[memory]15 - takaci  様



時は少し遡る。


綾に鑑定結果が伝えられた翌日の夜、東京都内に構えるとある一流商社社長の大きな家に3人の男が集まっていた。





「この長戸の部屋に集まるのって何年ぶりかな?」


「3年ぶりだな。みんな就職してからいろいろ忙しくなってるからな。でも官公庁勤めのふたりより俺のが絶対忙しいと思うぜ」


「いくら官公庁でも俺と上杉は言わば国を動かす仕事だ。そこいらの公務員と一緒にするなよ。俺からすりゃあ御曹司のボンボンの長戸の方が楽してると思うけどな」


「相変わらず森友は厳しいな。でも社長の息子ってのはいろいろ自由が利かないものなんだよ。まあこれはその立場に成ってみねえとわからねえだろうけどな」





社長の息子である長戸は、この部屋の主であり3人をまとめるリーダー格だ。


森友は総務省勤めでいわゆる官僚候補。3人の中では最も明るくムードメーカー的な存在。


上杉は警察庁務めでこちらも官僚候補。無口でしゃべる事は少なく、表情に感情が表れることがほとんど無い。


今年で27歳になるこの3人はそれぞれが社会的地位を持ち、順風満帆の人生を歩んでいる。





「で、今日のこの召集は何だ?言い出したのは上杉だって聞いたけど?」


「ああ。でも俺もまだ理由は知らない。なあ上杉、全員揃ったから本題に入ってくれ」


長戸と森友は部屋の隅でノートパソコンを操作している上杉に注目する。





「perfect crimeが崩れた・・・」


上杉はノートパソコンの画面を睨みながら表情を変えずにそうつぶやいた。





だが、それを聞いた二人は無表情ではいられない。


「な、なんだって!?」


慌てる森友。


「上杉、どういう事か詳しく話せ!」


長戸は低い声で上杉に詰め寄った。





この3人は揃って大の女好きであり、数多くの女性を毒牙にかけてきた。


特に学生時代の行動は最も酷く、女性を拉致監禁し、陵辱の限りを尽くし、最後は海外のマフィアに売り飛ばすという非道行為を繰り返してきた。


細かい計画設計や下準備を上杉が行い、力仕事関係は森友の役目。


そして全体のとりまとめ、マフィアとのパイプ役がリーダー格の長戸の仕事だった。


こうして3人は4年ほど前までこのような行為を続け、海外に売り飛ばされた数人の女性はいずれも行方不明扱いになっている。





そして中でももっとも残忍かつ非道な行為が、先ほど上杉が口にした「perfect crime」だ。


この3人は数多くの女性をターゲットリストに収め、常にその頂点に位置していたのが西野つかさだった。


しかしつかさの行動には拉致できるような隙が無く、手にかけるのはほぼ不可能と思われていた。





だが、その状況にも転機が訪れる。


長戸が大阪に行った際、つかさそっくりの女の子を見つけたことにより、最悪の計画が動き出す。


それまでこの3人は人の命まで奪ったことは無かったが、最高のターゲットをこの時ばかりはその一線を簡単に越えてしまった。





夜の西野家に進入し、まずつかさの両親を殺害。


その後つかさ本人の身柄を拘束し、大阪で見つけたつかさそっくりの女の子の遺体を代わりに放置し、家に火をつけ逃走。


若干の想定外の事態は起こったが、それでも迅速かつ冷静に対応できたので反抗は完璧に完了した。


そして3人はこのことを警察の捜査攪乱のために西野家に残したメモにちなんで「perfect crime」と読んでいた。





この3人に繋がるような手がかりは何も残さず、まさに完璧な犯行であったのだが、その『完璧』が予想だにしなかったところから崩れていた。


「西野つかさ、生きてるよ」


「何ぃ・・・」


「科捜研に3人の髪の毛が持ち込まれた。調べたら父と母と息子の関係だったんだけど、その母親が西野つかさで、子供は俺たちがつかさちゃんの遺体を棄ててからおよそ10ヵ月後に生まれている。それがあの事件の捜査本部に伝わったみたいで、再捜査は必至だ」


