記憶鮮明 現在形の彼方 - たゆ   



最後の君は微笑を返してた
あの時の君はきっと幸せだった
だから僕もくりかえす
空に向って微笑みを
風に向ってキスを
押しては返すさざなみの様に
くりかえし続ける

記憶は雨だれの様に
ぽつりぽつりと胸に降り積もっていくんだね
忘れていた出来事をゆっくり思い出していく
胸が痛い
傷みの形は君の影
この疼痛を治して欲しい
癒せるのは君の手だけ
たったそれだけなのに
君はどこにもいない

名残り惜しそうに鶯の声が響く
春を超え
夏になっても一人ぼっちの鶯老の声
つがいを求めて鳴く声は
初夏の墓地に響く

僕も独り鳴いている
届かない想いを込めて



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