『9月16日』 - つね   様




今日は朝から何かが違っていた。


昨日の夜はなかなか眠れなかった。


何日も前からこの日を指折り数えた。





―――今日は君の誕生日―――










SS『9月16日』










いつからだろう…この勘違いから始まった恋が、こうして本当の恋に変わったのは。


思えば今まで色んなことがあった。


楽しいことも、嬉しいことも…


時には辛くて泣いたこともあった。


僕は優柔不断で全然恋愛上手な男じゃなかったから、よく君を悲しい顔にしてしまっていたかもしれないね。





それでも今が、こんなにも幸せだから、


そのすべてが今日のためにあったと、


そう思ってもいいかな?

















これから…


これから僕が、君を幸せにしてみせる。


ありふれた言葉だけどそう誓うよ。


だから今日は手を繋ごう。


静かな夜空の下、二人で手を繋ごう。


僕が君の温もりを、君が僕の温もりを、お互い感じられるように。


二人でこうしてられるって幸せだな。


照れ臭そうに笑いながら、そう思えるように。





秋の虫が透き通った声で歌う中、


「もうそろそろ帰ろうか?」


そう呟くと君は僕の肩にもたれ掛かった。


「もう少し…こうしていたいな」


僕は微笑み君の頭に頬寄せる。


ほら、今年もまた幸せに触れられた。


穏やかな時が進む。


今日は君の誕生日。




END