親から子へ・・・プロローグ takaci様
朝の山道・・・
黄色のセンターラインが引いてはあるものの、道幅は決して広くない。
平日は交通量もほとんど無く、穏やかである。
多数の木々も生い茂っており、時折聞こえる鳥のさえずりが静かな空気を演出している。
ウォオオオン・・・・・・
そんな空気を響かせるエキゾーストノート。
音域を上下動させながら、その音は次第に大きくなってくる。
フォオオオオオン!!!フォンフォン!!!
音が最大に達したとき、2台のオートバイが姿を現した。
黒い車体に黄色のジャケット、鮮やかなパステルカラーに彩られたヘルメット姿のオートバイが前を走っている。
そのすぐ後には、濃紺の車体に同じく濃紺のジャケット、ブルーメタリックのヘルメットを身に纏ったオートバイ。
この勇ましいサウンドは、後ろのオートバイから発せられていた。
2台のオートバイが過ぎ去ると、ドップラー効果によりサウンドは急速に低く、小さくなっていった。
しばらく後には、また静かな山道に戻っていく・・・
「ちっ・・・」
後ろを走るブルーメタリックのヘルメットの中で、濃紺の愛機に跨る人物が舌打ちをしていた。
コーナーの立ち上がりで前を走るイエローのジャケットが、少しずつ小さくなっていく。
(やっぱ立ち上がりは敵わねえな。でもこの先の全開区間で追いつく)
ふたりのライダーはそれぞれの愛機のカウルに身を隠すように小さくなり、短いストレートを駆け抜けていく。
(・・・・・・80・・・・・・・120・・・・・・150・・・・・・)
後ろのライダーは左足で段階的にレバーを蹴り落としながら、冷静にスピードメーターの表示を確認する。
そして予想通り、黄色のジャケット姿が少しずつ近付いてくる。
遅れをほぼ完全に取り戻した時、ふたりは揃って上体を起こしてコーナーに向けて減速状態に入った。
(・・・・・・・今日は168か・・・・・・まあ悪くないな・・・・・・けど抜くまでには行かないか・・・・・・ここからはマシン特性の差もあって、付いていくのもしんどいんだよな・・・・・・)
ブルーメタリックのヘルメットの中でそんなことを考えながら、前を走る黄色のジャケットを追いかけていく。
これが、このふたりの日常であった。
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