「・・・なるほどな。死人に子供は生めないからな。って事は、身代わり殺人がばれたって事か・・・」


上杉の報告で長戸の表情はさらに険しくなる。


「お、おい何言ってんだよ? だってあの時3人いっぺんにあの女をヤッてたら、突然女の心臓が止まって死んじまって・・・俺メッチャ慌ててたら長戸が『身代わりの女の地元に捨てよう』って言って、それでその通りにして今日まで何も無かったんだろ?なのになんでいきなり・・・」


森友の頭は事態を理解できずにいる。





その一方、長戸と上杉は冷静だ。


「ああ。あの時点で西野つかさは死んでいた。だから身代わり女の地元に棄てれば、ほぼ間違いなく身代わりの女として公式に処理される。しかもそこにはデカイ滝があったからあの滝壷に落とせば死体が上がらない。そう考えてあの滝に棄てたんだ」


「だろ? あの後あの場所で死体発見なんてニュース聞かなかったから俺はてっきり滝壷に上手く落ちてまだ見つかってないって思ってたんだけど・・・なんで生きてるんだよお!?」


「でも興味深いよね? だって棄てた時は完全に心臓は止まってたから死後10時間以上経過してから息を吹き返したんだよ? どうしてそんな事になったのか知りたくない?」


上杉はそう言いながら嫌な笑みを浮かべる。


「おい上杉!お前なんで笑ってられるんだ!?俺たち捕まるかもしれないんだぞ!?そうなったら身の破滅だ!!」


今にも泣き出しそうな顔で嘆く森友。


「捕まらないって。多分つかさちゃんは俺たちのことを忘れてる。じゃなきゃ俺たちはあの後すぐに捕まってたよ。 大方なんかのショックで息を吹き返しはしたけど記憶は無くしちゃったんじゃないの? 10時間以上脳への血流が止まってたんだからそれくらいあってもなんら不思議は無いよ」


