いちご100%最終回記念ショートショート『遠雷』 - たゆ
『その後の二人』の続き書きました。
恋人たちの詩。
いちご100%
最終回記念ショートショート
『遠雷』
一日中窓を開け放し外の風を入れる。
開放された縁側の窓。
庭木にさえぎられ室内は見えにくいとは言え、身につけてるものといえば最低限以下の姿、真中はトランクス、つかさは身体に巻いたタオルケット。
防犯と言う観念のない野放図な田舎の一室で赤子の様に無防備に過す。
日中でも大きなヤブ蚊が入ってくる田舎では蚊取り線香は必需品だ、大きな客間の真ん中に二組の布団を敷いてそこで裸同然で過す二人には蚊帳も必要だった。
汗ばむ肌が布団に引っ付く不快さをなくすために寝ゴザを敷いた。
真中ののど元を伝う汗がつかさの胸元に落ちる。
井戸水で冷えたはずの肌に玉の汗が噴き出ていた。
前日の夜行列車に乗った二人は朝一番に最寄の駅に到着した。
休暇初日の予定は部屋掃除、伸び放題になった雑草の草刈り、墓掃除。
部屋の掃除はつかさが、草刈りは真中に分担し早々に手際よく終えると昼となった。
「暑いねえ淳平くん、あっさりしたものがいいと思ってこれ作ったよ〜」
のど越しのいい冷えたソーメンが風呂上りの真中を待っていた。
テレビは昼のニュースで夕立の予報を告げている。
向かい合ってちゃぶ台でつかさとソーメンをすする。
ゆっくりと汗をかいたグラスの麦茶を飲む。
草刈りのせいで虫の声もなく無音の庭。
無言。
絡む目線。
「お昼寝しようか」
それが合図だった。
遠雷が涼やかな風を運び夕立の訪れを告げた。
真中はつかさの背を流す。
冷たい水が弾かれ、きらめきになって落ちる。
触れる。
永遠にも似た時を閉じ込めるために繰り返されるそれは愛の言霊。