いちご100%最終回記念ショートショート『変わらないもの』 - べりやん 様
お久しぶりです
ってかここでは初ですが・・・(´・ω・`)
私も便乗して書かせてもらいました
いちご100%。最後のシーンを見ながら書いたんですけど
やっぱ自分的にも色んな想いが重なってすごく切なかったです
それでは読んでもらえれば光栄です
いちご100%
最終回記念ショートショート
『変わらないもの』
飛行機に揺られて数時間
やっと地上に降り、足早に出口へ向かう
一歩外に出ると熱気が襲ってきて思わず目を瞑ってしまった
久しぶりの日本だ
「んー・・・やっぱどこも暑いなぁ」
長い時間座っていたので体が重い
ぐぅ〜っと体を伸ばしてタクシー乗り場へ向かった
早く出たと思っていたのにすでにタクシー乗り場には列が出来ている
仕方なく並ぶがなかなか進まない
やっと自分の番の時には汗が滲み出て流れそうになっていた
すぐさまに中に入ると冷房がほどよく効いてて気持ちいい
「ふぅ」と1つため息を吐いた
「今日は暑いね〜冷房強くするかい?」
「あ、大丈夫です」
「そうかい?っでどこ行きます?」
「泉坂にお願いします」
「泉坂ね〜おねぇさんおめかししてるけどデートか何か?」
「あははは。久しぶりに友達に会うだけですよ」
「へ〜。そりゃ楽しみだね。久しぶりに会うとしたらみんな結構変わってたりする子居るからなー」
・・・淳平くんは変わってるのかなぁ―――
車がやっと出発する
運転を始めるとお互い何も話さなくなった
つかさは鞄からそっけない封筒を取り出した
表に『西野つかさ様』と小さく書いてある
カサッ
何度この手紙を読んだだろう
でもまた・・・今はもう一度読みたい
『
西野つかさ様
元気にしてる?突然の手紙びっくりしたと思います
誰?とか思わないでくれよ〜・・・
西野がパリへ行ってから何年経つんだろうな
きっと西野は毎日夢へ一歩一歩進んでるんだと思います
俺はというとお金を貯めては世界を旅して回ってる
西野に言ったと思うけど、東条の小説に合った風景を探してるんだ
あれは日本じゃ撮れないからなぁ・・・
いつか撮れたとき、西野に一番に見せたいと思う
・・・いつになるかわからないけど
っで今回なぜ手紙を送ったのかというと
小さな。小さな映画だけど俺の手で撮ってみたんだ
誰かに見せたいって思った時、西野が一番に浮かんだ
だからどうしても見せたくて・・・手紙と一緒に送ってみた
住所は西野の両親に聞きました
快く教えてくれてよかったよ
もしかして西野教えないでね。とか言ってるんじゃないかなって心配してたんだ
・・・話したいことはいっぱいあるけど今はこれだけにしとくよ
返事は・・・今はいりません
帰って来た時に、西野の口から聞きたいから
だからこっちに帰ってくる時、手紙をください
日にちと時間だけ書いてくれればいいからさ
場所はいつもと同じ。あの公園で
それじゃ、また会う日まで
真中淳平
』
読み終わり、丁寧に封筒にしまう
この行為もこれで何度目だろう
ドアに寄り添い、流れる風景を眺めた
もうすぐ淳平くんに逢える───
考えるだけで胸が熱くなった
淳平くんは今頃家を出たところかな?
それともまだゴロゴロしてて慌てて家を飛び出すのかな?
クスッ
頭の中でその映像が鮮明に浮かび、おかしくなって笑った
「おねぇさん。何かおもしろい物でもあったかい?」
「え、いえ別に・・・」
「そうかい?笑ったから懐かしい物でも見つけたのかなと思って」
「・・・物じゃなくて人を思い出してたんです。」
「へ〜。そりゃ大事な人だったんだろうね。そんな嬉しそうな顔で話すんだから」
言われて気づく
顔がにやけて止まらない
「いや・・・あははは・・・」
「久しぶりに会うんだろ?おじさんもこの前同窓会があったんだけど嬉しい反面緊張したね〜」
運転手は話し続けた
「初恋の子が居てね。なぜか初恋の子って何年経っても忘れられないんだよ。心のどこかで根付いてるって言うか・・・
その子に会えることにすごく嬉しかった。でも全然変わってるかもしれないし、いい年だ結婚してるかもしれない
だからすごく不安だった。会ったら想像通りやっぱり変わってたよ。なんて言うか・・・大人の女になってたな」
寂しそうに小さく笑った
「・・・やっぱり変わるものなんですかね。」
「そうだな〜変わらない人なんて居ないだろう」
・・・やっぱ淳平くんも変わってるんだろうな
あたしのことも・・・もう・・・
手紙の返事は来てない
この手紙が来たのもだいぶ前のことだ
気持ちが変わっててもおかしくなんて・・・・
「でも、変わらないものだってある」
「変わらないもの?」
「自分の気持ち・・・だなぁ。
見た目は変わってたけど中身は昔のままだったよ
そんなあいつを見たら・・・やっぱ好きだなって
何年経ってもやっぱり忘れられないものだよ」
「・・・・・・・・」
「自分にそんな想いがあるんなら、相手もあるんじゃないかな」
それから会話することなく、車は走り続けた
変わらない想い
あたしには1つだけある
ずっと向こうに居た時も忘れたことはなかった
日本に居る時だってずっと―――
あなたに出会ってからずっと
忘れたことなんてない
「はい。着いたよ」
「ありがとうございます」
「・・・おじさん余計な話しちまったかなぁ。って思ったんだけどその顔なら平気そうだな」
「えへへ」
「んじゃ、頑張ってきなよ」
「はい」
小さく頭を下げて、目の前の公園に入っていった
「ちょっと早く着きすぎたかな」
15分前だ。きっとまだ来てないだろう
ゆっくり待ち合わせ場所へ向かう
あそこの階段を降りたら、後は待つだけだ
そう思ったのに
階段の下にはビデオカメラを構えた男の人が居た
カメラ越しにあたしを見る
顔が隠れててもわかるよ
ゆっくりカメラを降ろしていく
・・・ほら、やっぱり君だ
「えらい!15分前行動!」
「───再会の第一声がそれ・・・?」
ううん。他にいっぱい言いたいことあったよ
15分も前にここに居て待っててくれたんだね
・・・・そういえばいつでも淳平くん待ち合わせにはあたしより早かったよね
なんでかな。あたし達の日々が頭の中を巡る・・・
1人で寂しかった時なんて忘れてしまうほど
熱い想いが溢れてくる
「・・・じゃあ、大人っぽくなったね淳平くん」
やっぱり見た目は少し変わってた
でも、しゃべり方
「送った映画見てくれた?」
映画が大好きなところ
「うん。すごくいい作品だった」
「それじゃ質問
白紙に戻した関係だけどもう一度俺と付き合ってくれますか」
真っ直ぐにあたしを見てくれる目───
「・・・・・そうだね
もう一度、あたしをワクワクさせてくれる・・・?」
「────」
ダッ
階段を駆け上る
「あっ、やだ ちょっと・・・」
何度も何度もあなたに惹かれた
諦めようと思っても諦められなかった
あなたの目線の先があたしじゃないと知った日
1人の夜
好きなのに、どうしようもできないもどかしさ
そんな日々が今はもう思い出
あたし達は未来へ進む
まだ見ぬ未来だけど
きっと辛いことより楽しいことが多いはず
だって
いつでも、あたしをワクワクさせてくれるのはあなただけだから
Fin