R[ever free]5 - takaci 様
第5話 瞳の光
淳平のベッド
ここに身体を預けると、つかさは自然と幸せな気分になる。
まるで淳平に包まれているかのような感じであり、心が落ち着く。
以前このベッドに横たわったとき、あまりの心地よさにそのまま眠ってしまった。
そして今も同じようにベッドに横たわっているが、とても眠りには付けなかった。
「うっ・・・ くうっ・・・ はあっ・・・ 」
一糸纏わぬつかさは、右手の人差し指を咥えながら快感に耐えるように喘いでいる。
白い肌からはじんわりと汗が噴き出し、部屋の明かりに照らされ輝いている。
ちゅっ・・・ ぴちゃ・・・
淳平はつかさの両脚を開かせ、その間に顔を埋めて女芯を愛撫し続けている。
時折卑猥な音が立ち、その度につかさの身体が大きく跳ね上がる。
強い快感に耐え切れず反射的に身体を離そうとする事もあるが、淳平に腰をしっかりと掴まれており逃れられない。
送り込まれる快感はどんどん大きくなっていく。
「うっ・・・ うあっ・・・ ああああっ!!! あっ!!! はあっ!!!」
全身が大きく痙攣し、背中でブリッジを作るつかさ。
絶頂を迎えた証だった。
「あれ、またイッちゃったの?これで何回目だっけ?」
淳平は下からいたずらっぽい笑顔を作って覗き込む。
「もう・・・我慢できない・・・はやく・・・ちょうだい・・・」
淳平の舌と指で何度も絶頂を迎えていたが、もうそれでは満足できない。
―より高い頂へ―
美しい瞳は妖しい輝きを放ち、愛しい人を誘(いざな)う。
「分かったよ・・・」
淳平はつかさに覆いかぶさるように身体を起こし、いきり立った欲望をつかさにあてがると一気に挿入した。
「あはぁ・・・淳平くんの・・・太くって熱くって・・・奥まで気持ちいい・・・」
「いつもより・・・締め付けてきてるよ・・・」
大きな快感に包まれる二人。
そして淳平が動き出した。
「あっ! あっ! あっ! 」
つかさに圧倒的な快感が襲い掛かり、自然と大きな声が漏れる。
「つかさ・・・つかさ・・・」
「もっと・・・ はあっ! もっと突いてえ!! あうっ!!」
欲情した若い男女の行為は激しさを増して行った。
「つかさ、はいこれ」
「うん・・・」
淳平が差し出したマグカップをボーっとした顔で受け取るつかさ。
甘いカフェオレを口にすると、次第に意識がはっきりとしてくる。
「ごめんね。またあたし一人で楽しんじゃったね・・・」
「そんな事ないって。俺も気持ちよかったし、それにつかさがイッてくれれば俺も嬉しいんだ」
淳平に激しく突かれたつかさは淳平がイク前に何度もイッてしまい、完全にダウンしてしまったので現在は小休止中だ。
今夜、珍しいことに淳平の両親は不在だった。
高校生にはホテル代は馬鹿にならない。
そんな二人にとって今夜は時間を気にすることなく、一晩中愛を確かめ合うには絶好の環境である。
結果、お互いがいつもより貪欲に求め合い、それが激しい行為を生み出していた。
淳平はTシャツにトランクス姿、つかさは素肌に淳平のYシャツを羽織っている。
(つかさ・・・マジかわいいよ・・・)
ダボついたシャツを羽織りマグカップを手にするその姿はとてもいとおしく、思わず見とれてしまう。
「ん、なに?」
「あ、いやその・・・」
素直に『見とれていた』と言えばいいのだが、恥ずかしさが勝り機転が利かない。
「あ、その・・・つかさの家は大丈夫なの?」
淳平はとりあえず思いついたことを口にした。
「大丈夫だよ。『トモコの家に泊まる』って言ってあるし口裏も合わせてもらってるから」
「そ、そっか。じゃあ朝まで一緒にいられるね」
「うん!でも早いとこトモコにお返ししないとなあ・・・」
「彼女って結構かわいいのに何で彼氏いないの?」
「理想が高いんだよ。特に見た目。本当に大事なのはそんなんじゃないのに気付いてないの」
「で、お返しって確か『合コンのセット』だよね?しかもかっこいい男の・・・」
「カッコより性格がいい人のほうが全然いいんだけど、トモコの場合はまず見た目ではねちゃうからなあ・・・」
困り顔のつかさである。
