Thank you for your love 5 - つね 様
僕は君といつまで一緒にいられるのだろうか。
こんなにも幸せなのに、
誰がこんな運命を決めたのだろう。
もし、あの日に帰れるのなら…
何度もそう思った。
-Thank you for your love 5-
西野は病気とは思えないほどの明るい表情を見せた。
それでも体調を崩すことは以前よりも多くなり、体も確実に細くなっていった。
そして、冬に入り雪が舞い散るある日、
西野が倒れた。
病院に運ばれ、病室の前で聞いた絶望的な言葉。
「もう、助かる見込みはないでしょう…」
その三日後、
最期の時がやってきた。
「淳平くん、約束…守れなくてごめんね。」
申し訳なさそうな西野、
「約束って…」
「ほら、約束したでしょ。『ずっと一緒にいよう』って。」
「…西野…」
西野の言葉に涙が溢れた。
「…淳平くん…泣かないで。」
俺の頬に西野の手が触れた。
「最後には淳平くんの笑顔を見ておきたいから。」
俺は涙を拭いて西野に笑顔を見せた。 西野の願いなら何でも叶えてやりたかった。
「うん。淳平くんにはやっぱり笑顔が似合うよ…」
西野はそう言って微笑み、そのまま目を閉じた。
…西野が余命3ヶ月の宣告を受けてからちょうど3ヶ月と1日経った雪の降る日だった…
朝目覚めてベッドの上を見る。
布団をめくり、君を探すけど、そこにはもう君の姿は無い。
ドアに目を移す。
(コラ、淳平くん!朝ごはんできてるぞ!早く起きろ!)
いつも聞こえていたあの元気な声が、今日は聞こえない。
起き上がろうとした俺の手がリモコンのスイッチに触れた。
しばらくして流れだす、優しいあのメロディー。
二人でよく一緒に歌っていた。
苦しいときいつも聴いてた。
(この曲ね、あたしの一番のお気に入りなんだ。この曲聴いてると前に向ける気がして、)
(それならこの曲はあたしたち二人のお気に入りソングだね。)
…だけど今はどんな歌より悲しく聴こえる。
「うぅ…西野…」
涙が止まらなかった。
君はもう、会えない人に…
あんなに同じ未来を描いていたのに…
(淳平くん、淳平くんは今叶ってほしい願いってある?)
(あたしはね、あるよ。)
(それはね、淳平くんとずっと一緒にいることなんだ。)
(ずっと、ずっと一緒にいようね…)
やっと出会えたと思って、これからもずっと一緒にいられると思ってたのに、
こんなにも早く別れが来るなんて、
まだ話したかったのに…
まだ手をつなぎたかったのに…
まだ一緒にこの歌を歌いたかった…
……ずっと一緒にいたかった…
『ずっと一緒にいようね』
あの日交わした二人の願いは叶わなかった…
それから1年後、
あの日、付き合い始めた公園のベンチに腰掛けて空を見上げる。
あの時と同じ星空、
その星空を見ながら、心の中で話しかける。
(西野、ずっと君がいなくて寂しくて、悲しかった。)
(でもいつまでも悲しむのはもうやめたんだ。)
(俺にはまだ未来があるから。)
(だから…俺は西野の分まで生きていこうって決めたんだ。)
(西野のことは一生忘れない。俺は西野のことをずっと愛してる。そして、今伝えたい…)
最後は声に出して言った。
「…西野…ありがとう…」
-Thank you for your love- Fin