even if you...3 - つね 様
『不安』
それから俺と西野はしばらく校庭のベンチに座っていた
「わぁ、綺麗。見て、淳平くん」
空には満天の星が二人の門出を祝福するかのように輝いている
「ホントだ。こんなに綺麗な星空が見えるのもこの辺りでは珍しいよな」
(ホントに綺麗だ…でも、何より一番綺麗なのは…)
淳平はつかさに見とれていた
「淳平くん、二人で願い事しようよ。これだけ綺麗だったら何でも叶えてくれそうでしょ」
「あぁ、そうだな。じゃあ…」
そのとき空に一筋の流れ星が流れた
「あっ、流れ星! 淳平くん早く願い事しなきゃ!」
「あ、うん」
(西野といつまでも一緒にいられますように)
「よしっ、終〜了っ。 ねぇ淳平くん、何願ったの?」
「えっ、それは……」
「もぉ、はっきり言ってよね。気になるじゃない。 何?」
淳平はうつむいて、顔を真っ赤にして言った
「西野と…いつまでも…一緒にいられますように…って…」
そう言ったとき、つかさの腕が淳平の背中に回された
「ありがとう。あたしも同じ事お願いしたんだ…いつまでも一緒にいようね…」
「いつまでも一緒だよ。いつまでも。」
二人はまたしっかりと抱き合った
そして帰り道
淳平はつかさを送っていき、二人はつかさの家の前まで来ていた
「じゃあ、淳平くん。また明日。」
「あぁ、また明日。」
つかさは目一杯手を振りつづけている
そんなつかさの姿が今日はいつも以上に愛しく思える
淳平はつかさのことばかりを考えながら帰り、家に着いた。
「あら、淳平。やけに遅かったのね。何かあったの?」
台所にいた母が尋ねてきた
「あ、うん。ちょっとね。」
そう言う淳平の顔は明らかに上機嫌と分かるもので、喜びを隠し切れない様子である。
「あの子どうしたのかしら。」
淳平は笑顔のまま部屋へと入っていった。
(あぁ、本当にまた西野が俺の彼女になったんだ。明日も早速バイトで会えるし。また明日が楽しみになってきたな。)
淳平はそう思いながら、眠りについた。
翌日、
学校が休みの淳平は、朝からバイトに出た。
行きがけにいつものようにケーキ屋を確認。
(……いない……)
(西野、バイト午後からなのかな?今日もバイトに出るって昨日言ってたけど…)
そのことが少し気になったが、午後になればつかさも来るだろうと思い、バイト先へ向かった。
バイト中、
「淳平、どうしたんじゃ?やけに機嫌がええのぉ。もしかして、つかさちゃんと何かあったのか?」
「え、えぇっ!」
バッシャーン
動揺した淳平はバケツの水を引っくり返してしまった。
「何動揺しとるんじゃ。全部話してみい。」
館長は笑いながらそう言った。この老人、意外に勘が良い。
こうして、淳平は館長につかさと付き合うことになったことを話した。
「ほぉ、なるほどのぉ。良かったじゃないか。でもつかさちゃんを泣かせたらわしが許さんぞ。」
館長の言葉は意外だった。文句を言われるかもしれないと思っていたが、素直に応援してくれた。
「もちろん。必ず幸せにしてみせますよ。」
「おぅ、頑張れよ、淳平。」
「はい、ありがとうございます。」
これからは館長もいい相談相手になってくれそうだ。
バイト後
淳平は、DVDを借りに行くために街を歩いていた。
(結局、西野来なかったな。もう少し遅い時間にバイトいれてんのかな。)
そう思いながら店に入ると、こずえがいた。
最初は淳平の存在に気付かなかったが、しばらくたって、こちらに気付いた様だ。
「あ、真中さん。真中さんもDVD借りに来たんですか?」
「あ、うん。こずえちゃんも?」
「はい。このあいだ真中さんが勧めてくれた映画見ようと思って。」
二人は映画の話で盛り上がりながら、楽しそうに店を出た。
しかし、
店を出た瞬間、淳平は自分の目を疑った。
「それで、そのシーンがすごいんですよ。真中さん。……真中さん?」
淳平の目にはつかさとつかさの母が映っていた。
淳平は二人が建物の中に入っていくのを見た。
看板を見る。
(精神病院?)
澄み渡る空とは対照的に、淳平の心には不安が溢れていた。
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