even if you...10 - つね  様

『約束』




二人だけの夜が更けてゆく…


二人はお互いに強く求め合い、お互いの愛を確認しあう…


金色のセミロングの髪はしっとり濡れて、より濃く色づき、


潤った瞳、そして…




「…淳平くぅん…」


鼻にかかった甘い声。


そんな姿に淳平はどんどん引き込まれていく。


つかさにも淳平に対する想いが溢れてくる。




二人の行為はやがて終演を迎え…










そして……









朝焼けが二人を優しく迎える。


「ん…」


つかさが先に目を覚ます。


横には気持ち良さそうに眠る淳平。


(ふふ…淳平くん子供みたい。)


そんな淳平の顔を見て自然と微笑みがこぼれる。


(ちょっとイタズラしてみようかな…)
















(あれ…息が……息!息がっ…!)


「ふがっ、んんんんんっ!」


突然息ができなくなった淳平は必死にもがいた。


しばらくして息ができるようになり目を開ける。


目の前にあるものが近すぎて焦点が合わない。


「おはよう」


その声が聞こえてからようやくその姿が鮮明に映し出される。


ドキッ


「……おはよう…」


そう答えるのが精一杯で心臓が今にも飛び出そうになっている。


そんな淳平をよそに、つかさは起き上がり話を進めていく。


「親には一応泊まるって言ってあるけど心配してると思うし、あたし帰るね。」


「そ、それなら送っていくよ。ちょっと待ってて、着替えるから」


そして二人は家を出た。












二人は並んで歩幅を合わせながら歩いた。


つかさの家までの距離がだんだんと縮まってく。


10分も立たないうちにつかさの家が見えてきた。


「じゃあ淳平くん、ここまででいいから。」


つかさが笑顔で言う。


「うん。それじゃあ」


つかさは淳平に手を振って走り出した。


その背中を見て愛おしく思う。


淳平は決心した。









「つかさ!」


淳平は思わず呼び止めた。


驚いたようにつかさが振り返る。


「何?淳平くん。」


「…えっと…その…」




「何?はっきり言いなよ。男の子だろ。」


つかさはもう淳平の目の前まで来ている。





「その…結婚しないか?」


「…えっ」


さすがのつかさも突然のことに驚きを隠せない。


「べ、別に昨日のことの勢いで言ってる訳じゃ無いんだ。付き合い始めた頃から考えてたことで…」


「…いつまでも一緒にいたいんだ…。」


「それに告白したとき言っただろ、『つかさだけを見る』って。俺にはつかさ以外いないんだ。」


「だから…結婚しよう。」


つかさはまだ淳平を驚いた表情で見つめている。


「つかさ…?」






「あ…えっとね、淳平くんも同じこと考えてたんだな、って思って。」


「えっ、じゃあつかさも俺と…?」


「うん。結婚したいって思ってた。だって当たり前でしょ。あたしには淳平くんしかいないんだから。」


淳平の言葉をそっくりそのまま返すつかさ。


「決まりだね。」


つかさは微笑みながらそう言った。





「じゃあ改めて。つかさ、結婚しよう。」


「はい!喜んで。」


今、二人の間に誓いが交わされた。


この誓いは永遠の約束。


幸せへと向かう約束。


二人を結び付ける、


強く、


優しく、


温かい、


二人だけの約束















それから月日は流れて……



「真中先輩、卒業おめでとうございます。」


いつもは淳平には頭など下げない美鈴が笑顔で淳平を祝福する。


今日は泉坂高校の卒業式の日である。


とは言っても、すでに卒業式は終わり、今は映研の部員で集まっている。


「力也さん、ちなみ力也さんの第2ボタンが欲しいです〜。」


「ちーちゃん、そんなの言わなくても俺のほうからあげるのに〜。」


「力也さんってあたしの考えてること何でも分かるのね〜♪」


少し外れたところでいちゃつく小宮山とちなみ


そしてそれを無視して話を進める外村。


「まああれはほっといて…、真中、今日何時からなんだ?」


「えーと、2時からだから、あと2時間後だな。」


「じゃあ、真中くんいろいろ準備もあるだろうからもうそろそろ行った方がいいんじゃない?」


綾が気遣い、声をかける。


「ああ、そうだな。じゃあ俺、先に行くから。また会場で会おうぜ。」


「真中、緊張しすぎないでよね。」


笑いながらさつきが言う。


「たぶん大丈夫だよ。心配してくれてありがとな。」


手を振りながら淳平は走っていった。


その姿を見届け、外村が口を開く


「じゃあ、俺らも行くか。」

















泉坂市内の小高い丘の上にある教会。


今日ここで、二人の若者が結ばれる。


教会の中はたくさんの人々で溢れている。


その人の数が二人の人柄、周囲の人々との深く、広い繋がりを表している。










式は進み、二人は以前道端で交わした誓いを再び交わす。


そして、お互いに向かい合う。


(き…きれいすぎ…だよ…これ…)


つかさのドレス姿があまりに綺麗すぎて、固まる淳平。


そんな淳平とは逆に平常心のつかさ。


「何ボーッとしてんの。ほら、早く。」


それでもなかなか動かない淳平を見かねたつかさ。、


「もう。じゃああたしからいくよ。」


一瞬膨れっ面を見せて、つかさが淳平に近づき、背伸びをする。


つかさは淳平にもたれ掛かるように抱きつき、


何秒の間唇が触れ合っただろうか、


「いいねー!初々しいねー!」


「おめでとう!」


「熱いねー!お二人さん!」


その間式場の歓声は鳴り止まなかった。










式が終わり、外に出る。


太陽の光がまぶしく、風が心地よい。


二人はもう一度目を合わせた。


「淳平くんこれからもよろしくね!」


「ああ、よろしく、つかさ!」


幸せをかみ締めるように、二人は見詰め合い、


両親や友人、たくさんの人からの祝福を受ける。






もう決して壊れることの無い二人の絆。






『ずっと一緒にいられますように…』






あの日星空に願った二人の願い、







それが今現実のものとなった。



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