雪の降る日は天気が悪い 悪いはずだよ雪が降る 3. - たゆ
『微笑』
「寒いねえ〜、今暖房入れたら待ってね、料理作ってるあいだお風呂入る?」
「えっお風呂?」
「いいから遠慮しないで、寒かったもん、体温めてきてね、今お風呂の準備するね」
いそいそとつかさは準備する、まるで新婚の新妻の様だ。
(それよりもお前を食べちゃうとか・・・いかん、頭冷やさないと・・・)
先ほどの妄想の続きが頭の中で再現してしまわないうちに、一人になりたかった真中だった。
さっぱりとした面持ちであがると真中の着替えが準備してあった。
父の新品のパジャマ・・・封を開けたばかりのそれはのりでパリッとしていた。
「少し大きいかな? 袖と裾を折らなきゃ・・・お父さん知らないけど背は高いんだなあ」
「淳平くーん、料理できたよ〜」
「ああ、今行くよーっ」
風呂の中でこのタオルは西野が使ったものだろうか、いつもここに裸で入ってるんだよなとか妄想したのは置いといて、
リビングへ行くと夜食とも言える時間だが、きっちり夕食が暖かいままテーブルを占めていた。
「さあ、冷めないうちに食べよう!」
温かな色の照明の下で、エプロンを外しながらにっこりと微笑むつかさ。
クレソンの飾りのついたアサリとほうれん草のスパゲティー、横には粉チーズの容器、そして刻みパセリとクルトンのかかったポタージュ、
趣味のいいランチマットの上にきちんと置かれた銀のホークとスプーン・・・。
早めの入浴時間だったにもかかわらず用意されたそれらに、心がじんわりと温まる真中。
「これ、西野が作ったんだよな!! すごいよ、こんなに早くできるのもすごいし、うまそうだし」
「えへへへ、まずは冷めないうちに食べてみて、感想はそれから♪」
「「いただきまーす」」
「うまい!!マジうまいよ!!! コックにもなれるよ、こんなにうまいもんな」
「よかった、喜んでくれて、腕にのりをかけた甲斐があったよ、うふふふ」
「西野の作るケーキもうまし言う事ないな〜、前にここに来た時とは大違い・・・あっ、ごめん・・・」
「ううん、前はひどかったもん、食べた人に美味しいって喜んで欲しくて・・・だからがんばれたと思うんだ、淳平くんが喜んでくれたからすごくうれしいよ」
「あ、いやあのその・・・なんつーかさ、デザートも手作りできるし、ホント美味しいしさ・・・うん、西野すげーよな」
耳まで赤い二人、外は記録的な大雪の中なのに部屋は常夏の様に熱かった。
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