雪の降る日は天気が悪い 悪いはずだよ雪が降る 4. - たゆ    

『雪宿り』

雪のせいで湿った真中の服も乾いてきた。
手早く皿洗いをすませたつかさと食後のお茶を飲んでいると、テレビから大雪警報が出ている。
外の様子が気になりだした二人は庭を見ると・・・あるはずの背の低い木々たちが降り積もった雪でまったく見えない、なだらかな銀の波に二人は子供の様にはしゃぐ。

「わぁ、きれい、真っ白だね」
「すごいなあ、こんなに積もったのも、きれいなのもあんまり見たことないよな」

漆黒の空から雪の結晶の塊がふわふわと落ちてくる、花弁の様に大きなそれは幾重にも降り積もり雪の華をあちこちに咲かせていた。
雪は雪でしかない、しかし路面を薄汚れた色で覆うものでしかたかったのに、今の二人にみえるそれは現実ではなくファンタジックな別世界が窓の外に広がっていた。
気づけば触れている二人の肩、身近にありながら遠かった二人が今は同じものを見て同じ感銘を受け、そして触れ合うところの温かさを大切に思っている。

(西野の肩ってこんなに小さかったっけ・・・)
(淳平くんの身長また伸びたのかな?肩があんなに高くて広かったかな・・・)

じっと自分を見つめる少女に胸の動悸が高まる。

「乾いたかな・・・」
「あっ、ああ、服のことか・・・乾いたら帰るよ」
「そうか・・・乾かなきゃいいのにな・・・もっと・・・もっと、雪が降れば・・・帰れないよね・・・」
「・・・え・・・」

『今なんておっしゃいました?』と聞き返したい気持ちを抑え真中はつかさの様子を食い入るように見る。

「長靴ないしとたいへんかな・・・ちょっとお父さんの長靴見てくるね」
「あっ、西野、いいって気にしなくて」

玄関で白い息の二人は長靴のサイズを見る、真中の方が足が大きく履けそうだが今度は脱げそうにない、諦めてリビングへ戻った。

「ぜったい、零度より気温下がってるなぁ、うーさみぃ」
「寒かったね〜、湯冷めしちゃうね・・・日が昇るまでこの天気だし・・・泊まる?・・・」
「と、泊まるって・・・それはそのう・・・」
「いいよね?じゃあ決まり! お布団引いてくるからここで体温めて待っててよ」
「あっ西野・・・行っちゃった・・・」
(今まで何もなかったんだから今回も何もないだろうな・・・一緒に寝転んだのは二回、同じ部屋で熟睡一回、ベッドで未遂二回・・・なんかあったら奇跡か理性が崩壊したときだなこりゃ・・・)

ソファーの上で腕組みしながら唸る真中だった。



つかさの部屋に行くと既に暖房でほかほかだった、テーブルは壁際に置かれ、つかさのベットの横に客布団が一組きれいにひかれていた。

(近い・・・近すぎる・・・でも上と下じゃ大丈夫かな、唯の時と同じだと考えれば・・・考えられないか・・・)

「じゃあ、私お風呂入ってくるね、先に寝てていいよ」
「あ、ああ・・・」
(寝ちゃえばいいんだよな・・・羊が一匹・・・羊が二匹・・・目が冴えまくりだ・・・とほほ)

入浴中のつかさの姿を想像してますます眠れない真中だった。


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