いちご100%最終回記念ショートショート 『ある夏の日のこと』 - EVE 様
管理人様に便乗して書きました。
いつかの思い出に・・・
いちご100%
最終回記念便乗ショートショート
『ある夏の日のこと』
「あっち〜。」
うだる様な夏のある日
照りつける太陽と、その熱を捕らえて離さないアスファルト
Tシャツの襟元をパタパタを開閉しつつ、
こんな日にも減らない人ごみの中を流れ歩く。
「ひやぁ、すずし〜いぃ。」
道の途中で入ったコンビニで一時の涼を取る。
そして、空調の聞いた店内を変な音を発しつつご機嫌に歩き回るのだ。
「や〜っぱ、夏はこれに限るね〜。」
しばらくうろうろした後、最終的に向かった先は酒コーナー。
手際よくお目当てのチュウハイを買い物籠に放り込んでいく、もちろんこのときに新製品をチェックするのは忘れない。
「いやぁ、今日はいいことした、これはすごいですね!」
買い物のつりを募金箱に入れてやけに誇らしげにコンビニを出る。
・・・・・・・・・・・17円だが。
軽快にアパートの階段を上がり自室の鍵を開ける。
都心部を少し離れた近郊の古アパート、それが現在の本拠。
戸を開くにもなかなか愉快な音を立てるこの部屋は、壁も薄く住み心地も決して快適とは言いがたい。
それでも、家賃や醤油臭い雰囲気をそれなりに気に入っているのだ。
靴を脱ぎ散らかして戦友を冷蔵庫に待機させる。
外出用の服から室内用のラフな部屋着に着替えて窓を全開にした。
眼下の通りをぼぉっと眺めながら少し時を忘れて思索に耽ってみたりするのもいっこうだろうか。
きづくと日も傾き、あれだけ猛威を振るっていた太陽もはかなくビル群に沈んでいくのが見えた。
赤く染まった部屋で、冷蔵庫から取り出した酒の缶をあける。
かすかに聞こえる近所の生活音と、あおる缶のラベルのデザインを肴にひとり、酔う。
チリン、チリン・・・・・
「・・・・夏、だねぇ〜。」
開け放った窓ごし、年季を重ねた痛んだ畳と黄ばんだ壁紙。
ふと、心地よい風がふく。
「・・・・・・・なつ、だねぇ〜。」
頬にかかる髪をそっと払い、彼女、北大路さつきはつぶやいた。
ある夏の出来事・・・
・・・ここにあり、いつかあった出来事。