雪の降る日は天気が悪い 悪いはずだよ雪が降る 1. - たゆ    

『冬』


つかさはどんよりと曇り、町の光を反射してぼーっと明るい天空から舞い落ちる冬の使いを、手の平に受け止めていた。
結晶が見えたと思うと白磁器の様に白い手の平の中で消えていく。
今年最後のバイトも終り、後は家でのんびりするだけの彼女がゆっくりと暮れの町を歩く。
首には自分お手製のマフラーを二巻き半、白い吐息はそのままにシャーベット状の雪の上を用心深く歩いていく。

(今日は遠回りして帰ろうかな、家には誰も居ないし、コンビニに立ち寄って温かい飲み物と晩御飯になるおでんか何か・・・。)

一人暗い家に帰る事にもなれて就寝するまでの時間割を考えていた。



真中は今年最後の塾も終り、こずえを路面電車で送り再び家路に向かうところだった。
カバンの中には未だ手付かずの様々なテキスト、正月明けにあるセンター試験の過去問集などがぎっしり入っている。

(重い・・・こんなにくれなくても今更・・・でもやらなきゃなあ・・・浪人確定か・・・)

現実を前にして心そぞろに浮き足立つ、そんな自分を冷静に眺めている。
・・・自分の道に向かい去る人、精一杯の気持ちで全てをさらけ出し来る人、そしてそのまま変らずそこにいる人・・・
追いかける事、も受け入れる事も、同じ土俵にさえ上がる事を拒んだ自分に居場所はなくなっていく事に気付く。
子供っぽい執着心でここまでずるずる来た感は否めない。

「うひゃーっ ますます本降りだなあ、コンビニよって肉まんでも買うかな〜、寒い寒い〜」

バスを降りると家の近くのコンビニへ小走りに向う。
ちらほらと舞うだけであった雪も今や深々と降り積もってきた。


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