The summer from the west 第3話 - UZ  様



フィリップはつかさに道を教えてもらい、テアトル泉坂を後にした。


「で、どうするの淳平君?って行くよね??」


実はフィリップはフランスの映画監督で、淳平に、夏休みの間に1回フランスの映画撮影の見学に来るよう勧めていた。この願ってもないチャンスのはずだが、淳平の表情はあまり明るくない。


「どうしたの?行けない理由でもあるの?」


「うん。行きたいんだけど、急な話だから先立つものが・・・ね。」



「それなら心配いらんぞ。」


館長が淳平の下へ歩み寄り、札束を手渡した。


「館長、これは・・・?」


「今までのバイト代じゃ。これでパリに行ってきたらどうじゃ?」


「館長・・・ありがとうございます!」


こうして淳平はフランスに映画の勉強のために旅立つ事になった。





「へぇ〜。これがパリか〜。思ったよりもなんか綺麗だな〜。」


初めての海外、しかも映画の勉強ができるということで、淳平はやけにテンションが高い。


「もう。はしゃぎすぎだぞ淳平君。恥ずかしいって。」


「あ、ごめん。いろいろ楽しみで、つい。」



「あ、来たよ。」


つかさが指差した方からは、一台の車が。運転席にはフィリップ。


「オー、ジュンペイ。よく来たね。」


「よく来たね、だって。」


つかさが通訳する。


「あ、短い間ですけど、よろしくお願いします。」


3人はさっそく撮影現場へと向かった。






撮影現場は日本でもよく撮影に使われそうなありきたりな海岸だった。


「ふーん。映画の撮影ってこんな感じで進んでるんだ〜。」


今度はつかさの方が興奮気味である。淳平はというと、



(パリの映画って言っても、雰囲気は日本とあんまり変わらないな〜)


少し不満気味である。



「ねぇ淳平君。日本の映画撮影と比べてどうなの?」


「そうだな、あんま変わんないかな。ちょっとのんびりしてるぐらい。」


「でもフィリップのやり方は他の人とは違うんだよ。」


そう言ってつかさはいじらしい笑みを浮かべた。





撮影はひと段落つき、現場の人たちはみんなで話を始めた。


「おーい。ジュンペイ、ツカサ。」


フィリップに呼ばれ、2人は話に加わった。


「この子が知り合いのツカサ。でこっちはツカサの彼女のジュンペ
イ。彼は日本で映画の勉強をしてるんだって。」


フィリップがスタッフに2人を紹介している。もちろんこの間もつかさは淳平に何を話しているのか通訳している。

「「よろしくお願いします。」」


2人はスタッフに挨拶をした。


「ジュンペイ。撮影を見てて、どう思った?」


淳平は返答に少し困って俯く。


(どうしよう。普通にしか見えなかったしなぁ・・)


「え・・・っと、言葉が分からないんで何とも言いにくいですけど日本の撮影とあまり変わらないように見えました。」


結局本音を言った淳平に対してフィリップは微笑みながら答える。


「その通り。ここまでは普通だ。でもここからが僕のやり方なんだ。」


そう言ってフィリップは見学に来ていた一般の人に、紙とペンを配り始めた。もちろん淳平とつかさにも。


「えぇ??」


淳平が驚いたのも無理はない。


そこには、思いもしないようなことが書かれていた。



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