「幸せのかたち」34 - takaci  様


「西野・・・」


淳平は唇を軽く重ね合わせる。


このキスでつかさはようやく目の前にいる淳平の存在に気付いた。


「淳平くん・・・   すごいよお・・・   」


「西野・・・もう俺・・・」


つかさの痴態は淳平に激しい興奮をもたらした。


欲望は再び力を取り戻し、大きくいきり立っている。





つかさも淳平の目を見てその意思を感じ取ったようだ。


そしてつかさもまた、その意思と同じ。





「いいよ。でも・・・」


「でも?」








「・・・ベッドまで連れてって。あたしもう立てない・・・」


先ほどの絶頂はつかさの全身から力を奪い去り、完全に腰が抜けてしまった。


(腰が抜けちゃうほど気持ちよくなってくれたのか)


淳平、男冥利に尽きる瞬間である。


「はは・・・じゃあいくよ」


淳平は笑みを浮かべながら、つかさの軽い身体をひょいと抱きかかえて、大きなベッドの中央に優しく横たえる。


そしてつかさの足を広げ、いきり立った欲望にゴムを付けてつかさの女芯にあてがった。


「あっ淳平くん、その・・・避妊・・・」


「分かってるよ。ほらちゃんと付けてるから」


ゴムが付けられた欲望をつかさに見せると、強ばっていた表情が緩む。


生理が戻ったばかりのつかさには明確な安全日はまだ定まっていないうえに、妊娠、中絶の経験があるのだ。


(本当はナマの感触を味わいたいけど、西野を不安にさせちゃだめだからな)


淳平は自らの贅沢な欲望をぐっと押さえ込んだ。





「身体の力の抜いて楽にして」


「大丈夫だよ。もう、力は入れたくても入らないから」


「そうか。じゃあいくよ?」


つかさが小さく頷いたのを確認すると、淳平はいきり立った欲望をゆっくりと挿入していく。








(結構・・・スムーズに入ってるよ)


綾の時と比べて、抵抗感はずっと少ない。


欲望はあっという間に根元まですっぽりと埋没した。


(うわっ、ゴム付けてんのにすげえ気持ちいいよ)


初めて感じるつかさの膣(なか)の感触は、ゴム越しでも十分な快感を淳平に送っている。


(そ、そういえば西野は大丈夫か?)


予想以上の快感に包まれた淳平は、一瞬つかさの事を忘れていた。


「に、西野・・・大丈夫?」


「うん。ちょこっと痛い・・・かな? でも全然へっちゃらだよ」


つかさの表情からは苦痛は感じられず、むしろ笑みがこぼれている。


その表情は淳平を安心させ、淳平にも笑みがこぼれる。


「じゃあ動くけど・・・いいかな?」


「うん・・・」





ゆっくりと動き出す。





「うっ・・・   あっ・・・   はあっ・・・   」


欲望の先端が奥を突く度に、つかさからは甘い喘ぎ声が漏れる。


つかさには痛みの感覚はほとんどなく、湧き上がる圧倒的な快感に心が震え出していた。





淳平は一定のピッチで動き続ける。


欲望が柔らかい肉襞と熱い蜜に包み込まれ、心地よい快感が淳平に送られてくる。


そして自身は欲望を奥深く突き、つかさに快感を送る。


「あっ・・・   あっ・・・   あっ・・・   あっ・・・   」


奥を突くたびに快感を示す喘ぎ声が漏れ、恍惚の表情をするつかさ。


(西野、悦んでくれてるみたいだな。とりあえず痛みはなさそう・・・)


