TAKE3 『回想 映研部室(中編)』 - そーす 様  


『やっと本題に入れるな』

『さて夏合宿の場所の件なんだけど・・・・・』

一息ついた真中が話そうとすると

『あ、あの〜〜〜』

『なんだ・・・さつき』

『ええっと・・・・』

美鈴も今気付いた

真中達との会話に夢中になっていたが、
先ほどから
自分以外の三人(綾・さつき・小宮山)が一言も言葉を発していないことに

そしてその視線がすべて兄が手を動かしている黒板にそそがれていることに

『合宿の候補地のことなんだけど』

『火山・・・・洞窟・・・・雪山・・・・etc』

『ああ・・・・見ての通りだ』

それがどうした?と言わんばかりに答える真中

『訳が分からないんだけど・・・』

『あっ真中くんの家もあるよ、北大路さん!』

(と、東城さんっ!今はそういう問題じゃっ)

心の中で綾に鋭く突っ込みをいれながら、事の成り行きを見守る美鈴

『さっき美鈴も言っていたけど、いくら公平な審査がされたからって肝心の映画が駄作なら
意味がない。だが金をかけたからいい映画が作れたと思われても困るからな』

『ええっと持ち物は・・・・・ナイフ・・・・・着替え・・・・・ビデオカメラ・・・・』さつき

美鈴も一緒に黒板の文字を読み上げる

『出演者:東城綾 西野つかさ 北大路さつき 南戸唯 端本ちなみ・・・・・向井こずえ・・・・外村・・・美鈴!?』

『ちょっとぉっ!なんで私まで入ってんのよ!女優はやりたくないっていったでしょ!?』

『あの〜〜〜』

『なんだい?東城』

『ええと今回の脚本は?』

『ああいらない(きっぱり)』

『うぐっ・・・・』

『ああ、ち、違うって』

『これはオレがこれから東城と『ずっと』一緒に映画を作っていくために必要なことなんだよ
 それに東城ってカメラ映りすごくいいと思う』

(そ、そんな今思いついたような理由で納得するわけが・・・・・)
(それにどこかで聞いたことがある台詞だわ・・・・)

『そ、そんな・・・真中くん。私なんて(ポッ)』

(するのか!?)

『だから・・・・今回だけ今回だけお願いしちゃダメかな・・・・
 必要なんだよ東城のことが!!(まじまじ)』

『ま、真中くんがそういうのなら・・・・・コクン』(もじもじ)

『早ぁああああああっっ!!!!』美鈴&さつき

お互いを見つめる真中と東城

2人の間にはゆっくりとした時間の流れが・・・・・

『わ、私もどうしよっかな〜〜〜』

ちらちらと真中の方をみながらさつきも口ごもる

『ああ・・・・・しょうがないか意思の強いさつきがこれだけ嫌がるんだから・・・・』

『北大路・・・・欠席・・・・と今回は出演者がかなり多いからねぇ 一人くらい減ってもどうってことも』

『残念だぜ・・・・さつき良い夏休みを過ごしてくれ!』

『ちょっ・・・・ちょっとぉ!嘘よ♪冗談冗談・・・あれっ?・・・って意思が強いって何よ!?
 東城さんと私の扱いがどうしてこんなに違うの!?』

さつきは今にも真中に掴みかかりそうな勢いでまくし立てる

『ひ、ひとまずこのむちゃくちゃな設定とキャストの理由を説明してもらおうかしら?』

(も、もうくじけそう・・・・)

『コホンッ』

一拍置いて真中

『金をかけるわけにはいかないってのは話したよな』

『うん』(一同うなずく)

『俺たちの映画に足りないもの・・・・・それはリアリティィィイイだ!!』

突然叫びだす真中

『フィクション・・・・それもファンタジーにリアリティを求めてどうするのよ』

『だからこそだろ!人は現実で生活していく中でも夢を見る
ならフィクションの中で現実を認識することで、より現実感がなぁ・・・・・』(10分ほど熱く語る真中)

(あ〜あ、また始まっちゃった)

『・・・・つまりは映画を見て自分が実際体験したみたいに感動するっていうこと』

(要約するとこうなるのかしら?)