「だな。生き返ったものの記憶はない・・・まあ、その後はあの身代わりの女として生きてたんだろうな。確か上岡理沙とかいったかな?」


「さすが長戸!良く覚えてるね!」


上杉はへらへらした表情を崩さない。






「な、何で長戸も上杉もそんなに平然としてられるんだよ!?いくら記憶を失ってるっつっても、それがもし戻ったら俺たちは・・・」


「落ち着け森友、お前の言うとおりヤバイ状況なのは分かってる。西野つかさは始末するよ。今度こそ確実にな!」


長戸の目が邪悪な色に満ちていく。


「いいね、その邪悪な目!やっぱ長戸は変わってないよ。 これなら集めた情報も無駄にはならないねっ」


そう話す上杉も不気味な笑顔を浮かべ、その目は長戸に負けず劣らず邪悪だ。


「上杉も相変わらず仕事が速いな。こんな奴が警察関係者とはこの国の行く末が不安だな・・・」


長戸は笑顔で呆れながらも、上杉のノートパソコンに目を移して映し出されている『情報』を頭に入れる。


今度こそ『完全犯罪』を成功させるために・・・





「こ、これで大丈夫だよな? あの女を始末すれば・・・もう俺たちは大丈夫だよな?」


森友の不安はまだ消えない。


「ああ。俺たちのやった事を知ってる可能性があるのは西野だけだ。あとの女はみんな海外に売り飛ばした。どうせ全員あの世に行ってるよ」


長戸は自信たっぷりの表情でそう話す。


「森友って臆病になったね。昔は俺たちの中でも一番ヤバイ奴だったんだけどなあ・・・」


冷やかす上杉。


「もうあの頃と違って大人で社会人なんだ。それなりに守りたいものもある。危ない橋はもうこりごりだね」


「何言ってんだい。このドキドキがたまらないんじゃないかあ。今からこんな調子じゃああっという間に老けちゃうよ?」


上杉はまるで子供のように目を輝かせている。


「お前がいつまでもガキなだけさ」


「や〜いや〜い、爺ぃ〜〜!!」


「んだとお!?」


上杉が茶化すと、森友はそれに反応して真剣に起こった。





その様子を長戸はしばらく何も言わずに聞いていたが、さすがに我慢ならなくなったようだ。


「ふたりとも止めろよ。んな事はどうでもいい。いいか、西野が死ねばもう俺たちを脅かす奴は居ない。だから気を引き締めて、絶対にへまするなよ!」


長戸がそう言うと、二人の目つきがぐっと鋭くなり、昔の邪悪な心が呼び覚ました。










長戸には完全犯罪でつかさを殺す自信があり、そうすれば脅威は完全に無くなると考えていた。


これまで自身に降りかかろうとしてきた脅威を実力で振り払ってきた経験があり、そしてそれが絶対的な自身に繋がっている。


だがその大きすぎる自信ゆえに、このとき既に小さなほころびが生まれているのに気付いていなかった。


そしてそれは数日後、とても大きくなる。




















綾が淳平につかさと淳也の事を告げた翌日の午後、外村は綾と共に仙台から東京に戻っていた。


昨夜入った突然の知らせ。


綾と共に慌てて引き返し、今朝さつきとも合流して指示された場所へと向かう。





都内某所にある、外務省の関係機関が入るビル。


そこには外務省の役人が待っており、外村らを丁寧に出迎えた。


そして3人を引き連れ、『待ち人』のいる場所へ向かう。





綾、さつき、そして外村。


3人揃って期待と不安が入り混じった表情を浮かべている。


そしてそれは歩みを進めるたびにどんどん大きくなっていく。





「こちらです」


引率の役人がそういって扉を開けた。


外村らの緊張はピークに達する。


(この先に・・・美鈴が・・・)


外村は息を呑んで部屋に入った。










「お兄ちゃん・・・」


心を奥底から震わせる懐かしい声。


慌てて目をやると、そこにはずっと再会を待ち焦がれていた肉親の姿。


5年ぶりに見る容姿はやはりやや大人びており、月日の流れを感じさせられる。


だがそんな事は今はどうでもいい。





「美鈴ぅーーーー!!!!」


外村は弾けるように飛び出すと、きつく妹の身体を抱きしめた。


「お兄ちゃん・・・お兄ちゃん・・・」


美鈴の瞳からぶわっと涙が溢れ出る。


「良かった・・・本当に良かった・・・」


外村の頬にも温かい流れが生まれる。





「美鈴ちゃん・・・」


「美鈴!!」


綾とさつきも涙を流しながら外村兄弟を取り囲む。


「東城先輩・・・北大路先輩・・・ううっ・・・」


5年ぶりの感動の再会を、涙と温かな心が包みこんだ。










そして感動の再会の後、美鈴自身の口からこの5年間の出来事が語られた。


「じ・・・人身売買!?」


大きく目を見開いて驚くさつき。


「はい、あたし五年前に泉坂で見知らぬ3人組の男に捕まって・・・そのまま東南アジアのマフィアに売り飛ばされたんです・・・」


映画の中でしか聞かないような言葉が美鈴の口から放たれた。


外村らは揃って驚きの表情を浮かべながら、ただじっと美鈴の話に耳を傾ける。





「あたし、もちろん抵抗した。でも相手は男3人で、しかも「騒いだら殺す」って脅されて・・・どうしようもなかった。 そして捕まってから数日後に薬をかがされて眠らされて・・・気付いたらそこはもう外国だったの」





「あたしはその国で最大勢力を誇るマフィアに引き渡された。で、連れてかれたのは・・・マフィアのボスのハーレムだったの」





「そこはとても豪華な造りで、十数人の女性が住んでいた。現地の国の人もいたけど、外国人も居た。あたしと同じ日本人も2人・・・あたしと同じように連れて来られた子、借金の代わりに暴力団に売られた子・・・」





「でも、そこでの生活自体は悪くなかった。時々ボスの客で嫌な男の相手をさせられたことはあったけど、そんな事はごく稀。ボス本人はハーレムの女性に対してとても温厚で優しい紳士の老人だったの」





「向こうに行ってしばらくしてから知ったんだけど、あたしはとても運が良かったの。海外に売られた日本人女性の大半は多くの男たちにメチャクチャな扱いを受けて・・・最後はボロボロになって殺されるか・・・狂い死ぬか・・・そのどちらかなの。でもあたしはとても大切に扱われたんだ」





