忘却〜第1話〜 - 惨護 様
何も無い白いだけの一面が広がっている。辺りは何の音もしない
ただ、淳平がひとり倒れているだけ
「なんだここ・・・・・?」
起き上がり辺りを見渡す
なにもない四方八方見ても先が見えない
「お〜い!!だれかいないのか〜?」
その呼び声は返ってくるわけもなく
ただ、辺りに木霊していた
「お〜い!!に・・・・誰呼ぼうとしたっけ・・・・・?誰だっけ?」
誰かを呼ぼうとしたが頭の中に浮かぶ顔がすべて真っ黒で誰かがわからなかった
「なんだ、なにがどうなってんだよ!!!!」
淳平はおもいっきり地面を叩いた
すると地面が割れた
「うわあああああああああああああああああ!!!!!」
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汗だらけで飛び起きた
周りはしろく病室のようだった
「・・・・ここは・・・?」
「起きたのね・・・淳平」
「母さん、どうしたんだよ泣く事無いだろ?」
涙ぐみながら話すその姿は淳平には理解できなかった
「淳平くん!!」
「・・・・・・・・・」
淳平の母の隣にいたずっと淳平の手を握ってる少女がこっちに笑いかけた
「真中〜!!」
「・・・・・・・・・」
急に飛びついてきた少女の行動にさっぱり分からなかった
「真中くん・・・・」
「・・・・・・・・・」
少しはなれたところから見ていた少女は涙目になりながら名前を呼んだ
「じゅんぺ〜!みんなしんぱいしてたんだぞ!」
「・・・・・・・・・」
さっきまで変わらなかった無機質な顔が明るくなった
「唯、なにがあったんだ?」
「覚えてないの?西野さんとデート中にじゅんぺーがどじって頭打ったんだよ」
「西野ってだれだ?つーか、この子達誰?」
「え・・・・・」
辺りを見回しながら話すと、まわりから絶望の色がこぼれた
「よう、起きたか真中!」
「誰だ、お前?」
「お前の親友の外村様だろうが!!!・・・・って、もしかして・・・・・」
後から病室に入ってきた外村も顔を青くした
「起きたのか、真中・・・・一生寝てれば、つかさちゃんは俺のもんだったのに・・・・」
小宮山がそんなことを言ったとたん顔面を思いっきり外村に殴られた
「場面を考ええお、このどあほ!」
耳元で小さな声で小宮山を怒鳴った
「は?なに言ってんだ、小宮山?」
皆その言葉には、「えっ!?」という顔になった
「ちょっと淳平・・・・」
「何、母さん?」
「この子誰?」
淳平の母は唯を指差しながら言った
「唯だろ?つーか、お前引っ越したんじゃなかったっけ?」
「この子は?」
今度はつかさを指差した
びっくりした表情を見せるつかさを目を細めながら見た
(よく見ると・・・か、可愛いな〜・・・・・・)
「どう?淳平?」
「え!?はじめて見たけど・・・・どうかした?」
その瞬間、驚きと困惑の表情が皆に浮かんだ
「・・・・この子は?」
次は綾を指差した
綾は何かに願っているように手を合わせて俯いている
(あ、この子も可愛いな〜・・・・・)
「で、どうなの?」
「え?俺はぜんぜん知らないけど・・・・」
「お母さん、ちょっとお医者さん呼んでくるね・・・・」
淳平の母はちょっとあせりながら病室を出て行った
「どうしたんだ?・・・・・あ、あの〜恥ずかしいんだけど・・・・」
淳平は顔を赤くして頬をかきながら言った
するとつかさはすこし顔を赤くして手を離した
「で、さっきも言ったけど誰ですか?」
その瞬間、赤くなった顔がいっきに暗くなり涙目になってきた
淳平は焦って目をそらして辺りを見回すと周りにいた女の子は全員泣いていた
「じゅんぺ〜が・・・・ヒック・・・・」
「唯!泣いてたらわかんねえだろうが!」
淳平はベッドから起き上がり唯の肩を持って焦りながら言った
「なにがどうなってんだよ、唯は泣くし、周りの女の子も泣くし・・・・・・」
「俺が説明してやるよ・・・・・」
完全に頭がパニクってる淳平のもとに外村が話しかけてきた
「え〜っと・・・・外村・・・君?」
「あ〜そうだ俺は外村ヒロシ、でこっちは東城綾ちゃん、こっちは北大路さつきちゃん、でこのこが西野つかさちゃん」
一人一人指を指しながら言った
「で、外村君、俺はいったい何が?」
「外村でいい、なんでもないのに男から君付けは気持ち悪いからな」
「んじゃあ、外村、いったい俺は?」
「どこまで覚えてる?」
「・・・・・・いっつ!」
外村の一言で一気に頭が痛くなった
「無理に思い出させない方がいいよ」
「先生・・・・」
外村は少し下がり医者を前に出した
「淳平君、君は西野さんと一緒にデートに行っていた」
「は、はぁ・・・・」
(え?俺、こんな可愛い子と一緒にデート行ってたんだ・・・・・どんなことしたんだ・・・・?)
