雪の降る日は天気が悪い 悪いはずだよ雪が降る 6. - たゆ   

『人肌』

背中越しに感じる柔らかなボディーラインは密着しているからこそであったし、
風呂上りの立ち上るような甘い芳香は、同じシャンプーとボディーソープ使ったと思えず鼻腔の奥をくすぐり続ける。
それもまた密着しているからだ。
真中の背中には、『西野つかさ』が寄添い、腕をまわし想い人の胸の真ん中あたりでパジャマを握り締めている。

(・・・離れられない・・・)

身も心も完全にロックされている・・・何想う事もなく全ては後の少女に意識を持っていかれていた。


するり


足の間から風呂上りにしてはひんやりと冷たいつかさの足が割って入ってくる。
ヒザがヒザ裏に触れヒザの間から出てくる、足先が確かめる様に真中の足の甲に触れる。


びくんっ


少年の身体は素直に反応してくる。
心は警笛を鳴らしているが拒否できない、どの様に拒否していいのかわからなくなってると言った方が正しい。
やわらかな太ももの感触が尻から内股に感じる頃には声を出しそうになって口を押える真中だった。

そして、そして・・・

前に伸ばされていたつかさの手が真中の手を捕らえる。
指と指の間に冷たい指がするりと入り、くっと握ってきた。


「淳平くんって足も手もあったかい・・・それに大きい、男子って違うんだね」


沈黙


「もう寝たの?」


「・・・西野、俺は!」


キンと音のするほど寒い室内で布団に出ることは、せっかく温まったつかさの身体を冷やす事に他ならず、
まわされた手を振りほどき間を空けて振りむく事しか出来なかった。

「・・・ごめん・・・淳平くんが困ってるのもわかってる・・・ちょっと甘えたかっただけ・・・ちゃんと自分のベットに戻るからゆるしてね・・・」

うつむくつかさの顔は見えない、本音を吐露する時否定されたくなく正面から見せることは決してない。

(甘えたい?あの時みたいに・・・また西野は辛い思いをしてるのかな・・・俺はどうしたらいい?とうすればいい?)

離れて行く少女にもう二度と側には近寄れない気がした、言葉通り春には遠くへ行ってしまう、吐息も体温も身近なほどにはもう・・・。
気付けばすっと身を引き離れるつかさの腕をつかんでいた。
ぐっとこもる力、引き寄せられあたたかく火照る身体と高鳴る鼓動・・・いつもならひたすら隠しているそれも今は届けとばかりに真中はつかさの顔を胸に抱きしめていた。

「・・・西野のためならなんでもする・・・どうすればいい?・・・」

(あの時俺は言った、西野とならタイムマシーンに乗ってどこまでも行くって過去じゃなくて未来に・・・)

「淳平くん・・・」

つかさのか細い声が部屋にこだました。


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