2004夏・赤丸ジャンプ読みきり「しーもんきー」二次創作
S M PHANTOM - strike blue 様
デ ュ イ イ イ ィ ィ ィ ィ ィ ィ ン ン ン ・・・ パ ッ シ ャ ァ ァ ァ ン
『 ・・・第四隔壁 閉鎖完了・・・ おかえりなさいませ、邦夫さま・・・ 』
鵺(ぬえ)な『彼女』を胸に抱いた邦夫の背後で 研究所と外界とを隔てる壁の最後の一枚が閉じられた
マシンな『彼女』は 変わらぬ いつものアナウンスを終えると いつもの沈黙の『彼女』にもどった
ヴォン ・・・ ジ ジ ジ ジ ジ ジ ・・・
にぶい点灯音を響かせて 壁の内側の意外に広い空間に立ち並ぶ いくつものナトリュウム灯が
オレンジ色の輝きを増してゆく
ヘスペリスな青に染まりつつあった 薄暮色の夕闇の空間が
濃いオレンジ色の いくつもの帯に敷き詰めてられてゆく
敷き詰められてゆくオレンジの帯に巻きつかれて その大きな影を浮かび上がらせる ソレ が 邦夫たちの前に現われた
「 ききい・・・? (訳 うわあ・・・?) 」
『彼女』が邦夫の胸の中で感嘆の声を上げた
『彼女』でなくとも ソレを見上げた誰もが 驚きの声を上げるだろう
およそ 研究所 と 名の付くトコロには あまりにも似つかわしくない ソレ ・・・
なぜ このようなモノが 最先端科学の研究所に在るのか ・・・ ???
不思議の表情で ソレ を 見上げる『彼女』に 邦夫が少し照れくさそうに説明する
「 驚いたかい? 紋樹・・・ 俺ん家・・・ もともとは 神社 なんだ。 」
オレンジ色に染め上げられた二人(?)の前に立ちそびえる ソレ は しっかりとした石造りの 鳥居 だった
“ 伊勢猿田彦神社 ”
オレンジ色に染まった鳥居の掲げる 名称の額(がく) には そう印されていた
「 きぃ・・・? (サルタヒコ・・・?) 」
オレンジ色に照らされた『彼女』が 不思議の声を上げて小首をかしげた
「 そう・・・ “伊勢”猿田彦神社・・・ 伊勢家が先祖代々護って来た 由緒ある社(やしろ)さ・・・ 」
オレンジ色に輝く 鳥居 を 見上げながら邦夫は誇らしげに答えた
「 ・・・・・・ もっとも ・・・・・・ 巫女 をしていた おふくろ が死んでからは ・・・ 神社らしいことは ・・・ ・・・ ・・・ 」
オレンジ色に光る 名称の文字 に すまなそうに邦夫は瞳を閉じ 思い出すように言った
「 きっ!? (死んだ!?) 」
オレンジ色に浮かび上がる『彼女』が 驚きの表情で うつむく邦夫を見上げた
「 ・・・ ・・・ ・・・ 」
うつむいた邦夫は・・・ 答えなかった・・・
ただ・・・ 閉じた瞳が・・・ どこか遠くの誰かを・・・・
さがしていた
もう 二度と 逢えない そのひとを
さがしていた
「・・・きい・・・ (・・・邦夫さん・・・)」
紋樹は
はじめて
おとこのひとの
なみだを
みてしまったような
そんな
きがした
「 きき・・・(泣かないで・・・) 」
紋樹は 腕を 精一杯に伸ばし 邦夫の頬に掌を添えた
・・・ひやり・・・
邦夫の頬は とても冷たかった
吹き始めた 秋の気配の夕闇の風のせいだけじゃなかった
邦夫の頬は とても冷たかった
・・・ひやり・・・
紋樹は 邦夫の頬に添えた 掌が 悲しく濡れてゆくのを 感じていた
「 ・・・きぃ・・・ (・・・邦夫さん・・・) 」
紋樹は 『人間』 ではない いまの自分の身体(からだ)が この時ほど 恨めしく思えた時は なかった
「 ・・・ぃ・・・ (・・・ごめんなさい・・・) 」
から から から から ・ ・ ・
「 ただいまあ〜 」
邦夫は 薄暗い玄関から 誰も居ない家の 長い廊下に呼びかける
これが むかしからの 邦夫の習慣なんだろう
たとえ ソコに 出迎える者 が もう誰も居ない と わかっていても
邦夫は まだどこか 母の気配のする この長い廊下に 呼びかけずには いられなかった
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ し ー ん ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
沈黙だけが 邦夫を 出迎える