ここから、美鈴の表情が穏やかに変化した。





「あたしはボスに気に入られた。ハーレムの外に出ることは許されなかったけど、大きな部屋を与えられて、綺麗な服や貴金属もたくさんプレゼントされた。それに使用人も何人か付けてくれるほどだったの」





「ボスは本当に優しかった。だからあたしもボスに・・・あの人に心を許した。あの人は月に何回かハーレムにやって来るけど、相手の女性はあたし以外にもたくさん居るし、年齢もあるから1日に何人も相手をするのは無理。だからあたしの番は数ヶ月に1回だったけど・・・でもその時は、本当に嬉しかったんだ」





「あたしはもう日本のことは忘れようとしてた。もちろん帰りたかったよ。でもそれは無理・・・だったら日本のことは考えない、日本の情報は耳に入れないようにしてた。だってそうしないと・・・思い出して辛くなっちゃうから・・・」





「でも、3ヶ月くらい前かな。インターネットの画面にお兄ちゃんの名前が出てたの」





「えっ!?」


驚く外村。





「あたし、さすがにその時はもう押さえが利かなくなって夢中になっていろいろ調べたの。それで知ったんだ・・・お兄ちゃんが芸能プロダクションを立ち上げて活躍してる事・・・東城さんは一流の小説家・・・北大路先輩は西野先輩の名を受け継いで売れっ子のアイドル・・・あの真中先輩も映画監督に・・・  なんか、とっても嬉しかった」





「でもやっぱり思い出しちゃって・・・しかもその時に・・・お父さんとお母さんが死んだのも知って・・・お兄ちゃんがあたしを探し続けているのも知った・・・  ものすごく・・・悲しかった・・・」





「それからしばらくずっと落ち込んでて・・・でもそんな時、あの人があたしに日本の御守りをプレゼントしてくれたの。『辛い時はこれを胸に当てなさい。そうすればあたしの心と身体を守ってくれる』って言って・・・それがこれ」


美鈴はポケットから紫色の小さな御守りを取り出し、皆に見せた。





「あたし・・・本当にとっても嬉しかった。それでそのとき決心したの。『もうこの人の側にずっと居続けよう』って。それがあたしの幸せだって思って・・・そうしたら全て吹っ切れて、あれからしばらくは本当に幸せだったな。でも・・・」





「その幸せも長くは続かなかった。マフィア同士の抗争が激化して、あの人のグループが壊滅状態に追い込まれたの」





「あたしはマフィアのボスの愛人で、その自覚もあった。だから最後はあの人と一緒に死ぬつもりだったけど・・・あの人はそれを許してくれなかった。使いの人をよこして、あたしを含めた3人の日本人を大使館の前で開放してくれたの」





「使いの人の話で、あの人が相手のマフィアに殺されたのを聞いた。そして死ぬ前にあたしたちを解放して祖国へ帰れるように指示してたの。 男ってホント勝手だよね。自分の都合でさらっておいて・・・好きになったら突然帰れって・・・5年もの間拘束しておいて・・・ホント勝手だよ・・・」





美鈴の瞳から涙がぽたぽたと落ちる。


美鈴は不幸の中で、マフィアのボスの老人を愛していた。


日本に帰って来れた事はうれしいが、その代わりに愛する人を失った。


その悲しみは、とても大きい・・・










外村らにも、美鈴の気持ちは伝わっていた。


なかなかかける言葉が見つからず、しばらくはじっと見つめていたが、


「美鈴、本当に大変だったな・・・でも今はゆっくり休もう。な!」


外村は妹の肩をやさしく抱き寄せた。


5年前の美鈴にこんな事をしようものなら殴り飛ばされているだろうが、今の美鈴は兄の『愛』を素直に受け止めた。


「うん。ありがとう・・・でもその前に・・・あたし、西野さんの仇を打たなきゃ」





「西野さんの、仇?」


さつきが聞き返すと、美鈴の表情が険しくなった。


「5年前、西野さんは自宅の火事で死んだことになってるけど、違うんです。本当は、あたしと一緒にあの男たちに連れ去られたんです。焼け跡で西野さんとして見つかったのは・・・男たちが用意した身代わりの女の子なんです!」


