさの顔が突然曇る。



「……そっか…。」


俯いて、そう言った。





「西野、本当のこと話してくれ。俺達恋人同志だろ?何でも話してくれれば良いから。」





淳平は何とかしてつかさの力になりたかった。いつもははっきりしない性格だが、つかさの恋人としての自覚が思い切りと勇気を与えていた。








「淳平くん、ごめんね。」



そう言って、つかさは自分の頭を淳平の胸へうずめた。




「あたし、自分でも何が何だか分からないの。」


「パティシエになるために頑張らなくちゃいけないのは分かってる。」


「でも……最近急に前に進むのが怖くなるときがあるんだ……それでバイトに行くのも急に嫌になっちゃうんだ……」


「何でかは自分でもよく分からない。別にケーキ作りが嫌になった訳じゃないのに…。でも今は、何故か怖いんだ…進むことが…生きることが…」



「それで、あまりに変わっちゃったあたしを見かねて、お母さんが今日病院に行ってみようって言ったんだ…」







「そうだったんだ…。    西野、これから俺の考え言うね。今西野が苦しんでるのは、きっと、幸せな未来のための苦しみなんだよ。そう考えれば少しは楽になるんじゃねーかな。」  



「それでも、それでもダメなときは、俺がいるから。」


「いつでも話を聞くし、俺の前では、いくら泣いても良いから。」









淳平は精一杯つかさに想いを伝えた。









「うぅっ…、淳平くん…、ひっく…、ありがとう…」




つかさは淳平に抱きしめられたまま泣きじゃくった。














つかさにはその後もバイトに行けない日々が続いた。




淳平は毎日つかさに会いに行き、遅くまで話していた。


淳平といるときのつかさはとても元気で、いつも笑顔だった。




それでも、まだバイトに行くことだけはできなかった。




そして、だんだんとバイトを休んでいる自分を否定することが多くなっていった。


その度に淳平は必死につかさを慰め、勇気を与えていた。今のつかさには淳平が大きな、大きな支えになっている。







そんな状況のまま、夏休みの最後の日がやってきた。



この日もいつもどうりにバイトを済ませた淳平はつかさの家に向かっていた。






そのとき前から唯が必死で走ってきた。



「どうしたんだ!?唯。」



唯は息を切らしながら言った。



「ハァ、ハァ…、さっき、西野さんが…、倒れて、病院に運ばれたって…、淳平の家に電話がかかってきて…、」







(…え…?)






淳平は持っていた荷物を落とした。



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