「俺の周りでかっこいいってなると・・・大草くらいしかいないからなあ・・・」
「彼は絶対ダメ!!信用出来ないもん!!トモコ酷い目にあっちゃうよ・・・」
「そうかなあ?確かに何考えてるか分からんところもあるけど、そんなに嫌な奴では・・・」
「とにかく大草くんはダメ!あたし的には小宮山くんのほうが・・・あっ!」
二人の間に気まずい空気が流れる。
一晩で同じ学校の、しかも同じ部活の生徒が3人死亡。
先日のちなみの事件も重なり、泉坂高校はつい先日まで報道陣でごった返していた。
淳平もまた『3人が所属していた部活の長』という事で取材を受けていたほどだ。
『小宮山がまず校内で美鈴を殴りつけ殺害した後、それに気付いたさつきを追い回して橋の上で揉み合いになり、二人揃って川に転落した』
この警察の見解を、淳平はカメラに向かって真っ向から否定した。
『小宮山はそんな事絶対にしない!あいつが美鈴とさつきに襲い掛かるなんて考えられない!!』
『事件の真相は絶対に違う!必ず真犯人がいるはずだ!!』
カメラに向かって必死に呼びかけたが、編集によりカットされたり『問題ないレベルで修正』されたりして肝心な部分は全く伝わってなかった。
そんな事もあり、今の淳平はかなり凹んでいた。
「俺は諦めないよ・・・」
「えっ・・・」
つかさは顔を上げ、淳平をじっと見つめる。
「俺と大草は小宮山とは古い付き合いなんだ。だからあいつが女の子を殺す、いや襲い掛かるなんて出来ない事はよく分かってるんだ」
「どんなに時間が掛かっても俺はあいつの無実を証明する。さつきと、美鈴を襲った真犯人を突き止めてやる」
「3人の葬式のとき、俺は・・・そう誓ったんだ・・・」
淳平の瞳はめったに見せない厳しい光を放っている。
「今は、忘れよ・・・」
「ん?」
つかさは羽織っていたYシャツを脱ぎ、淳平の前にひざまづいた。
「あたしから振っといて言うのもなんだけど、今だけは忘れて欲しいな。せっかく二人っきりなんだから・・・」
つかさの笑顔からはやや寂しさが垣間見られる。
「・・・そうだね。つかさゴメンな」
「うん。じゃあ今度はあたしがしてあげるね・・・」
つかさは淳平のトランクスを下ろし、小さくなった欲望を口に含む。
「うっ・・・」
淳平に暖かく心地よい快感が襲い掛かってきた。
何もかもを忘れさせてくれる感覚。
小休止は終わり、二人の求愛行動はまた激しさを取り戻していく・・・
(どういう事?何で小宮山くんと北大路さんが・・・)
朝の教室。
綾の心は不安で押しつぶされそうになっている。
美鈴を殺してしまった後、慌てて飛び出してしまったので証拠は山ほど残っていた筈だが、
警察から簡単な事情聴取を受けたのみで、綾は捜査対象にならなかった。
(あたしが殴った角材に小宮山くんの指紋が付いていたから、彼が疑われた・・・)
(そしてその小宮山くんは、北大路さんと一緒にもう・・・)
(・・・分からない、小宮山くんが北大路さんを襲うなんて考えられない・・・)
(じゃあ・・・二人とも誰かに・・・)
得体の知れない恐怖で自然と身体が震え出していた。
その頃、天地は校舎の影から携帯電話で話をしていた。
「・・・じゃあ今夜決行だな?」
[ああ。予定通り女から始末する]
男の事務的な声が天地の耳に届く。
「あの二人のように、見事な仕事を期待している。それと追加で頼んだ件だが・・・」
[それは今日だ。言われた所を調べてみるが・・・本当にそんなものが出てくるのか?]
「僕の推理が正しければな。もしそうだとすれば美鈴くんの件も含めて色々とつじつまが合う」
[分かった。ではまた連絡する]
通話が終わり、天地は携帯を折り畳む。
(綾さん、僕は悲しい。まさかあなたがそんな事をしてしまうとは・・・)
(でもそれでも綾さんは綾さんだ。たとえその手が血で染まっていたとしても、僕の愛は変わらないよ・・・)
(それに・・・綾さんが背負った罪、もうすぐ僕も同じ罪を犯す)
(そうなれば僕らは同類だ。僕らは自然と結ばれるだろう・・・)
(邪魔者がいなくなれば、僕らの先には明るい未来が待っているんだ!)