そう ・ ・ ・
少なくとも 邦夫 を はじめ 人間 には 沈黙の闇 しか そこには何も感じる事は 出来ない
だが ・ ・ ・
【 おかえり ・ ・ ・ 邦夫 】
長い廊下の奥から 確かに聞こえて来た その声 を タイプM の 紋樹 は 聞き逃さなかった
「 きっ! ききっ? きききき?! (なっ! なにっ? 誰か居るの?!) 」
長い廊下の奥の闇に 紋樹 は 怯えた声で 呼びかけた
「 どうしたんだ? 紋樹? なに震えてんだ? 」
邦夫は 急に胸に しがみつき震えだした 『彼女』 を 見下ろした
そして やさしく抱き締めながら 『彼女』 の 怯える視線の行く先を 追った
もちろん 何も 見えるはずもない・・・
「 ・・・・・・・・・何も無いよ・・・紋樹・・・ ・・・急に環境が変わったからかな・・・??? 」
「 ・・・・・・・・・き・・・ (・・・・・・・・・でも・・・) 」
紋樹は 長い廊下の奥を もう一度 見澄ましてみた
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ し ー ん ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
そこには ただ 沈黙する細長い闇 が 横たわっている だけだった
(?・・・・・・気のせい・・・・・・?)
何の気配も無い闇に 紋樹は そう 思う事にした
「 さあ ともかく まずメシにしよう! 腹ぺっこぺこだよう!
意外に思うかもしれないけど こう見えても 俺、 料理得意なんだぜ。
なにせ ひとり暮らしが 長いからなあ・・・ 」
「 きききい? (ほんとうですかあ?) 」
「 ほんとうだよう ・・・ あっ 紋樹、 その眼は疑っているなあ。
よおーし! 久々に マジ 力(リキ)入れて作るからなあ。 びっくり するなよう。。。 」
とた とた とた とた とた とた とた とた とた ・・・ ・・・ ・・・
小忙しく 紺色の石張りの玄関に 履き潰したスニーカーを ハの字に脱ぎ捨て
邦夫は 『彼女』 を 胸に抱き締め直す。 そして 邦夫は
小走り で 紺色の細長い闇の中を かけて行った
後に残る 沈黙の闇
いや 闇は 沈黙しては いない
ぽっ ・・・
ぽっ ぽっ ・・・
ぽ ぽ ぽ ぽ ・・・
紺色の闇に
燈色の炎が燈(とも)る
ひとつ ふたつ みっつ よっつ ・・・
鬼火 ・・・
あるいは
狐火 ・・・
つまりは
人魂 ・・・
ぼ ・・・ ぼ ぅ ぅ ぅ
紺色の闇を
燈色の炎で照らして
緋色の袴(はかま)の 巫女 が 姿 を 現した
緑色の長めの黒髪を
ひとえにまとめて
うつくしく せつなく やさしく あたたかく
そして
かなしく ・・・
彼女は 邦夫たちが 消えて行った 闇の先を 見詰めていた
そして
ひとこと ・・・
【 邦夫 ・・・ 】
ふっ
そう言うと うつくしい巫女は ふたたび の 闇 へと 還っていった
・・・ ・・・ ・・・ ・・・ し ー ん ・・・ ・・・ ・・・ ・・・
沈黙の闇が ふたたび 横たわった
いや けっして 沈黙しては いない
・・・・・・ 聞こえるかい ・・・・・・ 聞こえるだろう ・・・・・・
【 ・・・ 勇者 が ・・・ 姫 を ・・・ 連れ帰った ・・・
・・・ ヤツラ が ・・・ 活動(うご)き出すのも ・・・ 近い ・・・
・・・ ヤツラ が ・・・ アレ を ・・・ 起動(うご)かす前に ・・・
・・・ 勇者 が ・・・ 目覚めて ・・・ くれなくては ・・・ ・・・ ・・・ 】
その 闇の中で ・・・ つぶやく モノ が あった
その 闇の中で ・・・ こころ ゆさぶる 目覚め を 待つ
その もうひとつの 巨大な意思 が そこ に 在ることを ・・・
その もうひとつの 巨大な意思 に もう 関わっていることを ・・・
神ならぬ身の 邦夫 が
知る由も 無かった ・・・ ・・・ ・・・
She Monkey PHANTOM some time ... some day ...
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