ふたり -
赤人様
第一印象はとりあえずよくなかった。
歳下のくせになにかと絡んでくるし。
頼んでもないのにいろいろと手をだしてくる。
でもいつからかあいつがないと落ち着かなくなっている自分がいた。
たぶんあれが初恋だったのだろう。
第一印象?
そりゃもう最悪。
歳が一つ上にもかかわらずなんにも自分じゃできないし、気が弱くて友達にいじめられるし、挙句にすぐに泣く。
でもいつからかそんな頼りない男の子の事が気になって仕方が無くなっている自分がいた。
たぶん初めて好きなった人だった。
「明日の午後3時いつもの公園で待っているからな、遅れず絶対来いよ。」
告白する気だった。
まだつきあうってどういうことなんだか全然わかってなかったけど、どうしても今「好きだ」って伝えておかなくちゃいけない・・・私にはもう残り時間がなかったから。
「明日の午後3時いつもの公園で待っているからな、遅れず絶対来いよ。」
そうあいつにそう言われた時、ドキドキとした。
チャンスだと思ったから。
俺の気持ちを伝えておきたかった、何故だか伝えとかないといけない気がした。
「ずっと淳平のこと・・・好きだった。」
簡単なことだ、ただそう言えばいい。
公園の中には約束の時間よりも前から来て私の事を待っている淳平がいた。
ただ声をかけて自分の気持ちを相手に伝えるだけ。
でも足は動かず立ち尽くしたままだった。
2時30分。
約束の時間は3時なのに緊張からか気づいたら公園に向かったいた。
3時。
どうやって自分の気持ちを伝えるか考えていたら時間になっていた。
でもあいつの姿はまだなかった。
4時。
もうここに来てから1時間以上たっている。
まだあいつは来ていない。
でも俺は待つと決めていた、あいつの事だから約束を破るなんてことは絶対にない。
パラパラと雪が降ってきた。
6時。
俺は心配になっていた。
もしもあいつがここに来るまでに何かにあったんじゃないかって考えるときがきではなかった。
それでも俺は待っていた。
雪はすでにうっすらと積もってきていた。
7時。
ついに親が迎えに来た。
何こんな時間までこんな所にいるのって叱られたけど、俺は頑として動こうしなかった。
その10分後俺は意識を失った。
淳平は約束の時間が過ぎてもずっと待っていた。
ただ一歩足を踏み出すだけ、それだけなのに何故かできない。
今までは勇気をだして、淳平のために一つ年上の奴にも突っかかっていけたのに。
今は・・・。
4時。
残された時間がなくなってきた。
本当はすぐに終わる予定だったのに・・・
時間がない・・・
それだけできれば何もいらない。
トン。
踏み出した足の方向は家に向かっていた。
去り際に見えた淳平の顔が。
私が絶対にここに来ると信じきっているその顔がひどく胸を締め付けた。
それが最後に見た淳平だった。
気がつくとベッドに寝ていた。
しばらくすると母さんが部屋に入ってきて、高熱をだして寝込んでいた事を教えてくれた。
あの後あいつが公園に来なかったかと尋ねると、よく理解できない事を言った。
「唯ちゃんなら今日の朝引っ越したわよ。」
理解できた途端止める母さんを振り切ってあいつの家の前まで行ってチャイムを鳴らした。
でも何度鳴らしても返事は返ってこなかった。
ようやくあいつが本当にいなくなったって事に気がついた時、いろいろな気持ちに胸が締め付けられ涙がこぼれていた。
ピンポーン
マンションにはただむなしくチャイムが鳴り響いていた。
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