【3章    2度目の初めまして】 - りゅうか   様










「っえ、・・・えっと・・・・誰、です・・・か?」


そう言ったのは、彼女のよく知る、優しい彼。

 
 普段の彼からならば、出てくるはずもない、その言葉に対し、つかさ


 が言うべき言葉なら、分かり切っている。


 ただ、言いたい言葉では無かった。












  第3章     【2度目の初めまして】


 



 


 



 (なんなんだよ、この女・・・・)

 
 俺が、まず思ったことはそれだ。 


 見たことも、会ったこともない人間から、『淳平君』と下の名前で呼


 ばれて、そう思わない訳が無い。


 だが、それだけの理由で俺が、『誰ですか』と尋ねたわけでも無かっ


 た。


 さっきの言葉には、俺でさえ感じられる程の、暖かさがこもってて、


 どうしても他人とは思えない。
 

 故に言ったその言葉。


 ただ、今は、そう言ったことをしきりに後悔している。 


 (何で、あんなに・・・・)


 俺のことを見つめる、その眼には、先程の言葉と対照的に、悲しみが


 かげってて・・・。


 自分でもよく分からないけど、何故か『笑っていて欲しい』と思っ


 た。


 だけど、それもほんの数秒の事。


 後ろの小宮山が、こっちへ駆けつける頃には、消えていた。
 

 「お前、真中!学年1のアイドル、西野つかさちゃんに、誰ですか、


 は、ねぇ〜だろ!!!こんなヤツの事はほっといて!!!」


 その様に叫びだした小宮山が、俺の首もとをつかんだかと思うと、い


 きなり突き飛ばす。


 DVDを両手に抱えた俺は、それを死守するのが精一杯で、思いっき


 り、近くの塀に、頭から激突してしまった。


 「痛っ!」


 額に、割れるような痛みを感じながらも顔を上げるが、とうの小宮山


 は、こちらを向いてすらいない。


 「つ、つかさちゃん、あ、あの・・・・・実は・・俺・・・」


 俺から少し離れたそこでは、ただ今、告白シーンが繰り広げられてい


 た。


 赤面した小宮山の、その言葉を聞いて、やっと俺は、その女の正体を


 知る。


 『つかさちゃんは・・』『つかさちゃんなら・・・』『あの時のつか


 さちゃん・・』


 最近、このような種類の文が小宮山の口から出てこない日は、無かっ 

 た。


 (この女が、西野つかさ・・・マジで・・可愛い・・)


 俺の体は、西野に見つめられて、動かなくなっていた。


 こう言うのを、石化って言うのかもしれない。 


 そして意識が遠のいてきて・・・・・・・


 

 

 遠くから、何かが、倒れる音がしてくる。


 気が付いたら、なんと目の前に、西野つかさが居た。


 後ろには、瞬殺され、脱力した小宮山が転がっている。


 俺が、その様子を覗いていると、西野が俺に声をかけてきた。


 「は、初めまして、・・・真中君。あたしは、西野つかさ。同じ学校


 だと思うけど・・・」


 まただ。


 言いたくない言葉を無理に言っているように、何処か、寂しい。


 だがもちろん、そんな言葉に、俺が返事を返せるはずもなく。


 気まずい沈黙。


 目を合わさない様にするが、どうしても目が向こうへ行ってしまう。


 白くて、滑らかな肌。深く澄んだ、可憐な瞳。


 何度見ても思ってしまうが、かわいい。


 
 

 どれくらい時間が経っただろうか、ようやく、という時間をへて、


 西野が再度、口を開く。


 「・・・真中君って、DVD見るんだ・・。あ、これ知ってる!!


 ケアヌ=ルーブスが出てるんだよね?あたし、これ見たいなぁ〜


 真中君、今日ヒマ?だったら、今から見に行ってもいい?」


 きっと、俺の顔は、驚きの色に染まっているに違いない。


 だって、急に右手の袋を覗かれたと思ったら、映画の質問されて、


 次は、俺の家へ来ても良いかと・・・


 何も考えることが出来ず、俺は、とりあえず頷くだけ。


 すると、西野は、俺の手から袋をとって、家の方向へ歩き出した。


 「じゃぁ、行こ」


 肩越しにそう言い、手招きする。


 俺は、西野のマイペースぶりに唖然としてしまってて、出来るのは、


 その後を追いかけるだけ。


 (何で、俺の家が分かんだ)




 




















































































その場に残ったのは、放心状態の小宮山、ただ一人だった。




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