The summer from the west 最終話 - UZ 様
淳平がパリへ旅立ってからさらに1年がたった。
淳平はバイトと映画の勉強と、忙しくも充実した日々を送っていた。そして今日は夏休みで日本に帰る日、なのだが彼はまだ布団の中。
そんな中、淳平の部屋の扉が静かに開く。
「ちょっと!!淳平君、飛行機遅れるぞ!!」
言葉と同時に布団を引っ剥がされる淳平。
「・・もうちょっと寝かせろよ・・・ってつかさ??そっか今日出発で・・・もうそんな時間?ヤバイ!!」
慌てて飛び起きる淳平。
「まだ大丈夫だよ。30分ぐらいは余裕あるよ。淳平君絶対寝坊すると思って早目に来たんだ!」
「サンキューつかさ!助かった!!」
こうして無事、2人は帰国の途へとついたのだった。
時は少しさかのぼり、帰国の1ヶ月前、綾から一通の手紙が届いていた。
『拝啓 真中淳平様
もうすぐ真中君がパリに行って1年になるね。
夏に1回帰って来るって外村君から聞きました。
会えるの楽しみにしてるね。
そうそう、最近忙しくて報告が遅れたんだけど、石の巨人の話が 完成しました!!
帰ってきた時にでも読んでね。まだ他に読者はいないから。』
綾からの手紙には、他にも最近の皆の様子なども書かれていた。
「あぁ〜よく寝た。」
淳平は大きく伸びをしている。
「寝坊しといてよくそんなに寝れるねぇ。おかげでこっちは暇で暇でしょうがなかったよ。」
「ご、ごめんつかさ。でも、寝る子は育つ、って言うじゃん。」
2人は他愛無い話をしながら空港内を歩く。その時、物凄い数の人に囲まれた。
「東城先生の最高傑作はいつ映画化するんですか?」
「最高傑作とはどんな話なんでしょうか?」
ほとんどがこの手の質問だった。
「え?え??」
慌てふためく淳平。
そこにまた多くの男達がやってきた。が、彼らはプレスと言うより、力仕事をしてるような感じである。そして彼らが道を空け、淳平とつかさはプレスから解放された。
そして混乱を抜けた先にはさつきが立っていた。
「さつき?さっきの男達ってまさか・・・」
「そうよ。高校のラグビー部の連中よ。ってそろそろ追っ手が来るよ。走って真中!ほら西野さんも早く!」
こうして淳平たちはプレスから逃げる事に成功した。
「サンキューさつき。マジで助かった。ってかなんでこんなに手際よくできたんだ?」
「前から東城さんに相談されてたの。なんかよく分かんないけど東城さんが記者に何か言っちゃったみたいで、このままじゃ真中が帰ってきたら空港で大騒ぎになるけど自分が行ったら余計混乱するからって相談されて。」
「そっか。それじゃ帰ってこなかった方がよかったかなぁ・・・」
「真中がそう考えるかもしれないからこのこと東城さんも真中には黙ってたみたいよ。」
車はつかさの家の前に着いた。
「ほんとに今日は助かったよさつき。」
「ありがとうさつきちゃん。」
「じゃぁまたねー。」
さつきを乗せた車は去っていった。
その日の夜、淳平の家に綾から電話がかかってきた。
「ごめんなさい真中君。いろいろ黙ってて。」
「いーよいーよ。にしても東城の人気もすごいよな。まさか監督に
もなってない俺が映画いつ作るかとか聞かれるんだし。」
「でも、やっぱりどうしてもあの話は真中君に映画化してほしいの。どんなに遅くなってもいいから。」
「わかった。監督になって、自分に自信が持てるようになったら作るよ。あとマスコミの方には俺から説明しとくよ。」
「ごめんねほんとにいろいろ。」
「大丈夫だよ。それじゃぁおやすみー。」
電話を終えた淳平はFAXを各マスコミに送った。
自分はまだ監督デビューもしてないので映画化はしばらく先になること。だから自分も綾もそっとしておいて欲しいこと。
そして淳平は新たなモチベーションを得て、さらに映画の勉強に励むこととなった。
それからまた数年後、映画監督として軌道にのっていた淳平はついに石の巨人の映画化に取り掛かった。
END