だから今度こそ "Tsukasa Side" - WithWings   様



Part.1
高校に入ってから、「彼」とはますます疎遠になった。
一度、別れようとも思った。
でも、あの日、終業式の日の「彼」は私を守ってくれた。
道で絡まれたとき、本気になって怒ってくれた。

『あたし やっぱり淳平くんのことが好き―――』

最後のデートにするつもりだったのに・・・。
出来なかった。また、好きになってしまった。

分かっていた。「彼」には他に好きな女の子がいるってこと。
同じ夢を持ち、同じ高校に進学した女の子がいるってことを。

でもその後、「彼」からの連絡はなかった。
来るかどうかは分からない電話を、ずっとずっと待っていた。

・・・突然、携帯電話が鳴り出した。私の誕生日。
「彼」からだった。会って話がしたかった。

でも、その時、私は彼に握手しか求めることが出来なかった。
なぜかは分からない。いや、本当は分かっていた、認めたくなかっただけだった。

それから、泉坂高校の文化祭。楽しかった。分かった。私はやっぱり「彼」が好きだ。
久しぶりに会え、話が出来た。嬉しかった。

でも、多分、「彼」は他の女の子のことを考えているだろう。

お願い神様、私に、もう一度、もう一度だけチャンスをください……。






Part.2
ここはあたしの部屋。今、目の前には淳平くん。本当は、24日に会いたかったんだけど。
カチンコチンに固まってる・・・。
「やだな〜。もっと楽にしてよ」
「う、うん……」

ダメだ、淳平くんったら一人でニヤニヤしてて……。
CDを流してもまるで聞いてくれないみたい。まぁ、BGMになればいいかなと思って流しただけなんだけど。

お母さんもお父さんも、今日の帰りは遅いって言ってたし、ちょっとは期待できるかも。
多分、淳平くんもその気でいると思うんだけどな?

「―――俺 そろそろ帰ろっかな」

嫌だ。この間もそうだった。まぁ、あの時は仕方ないとは思うけど……。下着泥棒騒動があったから……。

「待って…。」


言ってしまった。
自分から誘いたくはなかった。大体、女の子から誘うもんじゃないと思うし…。
でも、私が誘えば乗ってきてくれると思った。

「や…、やっぱ待って―――」

「彼」はこう言った。このときの「彼」の目で全てが分かった。
…悔しかった。私は結局、東城さんに負けてっぱなしだ。

「彼」の頭の中にはいつも東城さんがいた。
東城さんには勝てない。もう諦めた。

「もう待てないよ」
「あたし…、気づいちゃった。あたしって何かを待つの苦手みたい」
「別々の高校に行ったのはやっぱ作戦ミスだったのかなー」

そう、「彼」からは動いてこない。いつも私から…。

「そっか、待つのが嫌になったから、連絡ももらえなかった一学期に別れようって決めたんだ」
「でも、あの時会って、まだ好きだって思ったのになぁ」
「だって、淳平くんといるとね、なんだかすごくワクワクしたんだもん!」

助けてもらったとき、「彼」のこと惚れ直したのに、私のことだけを考えててくれるとも思ったのに。

「文化祭の時には言わなかったけど、淳平くんが作った映画見て、あたし目の前で懸垂して告ってくれた淳平くんのこと考えてた」
「またワクワクさせてもらえたから、あたし、ずっと淳平くんと続ける気でいたんだけど、でも…、違うんだよね」
「今思えばあたしもあの映画の手伝いしたかった」
「もしあの映画をあたしのために作ったって言ってくれたとしても、あたしも観客としてじゃなくて、淳平くんの隣で、淳平くんの夢に巻きこまれてみたかったな」

…東城さんみたいに。同じ夢に向かって行きたかった。
夢に向かってひたすらな「彼」がうらやましく、また憎くもあった。
東城さんは……。

「大体さあ!こんなカワイイ娘が誰かをずっと待ってる恋していくのなんてもったいなくない?」

もう、待っているのは嫌だ。傷つきたくない。
でも、こんなことも言いたくない。私はまだ、「彼」が好きだ。だけど……。

「だから今度こそ、サ ヨ ナ ラ ……」


…私はダメな女だ。心の中で、一方的に「彼」を責め、東城さんを責めていた。
自分のことを棚にあげ、人を責めることしか出来ない……。

神様ごめんなさい、せっかくチャンスを頂けたのに。






Part.3 オマケ
翌年、ホワイトデー前日。
私たちは再び出会った。といっても、本当に道で偶然出会ったのだが。

でも私はその時確信した。

やっぱりあたし、まだどこかで淳平くんのことを……。



END