C-16 -
takaci 様
「別所さん、最近元気がないみたいだね?」
学校からの帰り道、衛が心配そうに小宵の顔色を窺ってきた。
「あ、ううん。小宵はあまり変わってないよ。ただ最近ちょっと友達とうまく行ってなくて・・・」
そう話す小宵の口調は明らかに元気がない。
「友達って、有原さんとか江ノ本さんとか?」
「うん、ちょっとね・・・」
小宵の口調からは、『それ以上は聞かないで』という雰囲気が感じられた。
それを感じ取った財津は、そのことに触れないままそのまま帰途に着いた。
そして翌日、このことが財津から佐藤に伝わる。
佐藤は少し考え、比較的親しい(と言えるのかどうか分からないが)りかに詳細を尋ねることにした。
放課後、部活に向かう前のりかを佐藤が捕まえる。
そして・・・
「お前らと別所が絶交!なんで!?」
佐藤は大きな驚きに包まれることになった。
「ウチら全員ってワケじゃないよ。完全に絶交なのはあゆみと小宵のふたり。あたしや江ノ本、千倉は個別に小宵と話すようにしてるけど、みんなまとめてとなるとあゆみが中心になることが最近多いからね。そうなると小宵が仲間外れになっちゃうね・・・」
りかはそれだけ言うと、ふうっと大きくため息をついた。
「原因は何だ?」
佐藤がそう問いただすと、
「あゆみと小宵の対立、あんたなら分かりそうなもんだろ?一枚絡んでるって噂聞いたし・・・」
りかはぶっきらぼうに吐き捨てるような口調でそう答えた。
「・・・財津を巡る争いか?」
「そう」
「マジかよお・・・最悪の事態だな・・・」
佐藤は思わず力が抜けて、そばにある椅子にへたり込んだ。
「あたしは小宵に罪は無いと思うけどね。恋愛は自由だし・・・ただ親友が好きな男子をあとから好きになっちゃうのは少しまずかった気がする。小宵だってあゆみの気持ちは知ってたわけだし、あゆみが納得いかないのも分かるんだ」
「だからって絶好なないだろ。どうせ有原が言い出したんだろ?」
「よく分かるね。そうだよ」
「バカで我侭な有原が言いそうなことだ。けど自分だけでなくほかの奴らも巻き込むなんて、イジメと似たようなもんじゃないのか?」
佐藤がきつい指摘をすると、
「あたしらは、少なくともあたしはそうならないようにしてるつもりだよ。できるだけ小宵に声かけるようにしてる。でも・・・小宵もウチらを避けてる感じがあるんだよ」
「別所が?自分からお前らを避けてるのか?」
「たぶん気を遣ってるんだろうね。正直今の小宵の姿は見てて辛そうだと思う。けど・・・小宵から避けられるんじゃウチらじゃどうにもならないよ・・・」
現状を語るりかの口調は明らかに重く、辛そうだった。
だがそれ以上にそれを聞いた佐藤の表情は暗く、完全に黙ってしまった。
「・・・そうか・・・」
うつむいて、ただそう漏らすしかない佐藤だった。
その後しばらく考え込み、力なくポツンと呟いた。
「なあ土橋、頼むから別所に出来るだけ接してやってくれないかな?俺も接するようにするけど、クラスで同性の友達ってか、話し相手がいないときついからさ。頼むよ・・・」
これだけ言うのが、今の佐藤の精一杯だった。
「・・・分かった・・・」
りかもまた力なく答えた。
重い、重い空気がふたりを包んでいた。
それから数日が経過した。
佐藤は出来る限り、小宵の動向を注意深く観察した。
小宵は繕ったような笑顔を見せる機会が多くなっていた。
慧やりか、名央たちは個別に小宵と会話していたが、その機会がぐっと減っていた。
代わりにあゆみが友人らを取りまとめてはしゃいでいるのをよく目にした。
そのときは当然、小宵は孤立していた。
ただひとりで、はしゃぐあゆみたちに寂しげな目線を送る小宵の姿は、見てて痛々しかった。
そして小宵孤立の要因となった財津は、あゆみの猛アタックを受けていた。
財津が小宵と話そうとしても、あゆみに阻まれてロクに話が出来ない。
佐藤の目にはそう映っていた。
日を追うごとに、小宵の顔色は悪くなっているようだった。
月が変わり日々が少しずつ寒さが和らいでいく。
人の心もそれと共に和んでいくものだが・・・
小宵の目の光は確実に輝きを無くしていった。
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