晴れ渡る朝の空を見上げる表情は穏やかな微笑を見せている。
だがその瞳は、どす黒い感情によって不気味な光を放っていた。
その日の夜。
「つ・か・さ・ちゃ〜〜ん?」
不気味な笑顔で迫るトモコ。
「な・・・な・・・なに?」
そのただならぬ迫力につかさは思わず後ずさりする。
「いつかなあ〜〜〜?かっこいい美男子との合コンはあ???」
「ご、ごめんね。ま、まだちょっと・・・」
「ふ〜〜〜ん。あたしをダシに使ってまで彼といちゃいちゃしてんのに、そのあたしを放ったらかしにするんだ〜〜〜。つかさってそんな子だったんだ〜〜〜」
「ち、違うってばあ!!トモコにお似合いの男の人が見つからないだけで放ったらかしにしてるわけじゃ・・・」
「そこまで気にせんでいい!!それにあんたの彼って泉坂高校の大草くんと友達なんでしょ!?」
鬼気迫る表情で迫るトモコ。
「あの人はダメだって!!トモコ絶対酷い目にあう・・・」
「あんたの価値観をあたしに押し付けんな!!それに危険な恋もいいんじゃ!!」
「と、トモコぉ〜〜〜・・・」
「・・・」
そんな話をしながら道を歩く二人。
道の脇に立っていた男など気にもならなかった。
「今ターゲットが通過した。ポイントまであと150秒。予定通り行け」
[了解]
黒い意志がつかさに襲い掛かろうとしている・・・
「いい、さっさとしないとあたしがあんたの彼を奪っちゃうよ!!」
「ちょ、ちょっと何言い出すのよ!?」
トモコの爆弾発言につかさは思わず慌てる。
「ふっふ〜〜ん、男ってのは大概大きな胸に惹かれるのよ。その点ではあたしのほうが有利だもんねえ」
「そんな事ないもん・・・淳平くんは満足してくれてるはずだもん・・・大丈夫だもん・・・」
『大丈夫』と言いながらも、つかさはあからさまに落ち込んでしまった。
「あれ?なんか悩みでもあんの?」
「うん・・・淳平くん、あまりあたしを求めてくれないの・・・」
「はあ?」
「前に過ごしたときもそう。あたしは何度も何度も達して気を失いそうにもなるくらいだったんだけど、淳平くんは朝までに2度しか・・・」
「・・・」
トモコは顔を真っ赤にして言葉を失っている。
「淳平くんは『満足だよ』って言ってくれてるけど、淳平くんの年頃の男の人だったら普通は朝までだったらその倍はするって言うし、あたしもそうして欲しい・・・」
「・・・ ・・・ 」
トモコの顔はさらに赤くなる。
「ねえ、それってやっぱりあたしの魅力が足りないからかな?どうすればトモコみたいに魅力的になれるかな?」
つかさは真剣に悩んでいた。
救いの目をトモコに向ける。
だがトモコは、
「・・・帰る!!!」
とても怒っていた。
「ちょ、ちょっとトモコ!?」
「あたしはあんたと違って未経験なの!そんなアドバイスに答えられるわけないでしょ!」
「うっ・・・」
「そんなの自分で考えな!! はあ、自分が情けなくなってきたよ。高3にもなってまだバージンなんてさ・・・」
トモコは十字路の真ん中でつかさに背を向け、別の道へと足を進める。
「トモコゴメン!!だからまってよお〜〜」
つかさは半泣きで謝りながらそんなトモコを追おうとした。
その時、
グォオオオオ・・・
迫ってくるエンジン音。
そして、
カッ!!
つかさに向け、眩い光が照らされた。
「ひいっ!!」
大きな車が猛烈なスピードで迫ってくる。
しかも、気付くのが遅かった。
光はもう目の前まで来ている。
あまりの恐怖で声が出ない。
身体も硬直して動かない。
(あたし、死ぬ!?)
そう思った瞬間、
「つかさ!!」
ドン!!
「きゃっ!?」
トモコが突き飛ばした。
突き飛ばされたつかさはそのまま倒れていく。
つかさは倒れ行く視界の中で、
大きな衝撃でくの字に曲がり、
宙に浮きあがるトモコの身体が
瞳にしっかりと映っていた。
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