少し妄想を膨らましながら聞いている淳平を尻目に話を続けた
「君はそのとき船に乗った・・・・その時なぜか足を滑らせ海に転落した」
「はい・・・・・」
(船?・・・・・・・思い出せないよな・・・・・)
「その際、後頭部を船にぶつけた・・・その痕はいまでもたんこぶとして君の頭に残っている」
(え・・・・この聞いたことのあるパターンは)
「・・・・もしかして・・・・あれですか?」
「そうだ、君は記憶を失っている」
「ええええええええええええええええええええええええええ!!!!??????」
病院内に淳平の叫び声が響き渡った
だが、周りの女の子の泣き声はやまなかった
「学力に関してはさし代わりは無い・・・はずだ」
「ええ!?学力が下がってるって事もあるんですか!!??」
かなり驚きながら淳平は言ったがこの時だけは笑いながら外村が
「大丈夫、前のお前は頭悪いから」
「え?そうなの・・・・・」
「おほん!で、私が言いたいのは君は記憶喪失になっている」
少し無視されたのをいらだってかわざと咳を付いて話を続けた
その姿を見た淳平と外村は笑いそうになっていた
「だが、それが一時的なものであればいいが、一生直らない可能性がある」
「うそでしょ・・・・・」
「お、おい!」
そのことを聞いたつかさは淳平が引き止めるまもなく走って病室を出て行った
「あ、あたし、追いかける!」
「あたしも!!」
「唯も!!」
さっきまで淳平を取り囲むようにいたさつきたちは全員つかさを追って出て行った
「お〜お〜、一気に華がいなくなったよ」
「そしてだ!」
外村が少しびびりながらいうとまた医者が強調していった
またしても二人は笑いそうになったが、さっきから小宮山が暗くなっている
「いいんだ、おれなんて無視されるんだ・・・・・」
小宮山の悲痛の叫びも誰に聞こえるわけでもなく小宮山はただ無視され続けている
「その記憶は君自身がふさぎこんでしまっている」
「え?」
「記憶喪失のメカニズムを話しておこう・・・・・」
医者の熱弁にすこし圧倒されながらもすべて聞いた
「え、え〜っとつまりは忘れたいことに自己防衛でプロテクトをかけたって事ですか?」
「そうなる・・・・つまりだ!君にしかそのプロテクトははずせない!」
「ええええええええええ!!!????」
医者が指差しながら言うと淳平と外村、小宮山はかなり驚いた
「まあ、あんまり一般生活に支障は無いはずだから、ゆっくり思い出していくといい・・・・あ、今日にでも退院できるから」
(((さっきまで、案だけ重かったんのになぜこんなに軽いんだ・・・・・)))
そんなことを思いつつ、医者が藪じゃないのかとも思った
「では、頑張りたまえ」
「とにかく、この外村様が今の状況を整理して話してやる」
医者が出て行った後、小宮山が冗談を交えつつ外村が真剣に話した
「え〜つまり、四角関係の真ん中だと・・・・て、ちょっと待てえええええええい!!!」
すこし納得したように見えたがびっくりして思いっきり外村の前に手をかざした
「俺がどうしてもててるんだ!?」
「知るか!!!それは俺が知りたいくらいだ!!!!」
外村が肩をつかみながら淳平を圧倒して言った
「そうか・・・・でも大草の方がもててるんだろ?」
その瞬間、外村の顔が凍った
「ちょっと待て!なんで大草を知ってるんだ?」
「なんでって、俺は大草と中学一緒だったし、よく遊んだし」
懐かしさをしみじみと感じながら語る淳平をよそに外村が少し考えて
「ていうことは・・・・天地って知ってるか?」
「誰?そいつ?」
「う〜む・・・・東尾繭子は?」
「知らないけど・・・」
「じゃあ・・・・・・・・・」
淳平が高校で知り合った人の名前を読み上げていった、淳平はそのたびに知らないと言い続けた
「で、それがどうなるんだ?」
「たぶん、お前は中学半ばの記憶しか残ってない!!!」
「えええええええええええ!!!!?????」
また淳平の声が病院に響き渡った
「でも、なんで?」
「お前は、大草や小宮山のように中学1年あたりからの知り合いは覚えていたが、西野や東城のように3年あたりに知り合った人を覚えていない!!!」
真剣に淳平と淳平の母はきいているが小宮山は聞く気が無いのか看護婦を漁りに行った
「つまり、中学のあるときを境に記憶が途切れていることになる!!!」
「へ〜・・・・・・で?」
「(・・・こいつ、記憶なくしても鈍いな・・・)だから、その境に何かあったはずだ!!!それを何とかすればだな────」
「記憶が戻るって事か!!!」
「ああ、そういうことだ」
外村が決めたかったが淳平に先を越されて少しあきれた
「よっし!そうと決まったら思い出すために頑張んないとな」
「いや、お前が一番頑張らなきゃならんのは・・・・・・」
「西野の心のケアだな・・・・・」
「へ?・・・・・・どういうこと・・・・・」
つづく・・・・
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