夢紡ぐ糸 第3話 恋愛談義 - hira 様





「じゃあね、真中くん映画がんばろうね」

「ああ、絶対いい映画にしようぜ」

東城は、タクシーに乗って帰って行った。



翌日淳平は、つかさと会っていた。

「淳平くん」

「つかさ」

「ねえ、昨日東城さんと会ったんでしょう。どうだった。」

「あのなあ、仕事仲間をいちいち気にしてどうすんだよ」

「ほんとーになんでもないの?」

「・・・まあ、つかさに隠し事したってすぐばれちまうからな。」

「え。?」

「昨日、二人でファミレスにいってさ、俺の初恋のこと話した。」

「そっかって、なんで?」

「俺が東城の告白を断ったときに「今は西野を大切にしたい」って
 言ったんだけど、似たようなシチュエーションを小説で書いてるときに、
 俺が言った言葉を思い出して疑問に思ったらしい。」

「それで、東城さんはなんて?」

「高校のころの宝物が一つ増えたってさ」




街を歩いていた綾は、唯・つかさと会った。

「あっ東城さ〜ん。」

「唯ちゃん、西野さん」

「こんにちは」

「こんにちは、唯ちゃん、今日はどうしたの」

「今日ね、西野さんが新作のケーキごちそうしてくれるんです。あっ東城さんもどうですか」

「えっでも・・・」

「東城さんも時間あるなら、食べていかない?自信作なんだ。」

「ありがとう、じゃあ、おじゃまするね」



「おいしかったー」

「ほんと、ごちそうさま」

「ありがとう、おそまつさまでした。」

しばらくケーキの話題で盛り上がっていたが、唯は気になった疑問を聞いてみた。

「そういえば、西野さんって淳平のどこがよかったんですか?」



「最初にいいなあって思ったのは、中3の夏頃に淳平のクラスで持ち物検査があって・・・」

「・・・で色々あって、高3の時に初めて自分から告白したの」



「なんで途中で別れたんですか。」

「うん、その頃は淳平くんにはほかに好きな子がいたんだよね」

綾の方をちらりと見ながら話していた。

綾は、静かにお茶を飲んでいる。

「ええ〜! 西野さんより好きな女の子ってどんな子なんですかー?」

「・・・東城さん」

「ぶっ!」むせかける綾


「にっ西野さん!」

「うっそ〜!」

驚いている唯、続いて綾にも聞いてみる。

「じゃあ、東城さんってその頃好きな人っていなかったんですか。あっ確か片思いの人がいるって言ってましたっけ」

「その人とは、どうなったですか」

答える綾。

「高3の文化祭の夜に告白してね、ふられちゃった」

「ええ〜!東城さんをふるなんて誰だったんですか。」

「ふふ、秘密」

「いいじゃん、言っちゃっても」

「西野さん・・・まあいいかな、あたしが好きだったのは真中くんなの」

唯は、さらに驚いた。

「ええ〜!って、じゃあ東城さんも淳平とつきあってたことが?」

「ううん、真中くんの初恋があたしだって知ったのはつい最近なの、
 高校のころはずっと片思いだと思っていたから、お互い、ちょっと告白する勇気が足りなかったみたい。」



「う〜ん、じゃあ東城さんは淳平のどこが好きだったんですか?」

「中3の冬に、あたしの小説を読んでいっぱいほめてくれて、映画監督になりたいって夢を初めて語ってくれたときかな」

「えっ?、それだけで?」唯は少し納得していないようだ。



「それまではね、地味で目立たない女の子だったの、あまりクラスにもなじめなくて一人でいることが多かった。」

「人に自分の書いた小説を見せようなんて思ってもいなかったの、勉強の合間にただ思ったことを書いていただけで」

「弟以外とは、ほとんど男の子と口を聞いたこともなかった。
 そんなあたしの存在を認めてくれて、いっぱいほめてくれた。
 それで、恥ずかしくて誰にも言ったことがないっていう映画を作る人になりたいって夢をあたしに語ってくれた。」


「その小説のノートを屋上で落として、偶然拾ってくれたのが真中くんで、そこからあたしの人生がおおきく変わっていったと思う。」

「もし、真中くんと出会ってなかったら、今もあの頃と変わらない自分がいたと思う。小説家になんてなってなかっただろうね。」



「でも、東城さんが地味だったってなんかしんじられなーい。」

「そっか、唯ちゃん東城さんのあの頃の格好って見たことないもんね、待って写真持ってくるから」

そういってつかさは出て行った。

「持ってくるって?なんで西野さんがあたしの写真を?」

しばらくして、つかさが持ってきたのは、

「あっ卒業アルバム。」、中学の卒業アルバムだった。

「うん、この頃なら東城さんまだあの格好してたでしょ。えっとね、唯ちゃんこれが東城さん」

そういって集合写真の中で、メガネをかけて髪を三つ編みにしている綾を指さした。

「え、嘘?!これが東城さん?」

唯は、何度も写真と今の本人を見比べる。

「どう見たって同一人物に見えないよう〜。」




「そういえば、西野さん、ラブサンクチュアリってやってみたことあります?」

「え? ああ、最近話題になってるやつね。」

「そういえば、外村くんから聞いたけど、あれって高3の文化祭のがもとになってるらしいよ」

と、東城は説明した。

「だったら、文化祭の時に淳平くんと行ったときと一緒かな。」

「あの時は全然違う番号だったから」

「ふーん、でも、今のラブサンクチュアリって、相性度何パーセントって出るんですよね。」

「うん、あっそういえば、ねえ東城さん、東城さんってあのときの番号、何番だったの?」西野は気になったことを聞いてみた。

「ああ、あれね、実は後から聞いたんだけどそのとき、下駄箱にそんな紙が入ってるなんて全然気づかなくて、途中で落ちちゃったみたい。
だから、あたし自分の番号知らないの」

「ふ〜ん」(まさか、いくらんなんでも淳平くんと東城さんが同じ番号だなんてことないよね)




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