快感に打ち震えるつかさの表情にほっとする淳平だったが、





「!!!」





「に、西野、どうしたの?」


突然胸が締め付けられる。





軽く閉じられたつかさの瞳から涙が流れ出した。





「やっぱり痛い?」


「ううん、そうじゃなくって・・・嬉しくってつい・・・驚かせちゃってごめん」


「嬉しい?」















「あたし・・・小宮山くんに襲われたとき、淳平くんが遠く離れていくような気がした」















「妊娠したのが分かったとき・・・目の前が真っ暗になって・・・淳平くんを一切感じられなくなった」















「もう・・・淳平くんとは・・・会えないと・・・思ってた・・・」





















「でも・・・今・・・目の前に淳平くんがいる」















「淳平くんが・・・あたしを抱いてくれてる」















「あたしの・・・おなか・・・淳平くんでいっぱい・・・」















「あたしと・・・淳平くんが・・・ひとつになってる・・・」




















「あたし・・・とても・・・幸せだよ・・・」










涙を流しながら、幸せいっぱいの微笑。





淳平の胸がきゅんと締め付けられる。





「俺も、西野とひとつになれてとても幸せだよ。もう幸せ過ぎて、溺れちゃいそうで怖いくらいだよ」


「もう、淳平くん大袈裟すぎるよ。それになんかキザでらしくないよ」


「なっなんだよそれえ!?人がせっかくカッコよく決めようと・・・」


「それが淳平くんらしくないの!カッコ悪くって多少情けないほうが淳平くんらしいもん!」


感涙から一変、笑顔で淳平をけなすつかさ。





これが淳平の心に小さな火をつけた。


「ったく馬鹿にして・・・よーしこうなったら!!」





バンバンバンバンバン!!!!!





「あっあっあっあっあっ!!!!!」


「へへ・・・気持ちいいだろ?もっともっと気持ちよくさせて何も考えられないようにしちゃうからな!」


笑顔でそう告げると、再び動き出す。


「はあっ!はあっ!!あっ!!  じゅ・・・淳平・・・くぅん!! あはぁ・・・」


つかさから漏れる甘い声が、淳平の言葉に対する『肯定』の意思を表していた。





「あふぅ・・・  くぅっ!!  はあっ!!  はあっ!!   あっはああああっ!!!」


喘ぎ声は次第に大きく、激しくなっていく・・・








(これ・・・ちょっとまずいかも?)


つかさの喘ぎ声を聞きながら、淳平は予想とは異なる展開にやや焦り出していた。


(西野のナカ、めっちゃ気持ちいいよ。このままじゃあ西野がイク前に俺がイキそうだ・・・)


つかさの膣は欲望を適度に締め付け、たっぷりと溢れ出た蜜がねっとりと絡んでいる。


一度出して余裕があると思っていたのだが、予想とは裏腹にどんどん追い込まれている。


つかさは甘い声を漏らし続け快感に打ち震えているが、絶頂に導くにはまだ掛かりそうだ。


(体位を変えれば楽にもなるけど、実質初めての西野にそれはしたくない)


淳平はややペースを落とし、つかさの胸を揉みしだく。


(クリトリス触りたいけど、正上位じゃあちょっと無理があるもんなあ)


