Thank you for your love 4 - つね  様



君といる時間は楽しくて、辛いことも苦しいことも全部吹き飛ばしてくれる




僕は君にどれだけたくさんの笑顔をもらっただろう






だから、今度は僕が支えたい






君が辛いとき、苦しいとき、君を笑顔にしてあげれる、君を支えてあげられる、





君にとって、僕はそんな存在でありたい










-Thank you for your love 4-









パリに来て一週間が経った。


西野とずっと一緒の毎日。


そんな幸せな毎日に異変は起きる。







「西野、大丈夫なのか?」


「うん、少しは楽になった…」


最近やけに西野が体調を崩すことが多い。


今日も食事を戻した。


「じゃあバイト行ってくるね。」


そう言う笑顔は無理して作っているものだと分かる。


「でも、そんな体調じゃあ…」


「そうよ、つかさ。病院に行ったほうがいいわ。」


俺が言い終わる前に西野の母が西野を止めた。


結局西野も説得に応じて病院に行くことになった。
























病院の待ち合い室、


西野の診断結果を待つ間、不安な気持ちでいっぱいだった。













診察室のドアが開き、中から西野が出てきた。


「西野、どうだった?」


その瞬間、俺は西野に駆け寄った。


「うーん。そんなに大変な病気じゃないみたいだけど、検査も含めて少し入院することになるみたい。」


そう言う西野の顔色はまだ優れない


「そっか。でも重病じゃなくて良かった。」


それでも俺は少しホッとした。


確かに西野の調子が悪いことには変わりはないけど、俺はもっと悪い事態を想像していたから。

















その後、西野の入院のための準備をするために、俺は一度西野の家に帰った。


西野の両親に頼まれてのことだった。


西野の両親は病院に残って入院の手続きをしている。




俺は西野に言われたものを一通り揃えて部屋を出ようとした。


いつも良く聞く、俺の一番好きな曲を口ずさみながらドアに手をかける。


そのとき、


「あ、そうだ。」


俺は西野の枕元に置いてあるMDプレイヤーを手に取った。


その中にはあの時、二人を引き寄せたあのお気に入りソング。


「これ持って行ったら西野喜ぶだろうな。」


そう思いながら俺は家を出た。





















病院に着き、俺は西野を探した。


どこの病室にいるのか分からなかったけど、受付にいる人もすれ違う白衣の人も日本ではあまり見たことのない顔。


フランス語を話せない俺には会話ができない。


そんな俺は病院の廊下を適当に歩いた。












しばらくすると病室の前の椅子に座っている西野の母を見つけた。


「あ、お母さ…」


声を出しかけた俺はその表情を見て固まった。


「…え…と…どうしたんですか…?」


西野の母さんの目からは涙が流れていた。


俺に気付いた西野の母さんは口を開く。


「…淳平くん…」






その瞬間、急に不安な気持ちになった





嫌な予感がする。




西野の母さんが流した涙はどうか俺の予想と違う理由からであってほしい。





「…つかさは…」





























「…あと3ヶ月生きられるか分からないの…」

























何が何だか分からなかった。







目の前が一気に真っ暗になって、






未来の希望なんて一瞬にして崩れ去ってしまった。





なんで…





西野に会いたくて、西野が必要で、西野のことが本当に好きで、




もう一度あの時に戻りたくて、






パリに来て、また一緒になれたと思ったのに…





僕の願いはいつも叶っては消えていく





運命は僕らだけをいつも苦しめているようで…






こんな思いをするのなら、パリになんて来なければ良かった…



















しばらく経ってから俺は目の前にあるドアを開けた。


ベッドの上には少しつまらなそうにする西野。


俺は西野に近づき話し掛ける。


「西野、言ってたもの一通り持って来たよ。」


「ありがと、淳平くん。」


俺の声を聞いた西野は嬉しそうに笑った。


自分の病気のことを、西野はたぶん知らない。


その無邪気な笑顔が今日は切なくて、涙が零れた。


「どうしたの?淳平くん。」


「あ…」


俺は急いで涙を拭いた。


そしてまた明るく振る舞う。


「ごめん、何でもないよ。」






「それより西野、これ。持って来たんだ。」


俺は手に持ったMDプレイヤーとMDを西野に見せた。


「淳平くん、それ…」


「そう、俺達二人のお気に入りソング。」


俺はそう言って西野に向かって微笑んだ。


その瞬間に西野も笑顔になる。


「早速聴いてみようよ。」


そう言われて俺は西野の側に行く。





MDプレイヤーのスイッチをいれれば流れてくるあのメロディー、





しばらく経って西野が口ずさみ始めた。


それにつられて俺も口ずさむ。





二人で歌うと…




心が一つになるみたいで嬉しくて…




この歌を聞いていると、希望が少し見えるような気さえもした。



















その二日後、俺は西野のお母さんを通じて病院の医院長に頼んだ。


『西野の命が限られたものなら、どうか西野を退院させてやってください』と。



残された僅かな時間。


その間、ずっと西野に最高の笑顔でいてほしい。西野を幸せにしたい。


今俺に出来ることなんてそれくらいしかなかった。











その翌日、西野は退院した。


その日の夜、西野の家族と俺は西野の退院を祝った。


そしてその後西野と俺は部屋へ入った。


ドアを閉めて俺は西野に話し掛ける


「西野、明日一緒にどこか行こうか。」


いつもは西野からの言葉。


その言葉に少し驚いたようにした西野だけどすぐにいつもの笑顔に変わる。


「パリでの初デートだね。」


『デート』


その言葉に少し照れながら、俺は眠りについた。



















そして次の日、二人で公園へ行った。


公園へ足を踏み入れた瞬間、俺はあまりの綺麗さに驚いた。


そんな俺の顔を覗き込むようにして微笑む西野。


「パリの公園ってすごいでしょ。淳平くんに見せたかったんだ。」


西野は少し得意げに言う。






たくさんの遊ぶものがある訳では無いその空間、


その中で西野は俺を飽きさせない。


一緒にお弁当を食べたり、


集まって来た鳩に餌をやったり、


そのたびに見せる様々な表情。





どんな綺麗なものを見ているよりも西野を見ているほうがずっと楽しかった。





もし神様がいるのなら、





どうかずっと西野の隣にいさせてほしい。




ずっと…ずっと…




他には何もいらないから、





それだけでいいから…



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