「おみまい」7 - takaci  


その7


「こ、こずえちゃん?」


淳平はやや上ずった声で呼びかける。


こずえの頬は赤みを帯びており、潤んだ瞳は焦点が定まっていない。


「だ、大丈夫?また熱が出たんじゃないの?」


「え・・・あ! や・・・やだ・・・あたし・・・」


こずえはようやく淳平にもたれかかっていることに気付いた。


そしていつもの反射的な動作ではなく、ややけだるそうな感じで淳平から身体を離す。





だが、





「あ・・・れ?」


そのままふらつくように反対側へと倒れこんでいく。


「ちょっ、危な・・・うわっとお!!」


慌ててこずえの手を引っ張りあげようとする淳平だが、やや動作が遅く、逆にこずえに引っ張られてしまった。





ドサッ










ドクン





「こ・・・こずえちゃん・・・」


一気に高鳴る鼓動。





淳平の真下には、こずえが潤んだ瞳でじっと見つめている。





引っ張られたのが原因だが、結果的には淳平が押し倒す形になった。





(は、早くどいてあげないと・・・こずえちゃんたぶん怖がってるだろうし・・・)


(でも・・・身体が動かない・・・)


(こずえちゃんの瞳に俺の顔が映ってるよ。たぶん俺の目にもこずえちゃんの顔が・・・)


こずえの瞳から目が離せない。


まるで魔法に掛かったかのように、淳平の身体は動かない。





(や、やだ・・・あたしが真中さんを引っ張っちゃったからこんな体勢に・・・)


(でも、嫌じゃない。ううんむしろ・・・心地いい?)


(真中さんの瞳にあたしの顔が映ってるよお。あたし、見つめられてる・・・)


(まるで・・・大好きな彼に見つめられてるみたい・・・)


僅かな不安もあるが、それよりずっと期待のほうが大きい。


こずえの動悸も高鳴っていく。



















「追いかけられて公園に逃げ込んだ時も、こうなりましたよね・・・」


「え・・・    あ、ああ・・・」


(さつきが追いかけてきて、俺たちがストーカーと勘違いして茂みに倒れこんだっけ・・・)


(あの時、俺が身を隠すために・・・身を隠すためにこずえちゃんに覆い被さろうとして・・・)


自分自身で『身を隠す』を強調する淳平。





「あの時・・・怖かったけど・・・でも・・・すごいどきどきしてて・・・」


「えっ・・・」


「真中さんと・・・身体が重なって・・・とても心地よくって・・・」













(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!マジで変な気分になってきた・・・)


(西野ぉ!!東城ぉ!!頼むから俺を止めてくれええ!!!)


淳平は必死になってふたりの顔を思い出そうとするが、







(何で出て来てくれないんだよおおおお!!??)







天使による制止・・・不発。


淳平のブレーキは真っ赤に焼け焦げ、もはや効かないも同然になっている。












「真中・・・さん・・・」


魅惑の視線に加え、甘い囁き。


『止めよう』とする意思までもが薄れていく。












「だ、ダメだ・・・そんな事言われたら・・・俺・・・襲っちゃいそうで・・・」


最後の理性を使い、こずえに危険をアピールする。


(今ならまだ止められる・・・これ以上俺を惑わせないでくれ・・・)

















「真中さんなら、真中さんだったらあたしは・・・いいですよ・・・」


















ドクン!!





ついにブレーキが壊れた。


もう、自分自身でも止められない。
















「真中・・・さん・・・」


こずえは全身に圧迫感を感じた。


やや苦しいが不快感は無い。


むしろ未経験の感覚に喜び、心が震えている。





淳平が覆い被さり、やや熱を帯びたこずえの身体をきつく抱きしめる。


異性を求める本能がふたりを共に支配していく・・・


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