今出来る限りのこと全てを使い、つかさを絶頂に押し上げようとする。





「うああっ・・・   くあっ・・・   ふうっ・・・   あっふうぅ・・・   ふあっ・・・」


その甲斐あって、つかさに変化が訪れた。


白い肌は赤みを帯び、全身から噴出した汗が光り輝く。


口元からは唾液が流れ、潤んだグリーンの瞳は視点が定まらなくなってきている。


つかさに絶頂が近い事を淳平は感じ取った。


だが、限界が近いのは自分も同じ。


「はあっ!!   はあっ!!   あっ!!   はっ・・・   ん・・・   んぐっ?  」


やや強引につかさにキスをし、荒々しく舌を絡めていく。


つかさも応えようとしているみたいだが、舌の動きに力がない。


全身が快感に支配される予兆である。












「はあっ・・・  あはっ・・・  じゅん・・・  ぺい・・・   くん・・・   はあ・・・   」









「ふあっ・・・    も・・・    もう・・・   ふう・・・   だ・・・    め・・・   」


僅かに残った意識で限界が近い事を訴えるつかさ。


「俺も、もうイキそうだ・・・  じゃあ、一緒にイコう・・・」


淳平は一気にラストスパートに入る。


「ああああああああああっ!!!!!あうはうあはあああふうああああ!!!!」


つかさは今日一番の甲高く、且つ大きな声をあげる。


突き上げてくる強い快感に全てを支配され、思考が停止する。


本能が生み出す歓喜の絶叫が部屋中に鳴り響く。





ピッチを早めた淳平に限界が一気に押し寄せてくる。


さらにつかさの大きな声がそれを後押しする。









「西野! 俺もイクよ! イクよ!! 」









「ああはああふああああはあっ!!!!!  あああっ!!!!   はああっ!!」









「あっ!!!  はうっ!!!  あっ!!!  」




つかさは背中をのけぞらせ、全身に大きな痙攣が走る。


膣全体が淳平の欲望をぐっと締め付け、入り口から蜜が溢れ出す。


今日3回目の絶頂は、今までで最も高く、最も強い快楽が容赦なく押し寄せてくる。





「うっ・・・俺も・・・イクッ!!」


最後の締め付けが淳平を限界に押し上げた。


腰が痙攣し、欲望が激しく脈打つ。


ゴムの中に自身から放たれた熱いものが溜まっていく。



















「「はあ・・・はあ・・・はあ・・・はあ・・・はあ・・・はあ・・・」」


汗が噴きだした身体を重ね合わせながら、息を整える二人。


一瞬飛んだ意識が戻り、次第に思考が働き始める。


「に、西野・・・大丈夫?」


「うん・・・でも・・・もう・・・動けない・・・」


強く激しい絶頂はつかさからほぼ全ての力を奪い去っていた。


「とても気持ちよかったみたいだね。声、凄かったよ」


「やだあ・・・恥ずかしいよう・・・」


「でも、西野が気持ちよくなってくれて、俺は嬉しいよ」


「淳平くんはどう?あたしの身体で満足してくれた?」


つかさは不安な表情で淳平に尋ねる。


「もちろんだよ。西野の身体、とってもよかったよ」


淳平は笑顔でそう答える。


「ホントにホント?あたし胸ちっちゃいけどそれでも満足してくれた?嘘じゃないよね?」


「ホントだってば!俺メッチャ気持ちよかったよ。それに胸の大きさなんて関係ないって!西野は気にしすぎだよ」


「よかったあ・・・」


表情から不安が消えて安堵の色に変わり、よほど気にしていたのか、うっすらと涙が浮かんでいる。





「そ、そんなに気にしてたの?」


「だってあたしで満足してくれなかったらどうしても東城さんへの想いが強くなっちゃうじゃない。いくら3人でやっていくって言ってももしそうだったとしたらあたし、淳平くんに捨てられちゃうもん・・・」


「す、捨てたりなんか絶対にしないって!でもそれより3人でやっていくってどういう事?」





「・・・改めて3人揃ってきちんと話し合うけど、とりあえずあたしから話しておくね」


「それって警察署で話してた事?西野と、東城と、刑事さんの3人で・・・」


「うん・・・でも話す前に・・・」





つかさは淳平の欲望からゴムを取り、先に付いた精液を舌で綺麗に舐め上げて処理をした。


「ちゃんと避妊してくれたお礼だよ」


そう話す屈託のない笑顔が心に響く淳平。


そして二人仲良く大きなベッドの中央で寄り添いあいながら、つかさの話が始まった。


「あたしたちね、こうするのが一番いいと思うんだ・・・」






































































































「・・・これが、あたしと東城さんが出した答え、って言うかお願いなんだけど、淳平くんはどうかな?」


「どうって言われても・・・本当にそれでいいの?」


「うん、って言うかそれしか方法が無いと思うんだ。今のあたしと東城さん、二人が納得できる・・・」


「刑事さんが『俺の容量の問題』とか『図太さが必要』とか言ってた。あの時は何の事か分からなかったけど、これを聞いたらなんとなく分かるような気がする・・・」


「あたしも東城さんも、淳平くんにすごい負担をかけちゃうのは分かってる。せめてあたしが諦めればいいんだろうけど・・・あたしもう、淳平くんが側にいてくれなきゃだめになっちゃって・・・」


