雪の降る日は天気が悪い 悪いはずだよ雪が降る 5. - たゆ   

『寂光』

・・・きし・・・きし・・・きし・・・

真冬の深夜、それも大雪の日・・・騒音は全て消えて普段気付かない僅かな音でさえ耳に入る。
その音が階段を上がるつかさの音だと知っている。
二人きりの家・・・慣れない家の事であっても必然であった。
雪明りが窓のカーテン越しに部屋を照らしている。
闇になれた真中の目には部屋を鮮明に見渡す事が出来るほどに明るい。

・・・パチン・・・きし・・・きし・・・きし・・・

照明を消しながら近づく足音・・・彼女の軽い身のこなしを思わせる足音・・・。

きし・・・・・・カチャ・・・と・・・と・・・

起きている事を悟られぬよう真中は狸寝入りを装う、明るい廊下から来たつかさには何も見えない。

・・・と・・・と・・・ふみぃ・・・とと・・・

慣れた自室のベットに向うつかさが真中の布団の端を踏んだ、真中の心臓が飛び出さんばかりだが気づかずベットへ。

ふか・・・バサッ・・・・・・・・・ごそごそ・・・ふーっ・・・


シーンと音の聞こえるぐらい静かな夜。


エアコンのタイマーも切れて深々と早々と冷えて更けていく。


「・・・おやすみ・・・淳平くん・・・」


普通なら聞こえないほどの小さな声は、寂光に満ちた部屋に落ちた一滴の水滴であった。
それは部屋の空気に波紋を作った、真中の心にもさわざわと波立つように。


「・・・お・・・おやすみ・・・西野・・・」

「・・・え・・・ごめん、起こしちゃった?・・・」

「あんまり寝れなかったから、西野のせいじゃないよ・・・雪で外が明るいし、朝はすごく冷えるだろうね」

「寒くない淳平くん?エアコンつけようか、毛布だそうか?」

「西野は寒くないの?遠慮しないで布団出したら、自分の家なんだしさ」



「・・・・・・」



「西野?」



「ベット冷えてて寒いんだよね、寒いと寝れないし・・・あったい布団がいいよね・・・」

「・・・えっ?」

・・・ばさっ・・・ふわっ・・・するっごそごそ・・・

「に、西野!!」
「あんまり寒いから来ちゃった、手と足が冷たいと寝れないんだよね、温めてくれる?淳平くん」
「西野・・・それは・・・無理・・・」

背中を向けると真中は固まってしまった。
いつかの言葉がリフレインする・・・『雰囲気に流されないで・・・』
(多分西野は俺の背中に頬をすりよせてくる・・・足の間にその太ももをよせてくる・・・足を温めて欲しいなら絶対・・・)

背中からつかさの腕が伸び真中をそっと抱き寄せた・・・。
ゼロ距離の二人、ほのかに明るい部屋で聞こえる音は二人の吐息と衣擦れの音。


「・・・あったかい・・・」


「・・・・・・」


沈黙は雄弁に真中の心情を語っていた。


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