素顔 6 - 金魚  様

素顔6 〜ドキドキ☆エレベーター〜


・・・・・

どれくらい沈黙が続いているだろうか

つかさはあまりの驚きで動くことすらできなかった

ただ、確実に自分の心臓の音が聞こえていた

(自分の心臓の音なんて初めて聞いちゃった。すごいドキドキするよぉ〜)

おもむろにつかさが立ち上がった

別にすることは無いが、今の状況に耐え切れなかったのだろう

つかさは何かしようと色々考えた

そしてあの日の記憶がよみがえり、同じことをしてみた

『プルプル・・・』

エレベーターについてる電話機能だ

しばらくして男の人の声が聞こえた

「はい、どうされましたか?」

「あ、あの、エレベーターが急に止まっちゃって・・。」

男の人は慣れた口調で話し始めた

「わかりました。すぐに確認してみます。もう少々お待ち下さい」


「・・・ふぅ〜」

つかさからため息がもれる

ふと、淳平を見てみると、こちらを向いて微笑んでいるのだった

つかさもつられて笑顔になる

(こんな状況なのに、なんか少しワクワクしてるかも)



























しばらく経ったが、状況は変わらない

淳平は何を考えているのかじっとつかさを見つめていた

突然、淳平の視界からつかさが消えた


『バタッ』

「・・!!つかさっ!!!」

つかさが倒れたのだった

今は冬、しかも夜だ。ただでさえ冷え込んでいるのにミニスカで過ごしていたのだ

今まで耐えていたのがすごいくらいだった

つかさは震えていた

淳平はそっと抱きしめた

「つかさ、大丈夫だからな。すぐ出られるさ」

「・・・・・・・・・・ぅん」

弱弱しい声と共に寝息が聞こえてきた

安心と疲れで眠ってしまったのだ

淳平はつかさの笑顔を見つめていたが、やがて深い眠りについた



























『ガコンッ』

「すいませーん!大丈夫でしたか?」

係りの人たちが入ってきた

2人は目を覚ました

「「・・・ん・・・」」

「大変ご迷惑をおかけいたしました。少々機会の調子が悪かったみたいで」

「あ、いえ、大丈夫です」

眠そうに答えたのは淳平だった

つかさは『本当にちょっとか!』と突っ込みたかったが

淳平が答えたので言葉を飲み込んだ


2人はお詫びにと1回カラオケ無料券をもらい、店を後にした

外に出てみるともう太陽が昇っていた

「うわぁ!まぶし〜〜〜」

淳平はのんきだが、2人は一夜を過ごしたのだ

(お母さんとお父さん、怒ってないかな?)

心配しているのはつかさだけのようだ

「あ、ごめん。俺もつかさん家に行って一緒に誤ろうか?」

(あ。まだ『あっち』の淳平くんなんだ・・・。)

「つかさ?」

「え、あああ・・!!い、いいよ!淳平くんが行ったら変な想像されちゃうかもしれないし・・・」

自分で言ってから顔を赤くするつかさ

それから、誤魔化すためにこんな言葉も付け足した

「それに、淳平くんが悪いわけじゃないしさ!無料券もらったからまたデートしようね!」

「うん、そうだな!」

2人は一度別れた




























「・・・はぁ〜〜〜〜」

つかさは家の前でうろうろしていた

一生懸命言い訳を考えていたのだった

「どうしよう・・。思いつかないよぉ〜」

第一に浮かんだのはトモコだった

しかし、親が多分、確認の電話を入れているだろうと予測し、一瞬でやめた

しばらく考えていると、後ろから声をかけられた

「つかさちゃん!」

はっっと振り向いた

つかさの母だった

手には買い物袋を持っている

(もう駄目だ・・・・・・・)

つかさが諦めかけたそのとき、先に口を開いたのは母だった

「おかえりなさい。早かったのね」

「・・・・・・・・・・」

つかさは反応できなかった

あまりにも予想外の言葉に脳が動かなかった

「早く入らないと風邪引くわよ」

そう行ってつかさの母は中に入っていった

「・・・・・・・・」

つかさは黙ってその場に立ち尽くしていた

・・・・・・・10分後・・・・・・・

つかさの口がやっと動き出した

「はぁ!?」



つづく