いちご100%最終回記念ショートショート『その後の二人』 - たゆ
短いですが記念に書きました。
全ての遠恋の恋人たちへ・・・
いちご100%
最終回記念ショートショート
『その後の二人』
夏草の茂る古びた日本家屋。
吊られた蚊帳。
いつの間にか消えた蚊取り線香。
畳の部屋。
二つ並んだ布団。
熱くけだるい西日。
日暮れにはセミしぐれ。
汗のにおいはその日の終わりの残り香。
繋がった手と手、心と心、身体と身体。
心地よい風が軒下の風鈴を鳴らす。
寝ゴザの上の貴女の身体がぴくりとゆれた。
張られたままの蚊帳の中で昼夜問わず睦言を繰り返す。
飽きる事なき抱擁。
白い肌に残る紅い花。
幼さを残す顎のラインはいつかなぞった昔話。
閉じられた瞳の長いまつげがフルフルと振るえ、夢うつつの世界にいるのだと知る。
暮れなずむ光と影、頬を撫でる風が夕暮れを告げる。
縁側から急速に暗くなる室内を見る。
人影になる貴女を見守り続ける。
今年のお盆は彼女の別荘に来た、墓前へ報告も兼ねて長い休暇を取った。
幼少の彼女を育てた今は亡き祖父母へ手を合わせた。
休みは一週間、朝は墓掃除、それ以外は何の予定もない。
二人きりの休息。
しとどに落ちる汗と肌のほてりを井水で流し、二人はいつまでも一つになる。
時に性急に、時に哀願するように、逢えなかった月日を身体と心で埋めようとしていた。
ある夏の日の出来事・・・
・・・それさえも今は昔の話。