「「「えええっ!?」」」


外村ら3人は揃って大きな声をあげて驚いた。





「あたし、あいつらが西野さんを連れ去るところを偶然見ちゃって、それで捕まって、一緒に連れてかれて・・・」





「あいつら、あたしには『商品だから』とか言って手を出さなかったけど、西野さんには・・・あいつらの汚い欲望を容赦なくぶつけて・・・」





「一度だけ、奴らのしてることを見せられた。あたしも『いずれああなる』とか言って・・・」





「やつらは人間じゃない・・・悪魔だよ・・・3人も殺して・・・泣き叫ぶ西野さんにへらへら笑いながら3人一度に酷い事を繰り返して・・・」





「あたし・・・ただ見てるしか出来なかった。縛られて・・・声も出せなくて・・・何も出来なかった・・・」


美鈴の手が小刻みに震え、その当時の悔しさを物語っている。





「もう・・・見てるのも辛くて・・・でも目を逸らしても西野さんの悲鳴・・・叫び声は聞こえて・・・」





「そしたら突然西野さんの声が止まった。 代わりに奴らの慌てた声がして・・・」





「慌てて見たら、西野さん・・・動いてなかった。 奴らがさんざん無茶したせいで・・・西野さん・・・ショックで・・・死ん・・・じゃ・・・った・・・」





「あたし・・・奴らは絶対に許さない!たとえ日本に帰れなくても奴らだけは何年かかっても探し出すつもりだった。じゃないとあたし・・・ 西野さんに・・・ 顔向け・・・ 出来ない・・・  ううっ・・・」





当時の状況で美鈴に非は一切無い。美鈴も重大な被害者なのだ。


だが美鈴はずっとつかさを見殺しにしたと感じ、心に重いものを背負い続けていた。


真面目で正義感の強い美鈴の性格は、5年の月日を海外で過ごしても変わっていない。


強い正義感が生み出した純粋な涙の雫が、膝の上に置いた手の甲を濡らしていく。





「美鈴・・・気持ちは良く分かった。お前、その男たちの事をちゃんと覚えてるのか?」


外村がそう尋ねると、


「当たり前だろ!奴らの顔と名前はこの5年間、一度も忘れた事は無い!!」


そう断言する表情は、かつての厳しい美鈴そのものだ。


「よし。じゃあ警察にその事を話しに行こう。もしそいつらが今もつかさちゃんが生きてる事を知ったら絶対に狙うはずだからな」


「えっ・・・お兄ちゃんなに言って・・・」


美鈴は真顔で放った兄の言葉の真意を理解できず、ただぽかんとしている。


そこに綾が優しい口調で真相を告げた。





「美鈴ちゃん、西野さんは多分・・・ううん。間違いなく生きてる。だから安心して」


「ええっ!? で、でもあたし、ちゃんと見たのよ! あの時の西野さん間違いなく息してなかった! 奴らも真剣に慌ててた! あたし、嘘言ってない!!」


「落ち着きなよ、まあ驚くのも無理ないけどさ。あたしも今朝それを聞かされてホント驚いたもん。正直今でもまだ信じられないんだ」


さつきはそう言って美鈴をなだめる。





そして外村は自分の推理を語り出した。


「美鈴の言う事が本当なら、たぶんつかさちゃんはその時は仮死状態だったんだ。それで男たちはそれに気付かずつかさちゃんの身体をどこかに遺棄した・・・そう考えるといろいろ辻褄が合う」


「ねえ外村くん、身代わりの女性ってもしかして・・・」


「ああ。多分そうだろうな。それなら5年もの間俺たちも含めて犯人の男たちがつかさちゃんの存在に気付かなかったのも頷ける。現地に行ってる真中の報告でそれがはっきりするな」


全てを悟った表情で顔を向き合わせる外村と綾。


それに対し美鈴とさつきは事態を理解できず、揃えて口をあけてぽかんとした表情を浮かべていた。















そしてその頃の淳平も、美鈴らと同じように驚きで口をぽかんと開けていた。



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