「幸せのかたち」24-B- takaci  


この行動が、悲劇を呼ぶ事に…






(うおおおおおおおおおお!!!!!!!すげええええええええ!!!!!!!!!!)


外村は心の中で雄叫びを上げる。


ナマの喘ぎ声に完全に魅了されている。


[あはあぁぁ… 大草さーん… ま、繭子おかしくなっちゃうううぅぅぅ… ]


「えええっ!!ま、繭子ちゃん!?」


[きゃあっ!!な、なんであたしの名前を…]





[ぎゃっ!!]





[あれっ?お、大草さんどうしたんですか!?]





[大草さんしっかりしてください!!大草さん!!!]






(ど、どうしたんだ?何があったんだ!?)


大草の相手は、なんと以前いっしょに合コンをした繭子だった。


外村は驚き、思わず大きな声で叫んだ。


そして繭子も、自分の名前を呼ばれて驚いたようだ。


その直後、大草の悲鳴。





「おーい大草!!、繭子ちゃん!!大丈夫かあ!?何があったんだ!?もしもーし!!」


外村が呼びかけても、返事は無い。


聞こえるのは大草のうめき声と、おろおろする繭子の声。


「もしもーし!!どっちでもいいから応えてくれ!!もしもーし!!」


(繭子ちゃん、相当慌ててるな…頼むから俺の声に気付いてくれ!)


外村は願いを込めて根気良く呼びつづける。








[あ…もしもし?]


しばらくして、繭子の応えが返ってきた。


「繭子ちゃんだね?どうしたの?何があったの?」


外村はやさしい声で繭子に呼びかける。


[あ、すみません。あの…あなたは?]


「ああごめんごめん!外村だよ。ほら、大草といっしょに合コンやった…」


[ああ!あの…あの…その…]


恥ずかしさのあまりなかなか次の言葉が出てこない繭子。


「繭子ちゃん、恥ずかしい気持ちはわかるけど、経過と状況を説明してくれないかな?」


[あ…は、はい]


「落ち着いて、ゆっくりでいいからね」


「は、はい。繭子ね、実は…」





大草は『襲われた女の子』について調べるために、内部調査を繭子に頼んだのだ。


繭子は大草のために、学校の機密資料を調べると言う危険な行為までして、『襲われた女の子』を突き止めたのだが、


繭子もそれがつかさだと知った時、激しく動揺した。


それはつかさが桜学でも人気のある生徒だったという事もあるが、調査を依頼した大草本人がつかさの事を好きなのを知っていたからでもある。


伝えるのを迷いに迷った繭子だが、嘘はいけないと思って大草に真実を伝えた。


もちろん大草はショックを受け、そのきっかけを作った繭子も責任を感じ、涙を流した。


そして互いの傷ついた心を慰め合う為、互いの身体を求め合ったのだ。


この関係はしばらく続いており、大草は繭子と『一夜以上の関係』を築いていた。





(大草もそれなりのショックだったんだな。その結果が繭子ちゃんとの関係を生んだんだな)


(まあこんな経緯は今の大草の苦しみとは関係無いけど、知っといたほうが何かの時に役に立ちそうだ)


「ここまでは分かった。それで、いま大草ってどんな状態なの?」


[あ、あのう…そのう…]


繭子はより恥ずかしそうな声で、それまでの経緯と現在の状況を外村に伝える。





大草は腰を激しく突きながら、繭子の側に携帯を持ってった。


繭子は快感に溺れ、激しく喘ぎながらも、携帯から自分の名前が聞こえた事に気付いた。


この瞬間、繭子は激しく動揺して、


大草の動きが止まり、苦痛を訴え出した。






(これはひょっとすると…)


外村は自分の知識の中から『答え』を導き出した。


「繭子ちゃん、だとしたら今ふたりは繋がったままなんだね?」


[そ、そんな事言わないで…繭子凄い恥ずかしい…]


「いや、気持ちはわかるけど、これって結構ヤバイ状態だよ」


[ええっ!?]