つかさは不安げな表情でさらに身を寄せる。


「西野・・・」


そんなつかさを安心させるために淳平からも手を回すが、その表情にはやや不安の色がにじみ出ていた。


(元はといえば俺が悪いんだよな。ずっとふらふらしてたせいで西野も東城もここまで追い込んじまって・・・)


(その二人が一緒に考えて出したこの答え。俺にとっては辛いかもしれないし、今後の事を考えるとすげえ不安だ)


(でもだからって俺が逃げ出しちゃあダメだ。俺が二人の出した考えを・・・二人を受け止めなきゃ!)


(それに見方を変えたら俺はすげえ幸せ者なんだ。周りの目なんか気にしなきゃいいんだ!)


(容量と図太さか。あの女刑事さんの言ったとおりだな)


淳平は改めて手島の言った言葉を、手島の顔を思い出した。


そして、決意を固める。





「西野、これから辛い事もたくさん出て来ると思うけど、俺も頑張るから、一緒に頑張ろうな!」


「えっ?じゃあ・・・」


「まずは3人で話し合おう。それで具体的にどうしていくか、ちゃんと考えよう。3人が一緒に幸せになるためにね!」


「淳平くん・・・ありがとう・・・」


つかさは淳平の背中に手を回し、ぎゅっと抱きつく。


「西野、情けない俺だけど、これからもよろしく」


淳平もつかさの身体を抱きしめる。


暖かなぬくもりに心癒されるように感じる淳平。





二人は無言のまま、ベッドの中で抱擁を続けたが、


つかさの腕から次第に力が抜けていく。


(ん?)


つかさの顔を覗き込むと、とても眠そうな表情を浮かべていた。


「あたし・・・安心したら・・・急に・・・眠くなって・・・」


「今日1日いろいろあったもんな。疲れたんだよ」


「・・・目が覚めても・・・淳平くん・・・側に・・・いるよね・・・」


「ああ。だから安心してもう眠りなよ」


そう言いながらつかさの手を優しく握り締める。


「淳平・・・くん・・・あたし・・・とても・・・   し・・・   あ・・・     わ・・・       せ・・・    」










「寝ちゃった・・・」


淳平の目の前で、つかさは静かな寝息を立て始めた。


不安から開放されたその表情はとても穏やかで、見ているだけで幸せな気分になる。


(今日1日、ホントいろいろあったもんなあ。こずえちゃんが襲われて、小宮山が捕まって・・・)


(西野だっていろいろあった。追い詰められて、マンションから飛び降りようとして大騒ぎになって・・・)


(その後、俺とエッチして・・・3回イッてくれたよな。それにエッチ前はすげえ不安だったはずだ)







「西野、お疲れ様」


寝息を立てるつかさの頭をそっと撫でる淳平。





すると、突然睡魔が襲ってきた。


「もうこんな時間か。眠くなって当然だよな。俺もいろいろあったし・・・」


あくびをしながら時計に目をやると、午前2時を過ぎていた。


(俺も、もう寝よう・・・)


部屋の明かりを消し、改めてベッドにもぐりこんだ。


真横にはつかさのかわいい寝顔。


(この寝顔が側にあるなんて、俺は本当に幸せ者だな)


「西野・・・おやすみ・・・」


かわいい寝顔にそう話すと、淳平はすぐに眠りに付いた。















ようやく、長い1日が、終わった。


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