『US○とは同じ、いや逆の発想なのか・・・・』

(理にはかなっているとは思う 
ゲームなどの世界を実際に体験できるというのは確かに魅力的だ・・・・けど)

だが幻想は幻想だ・・・・・妄想という枠を飛び越えて現実になることは決してない
US○にしてもバーチャル(仮想現実)と言っていることから半ばその事実を認めていることになる
(そんな風に感動する映画なんて簡単に出来るわけがない しかも資金がほとんどないこの状況で)

『撮影場所もすでに確保している』外村

美鈴の思惑をよそに外村が述べていく

『これらの条件を満たす無人島をテアトル泉坂の館長が買い占めたらしい』

『『『金かけてんじゃん!!!』』』(全員一斉)

『ああ・・・・・語弊があったな。『撮影』には金をかけない』

『あの〜〜〜〜〜』

『なんだ?やっと発言権が回ってきた小宮山よ』

『各人の持ち物に着替えとナイフとビデオカメラってあるんだけど、まさか・・・・・』

『ああ・・・・・そのまさかだ』
『実際に無人島で体験したことをビデオに撮って来てもらう』

『笑いあり涙あり感動あり様々なハプニングあり(Hなのも可)そして・・・・・・「別れあり」
 皆実際に体験することばっかだから臨場感もバッチリだろ?演技なんてする必要ないと思うし〜
 俗に言うリアルファンタジーって奴だね(≧∇≦)b 』

真中とどめの一言

『そ、それをノンフィクションって言うんじゃ・・・・・・』美鈴

外村の目が光る

『馬鹿やろう!そんな危険な撮影を一介の学生風情が実際にやらかしたなんて事がばれたら
最悪教育委員会・・・・・いや!映画そのものが放映されなくなるだろうが!!!』

『・・・・・・・・・・・・・・・』(全員目が点)

『いぃやぁあああああああああ!!!!』

一同の金縛りを解いたのは意外にも美鈴の悲鳴であった
そして扉の方に向かって一目散に逃げ出そうとする

『待て、美鈴!なぜ逃げるんだ!!』

『別れってなによぉおおおおっ!』

素で驚いた表情の真中が後ろから美鈴を羽交い絞めにする

『何もない無人島でかよわい女子高生達だけでどうやって生活できんのよぉっ!?』(どたばた)

『自分でかよわいって言っているうちはきっと大丈夫だよ・・・・・多分』

『そういう問題くわぁあああああああ』

『それに大丈夫(≧∇≦)b 俺たちいるし・・・・・HAHAHA』

『尚のこと悪いわぁああああああ』

『食料のことなら心配ない 野獣を放し飼いにしているそうだ』

あくまでも冷静な兄

『とにかく私はいやぁ、帰るかえるぅぅうう!!』

『ねぇっ!東城さんもきっとそう思うでしょう!?こんな滅茶苦茶な話ないわよね』

『(真中くんには私が必要・・・・必要・・・・)ポッ・・・・えへへぇ・・』

が綾はさっき真中からかけられた言葉がよっぽど気に入ったのか反芻しては
一人顔を赤らめている

(駄目か・・・・・・)

『ねぇっ!!北大路先輩もおかしいと思わない?下手すりゃ生きて帰れないのよっ私たちっ!!』

『(真中と無人島で2人っきり・・・・様々なアクシデントの中お互いを助け合い、やがて2人は・・・・・)きゃっ
やだあっ・・・・真中・・・・・ほらっお月様が見てるってばぁ』

(そ、そうだこの人は・・・・こういう人だったんだ)

『もう・・・・・ダメだ・・・・』

美鈴は今更反対意見(唯一まともな思考の持ち主)が一人だと気付く。
すなわち自分がどういう反応をしようと既に決定事項なのだ
(不幸のドン底にたたきおとされた感じ)

変えられない運命
だがそれでもあきらめきれないくやしさのせいなのだろうか
ついその感情が表に出てしまう・・・

『泣いてももう遅いぞ・・・・・美鈴』

『ぐすっ・・・・ひっ・・・な、なんでぇ』

『今日が出発日だからだ お前の用意もほら!ちゃんとしてある』

といつものバッグをなげてよこされる

『が、学校は?残りの授業は?』
放心した美鈴
一縷の望みを託し 万感の思いを込め 美鈴は最後の疑問を口にする

『かなり長期の撮影になりそうなんでね、早めに休みをもらった』
『な、なんて学校・・・・・はは、は』

もう・・・・・乾いた笑いしか出てこない

『それにしても』

『全く・・・・いい年頃の娘なんだからもう少しおしゃれな下着くらい用意しとかんか』
『サイトに載せられんだろう?全く兄として嘆かわしい』

美鈴の耳には外村のセクハラまがいな発言はすでに届いていなかった・・・・・

(く、狂ってる・・・・・・コイツラ)


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