「繭子ちゃんが驚いた時、アソコが急激に痙攣して大草のモノを思いっきり締め付けたんだ。そうなると男は洒落にならないほどの激痛に見舞われて、それに抜けなくなっちゃうんだ」


[じゃ、じゃあどうすれば…]


「もう救急車を呼ぶしかないと思う」


[それじゃあ学校にばれちゃう。繭子退学になっちゃうよお!]


「それはまずいよなあ。何かいい手は…  う〜〜〜ん…」


悩む外村。





だがこれは『フリ』だった。


実はもうすでに解決手段を思いついているのだが、敢えてすぐには出さない。





ある言葉を引き出させるための…


駆け引きだ。





[外村さん助けてください!助けてくれたら繭子なんでもしちゃいます!]





(よっしゃ!)


外村の目的、ひとつ達成。


(あとは大草だな)


そして大草に代わってもらった。





[頼む…何とか…してくれ…]


激痛に耐えながら、なんとか声を絞り出しているようだ。


「わかった。でもこの貸しはでかいぜ」


[この痛みから逃れられるなら…俺もなんでもする… だから…]





(あっけなかったな…)


望んでいた二人の『なんでもする』という言葉がいとも簡単に手に入り、やや拍子抜けだった。





その後、外村はふたりがいるホテルの名前と部屋番号を聞くと、一旦通話を切った。


そしてとある老医師の携帯に掛ける。





外村の運営するサイトに訪れる大半は若い男だが、年輩の男もいる。


中でもこの老医師は外村の知る限りでは最高齢で、心の底から『師匠』と呼べる人物だ。


『わしにとって美少女はエロの源。エロ心は男の証!これを失ったらもう男じゃない!!』


と豪語する、69歳にして17歳の女子校生の恋人(!!)がいるとても元気の良いジジイである。





外村が事情を説明すると、老医師は弾んだ声で快諾した。


どうやら繭子の繋がった姿に惹かれたようだ。


[ウチから5分かからない場所じゃな。でも薬とスパイ道具の準備があるから15分ほど待っとれと伝えとくれ]


そう言って老医師は通話を切った。


(師匠、相変わらずだな)


スパイ道具とは、老医師特製の盗撮用機器の事である。


老医師の身体に10個以上のカメラが仕掛けられているのだが、これが見事なもので外見からは全く分からないどころか、違和感すらないのだ。


この道具で撮影されたジジイの秘蔵映像を少しだけ見せてもらった事があるが、どれも素晴らしいものばかりで唸るだけだった。


もっともこの映像はあくまで『個人のコレクション』であり、一般公開をする予定は一切無いという。


(あのカメラで繭子ちゃんの恥ずかしい姿をいっぱい撮る訳ね)


(ちょっとかわいそうだけど、まあ俺が楽しむくらいでそれ以上広まる事はないから大丈夫か)


(でも、もし撮られてる事がばれたらショックで傷つくだろうなあ)





(つかさちゃんの傷はどうなのかな?)


ふと、つかさの事が気になった。


(もう2ヶ月近く前の事だ。それほど引きずってないとは思いたいけど…)


(でも、話したら嫌がるだろうなあ。やっぱ起訴も嫌がるだろうなあ…)


(真中はこの事を… 知ってるかもな。確か東城を抱いたきっかけが『襲われる前に抱いて欲しい』っていう東城の要望だったんだ)


(美鈴に加えて、つかさちゃんも襲われてたって知った東城がそう考えるのも分かるような…)


(でもなあ、東城は真中がつかさちゃんを好きだって事は気付いてたはずだ。そんな男でも抱かれたいなのかなあ?)


(今回の繭子ちゃんもそうだ。大草がつかさちゃんを好きだって分かってるにも係わらず…)


(あの大草がつかさちゃんをあきらめるなんて考えにくいもんなあ。たぶん繭子ちゃんが目の前に居たからあんな事を言ったんだろうな)


(繭子ちゃんかわいそうだなあ。大草にバージン奪われて、師匠に写真撮られて、それを俺に見られちゃうんだもんなあ)











「あ、いけね!電話しなきゃ…」


大草たちに連絡するのをすっかり忘れていた。


慌てて大草の携帯を呼び出す。


(真中と東城の事は、今度会ったときに直接聞いてみよう)


呼び出し音を聴きながら、そう考える外村だった。


NEXT