素顔 4 - 金魚 様
素顔4 〜淳平ルーレット〜
AM8:00
決して遅くはない時間
いや、早すぎるほどだ
つかさは淳平の家の前に立っている
(淳平くん、大丈夫かな・・風邪でもひいてなければいいけど)
もちろん、メインの目的はそれではない
今日の淳平は『どっち』なのだろうか
期待に胸を膨らませ、玄関のチャイムを押す
『ピンポーン』
チャイムの音が響き渡る
『ガチャ』
しばらくして、淳平の母親が姿を現した
「あら、つかさちゃん!早いわね〜。淳平とデート?」
にんまりした顔で言うその顔は、どこかあたしの友達に似ているな〜と思いながら、つかさは答えた
「いえ、今日は違いま・・・・・・・」
つかさが答え終わる前に、淳平の母は淳平を起こす試みをしていた
「淳平〜!!起きなさい!!!」
2階から返事は無い
より一層大きな声を張り上げる
すると、2階から弱弱しい声が聞こえてきた
「・・うるっさいなぁ〜昨日は遅くまで映画の整理してて疲れてんの!寝かせてくれよ〜」
不機嫌そうに答える淳平に対し
「いいのかな?玄関で愛しい恋人が待ってるのに・・・」
「え!?」
淳平はいきなり飛び起き、もぞもぞと動き回っていた
『ドタドタ・・・・ツルッ・・ゴォォン!!!・・・・・・ドタドタ・・・・・・』
途中、鈍い音がしたような気がするが・・・
慌てながら淳平が出てきた
頭にこぶ一つ付けて・・・・・・
「西野?どうかしたの?」
つかさは淳平の言葉ですべてを悟った
(今日は『こっちの淳平くん』かぁ)
『こっち』というのはすなわち『こっちの世界』のこと 普通の、いつも通りの淳平のことだ
『あっち』・・・理想の淳平は、つかさにとって別世界の人なんだろう
今日は普通の淳平だから『こっち』らしい
「ただ、昨日突き落としちゃったから風邪ひいてないかなぁって」
「ありがとう、大丈夫だよ」
つかさは何故かこの言葉に違和感を感じた
「じゃぁ、せっかく来てくれたんだしデートでも行こうか」
「え!?」
つかさは想像していなかった言葉にびっくりした
(本当に『こっち』の淳平くん!?)
「何か予定あった?」
淳平が聞く
「う、ううん!!ないよ 行こっか、デート」
淳平は優しく微笑みながら
「じゃぁ、用意してくるからちょっと待ってて」
淳平は、また2階に戻っていった
(何か、いつもの淳平くんじゃない・・・)
つかさがそんなことを考えているうちに淳平がまた戻ってきた
「お待たせ」
つかさは納得がいかないまま外に出た
その瞬間
ギュッ
つかさは、背中に暖かい感覚を覚えた
「・・・」
「・・・」
「つかさ、心配してくれてありがとうな」
「ほへ!?]
あまりに意外すぎてすっとんきょうな声を上げてしまった
(うそ・・・今日は『こっち』の淳平くんじゃないの???)
「それと・・・さっきはごめん」
心当たりがなく、困っているつかさに淳平は続けた
「その・・さっき、『西野』って呼んじゃったから」
「母さんがいたから恥ずかしくてさ・・・ww」
つかさはしばらく考え込んでいたが、やっと状況が理解できた
(なるほど・・・今日の淳平くんは『あっち』の方ね)
「ううん。いいよ、別に」
つかさがやっと口を開いた
「そっか、良かった!」
淳平も笑顔になる
「じゃ、行こっか」
「うん」
リードするのは淳平
つかさは『あっち』の淳平との初デートにすごいわくわくしていた
そして2人は楽しいひと時をすごした
PM8:00
2人のデートはもう12時間も続いていた
今は、デートの帰り道らしい
「あ〜楽しかった!!淳平くん、ありがとう」
つかさは万遍の笑みを淳平にそそぐ
「つかさが喜んでくれるなら、それだけで俺も幸せだよ」
今日のデートの感想を話していると、つかさの家の前まで着いた
「じゃ、また明日ね!淳平くん」
「あ、待ってつかさ!!」
淳平は慌ててポケットから何かを取り出した
「明日さ、新作映画の試写会があるんだけど、つかさも来る?チケット2枚もらっちゃってさ」
どうやら新作映画の試写会のチケットらしい
それを2枚持ってピラピラさせていた
(2日間連続で淳平くんとデート・・。どっちも誘ってるのは淳平くん)
返事をしないつかさに、淳平は疑問に思った
「もしかして、予定あった?」
「ううん!ないよ。行きたい!」
「じゃ、明日10:00にシネマアイリス前でな!」
そう言って淳平は帰ってった
最後につかさと口づけをして・・・・・・・・・
つかさは家に帰るなり、自分の部屋にむかった
そしてそのままベットに寝転んだ
朝からずっと動いていたのでさすがに疲れたらしい
(淳平くん、すごくかっこいいなぁ・・・・)
(明日、楽しみだなぁ)
(明日もどうか・・・『あっち』の淳平くんに会えますように・・・)
そう願い、深い眠りについた
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