regret-67 takaci様

開会セレモニー後、秀一郎は乱泉祭実行委員会に呼ばれた。





「けど俺が1位なんて信じられんな。女子からモテモテのイケメン勢が下とはね」





「ほら、これが集計表だ」





会長が集計表を秀一郎に見せた。





「へえ、1位から4位まで綺麗に1票ずつの差か」





「とにかく接戦だった。僅差なので何度も再集計を繰り返した。でも間違いなくお前がナンバー1だ」





会長が太鼓判を押す。





「けど実際のところは2位以下の面々のほうが人気高いんじゃないか?」





「集計対象は全校女子生徒に加えて女性教師も含まれる。その教師票の多くが佐伯だった。それが決め手になったんだろう」





「先生からの人気か」





これは意外だった。





「お前は去年の通り魔事件のヒーローだからな。それで先生方の評価が高まったんだろう」





「まあ、結果は理解したよ。んで俺はなにをするわけ?」





「実行委員会の展示スペースでミスター泉坂と触れ合い出来る時間と場所を設けてある。そこに参加して来場者の応対をして欲しい。まあ握手とか写真撮影がメインになるな」





「はあ。でも俺なんかで集まるのか?」





「お前は女子からの人気が高いから集まるだろう。普段はあのわがままな彼女と強い姉がしっかりガードしてるからなかなか近付けんのだ」





「そんなもんかねえ。奈緒も真緒ちゃんもそんなに高い壁には見えないけど」





「それとメインは午後からのミスコン本戦とオーラスのミス泉坂発表だ。そこで審査員とプレゼンターをやってもらう」





「それってどんなスケジュールなんだ?予定表とか作ってないのか?」





「一応作ってある。これだ」





会長はスケジュール表を差し出した。





「結構キツいな。自由時間ほとんどなしかよ」





心が重くなる。





「今日のお前がひとりで行動したらあちこちで女子に囲まれるぞ。諦めろ」





「けど奈緒は放っておけん」





「あれこそ放っておけ。これくらいのことで壊れる関係でもないだろう」





「でも絶対グズるぞ。てかもうグズってる。元に戻すの大変なんだぞ。一方的に抑圧されるの大嫌いだからな」





「それくらい我慢出来ないのか?」





「無理だな。それにこのまま大人しく引き下がるとは思えん。芯愛の連中引き連れていろいろ妨害するかもしれんぞ」





「芯愛の動きについては御崎に頼んで押さえてもらっているから心配ないが、ひとりでもお前に付き纏われると迷惑だな。来場者が楽しめん」





会長が悩み顔を見せていると、





「こらあ!会長に会わせろ!」





外で奈緒が騒いでいた。





「ほら見ろ、早速ケンカ売りに来たぞ」





秀一郎の予想通り。





「おい、入れてやれ」





会長がそう言うと奈緒が明らかに交戦的な目で入って来た。





「生徒会長がどんだけ偉いか知らないけど、予告もなしに突然用件言い付けて行動縛るのは筋が通らないんじゃない?」





いきなり会長に文句を言い付ける奈緒。





「普通の生徒ならな。だが佐伯は泉坂1番の男だ。それにもともと人気が高い。佐伯に憧れを抱いている多くの女子の希望を叶えてもいいとは思わないのか?」





「事前に連絡入っていれば考えてもよかったけど、いきなりはダメ。秀だって迷惑でしょ?」





奈緒に振られて、





「まあ確かに迷惑だ。けど女子たちで裏コンってイベントがあるのは聞いてたし、その結果俺が選ばれた。しかたないような気もする」





秀一郎は諦め顔を見せた。





「じゃあ秀はあたしよりいろんな女の子と親睦を深めたいのね?」





「そりゃ俺だって奈緒と一緒に楽しみたかったよ。けどこうなっちまったらしかたない。まあ迷惑だが、ここで俺が反発すればいろんな企画に影響が出るだろう。だから諦めた」





「あたしは楽しみにしてたのに・・・」





泣き顔を見せる奈緒。





「お前の悔しい気持ちはわかる。けど今日はこらえてくれ。この埋め合わせは必ずするから」





ポンと肩を叩き、そのまま抱き寄せる。





「・・・わかった、秀が言うならそうする・・・」





「んじゃ真緒ちゃんの支援頼む。ミスコン茶道部代表だからな」





「うん、じゃあ秀も頑張ってね」





奈緒は大人しく部屋から出て行った。





「さすがと言うべきかな。大人しく引き下がってくれたな」





「以前のあいつならこれくらいじゃ引かない。あいつも大人になったなあ」





驚く秀一郎。





「と言うより、よほど強く想われているように見えたがな。だから困らせるような無茶は言わなかったんじゃないか?」





「それは否定しない。けどどんな理由であれ彼氏が他の女の子と楽しく接するのは辛いだろう。それは理解してやれよ」





「わかっている。全てが終わったらあの子には詫びを入れるつもりだ」





会長もその点についての非は認めた。











そしてある教室の一角に移動し、対応が始まった。





当然だが来場者のほとんどは女子。





しかもかなりの数で、教室の外に長蛇の列が出来ていた。





秀一郎のメインの仕事は来場者に記念品の小さなピンバッジを手渡しすること。





(こんなもんで喜ばれるのか?)





と思うほどチャチな代物だが、それでもほとんどの女子は喜んでいた。





それに加えて希望者は写真撮影。





これも結構な数で、かなり忙しくなった。





さらに秀一郎を困らせたのが、たまに握手の際に渡されるメモ。





これにそれぞれの女子の名前と携帯番号、メアドが書かれていた。





応対時間は予想より増えた来場者により延ばされ、結果的に秀一郎の自由時間が無くなってしまった。





昼休みに生徒会が用意した弁当を食べているとき、





「予想以上の数だったな。しかもいろいろ渡されたそうだな」





教室の一角はプレゼントの山。





「まあ花束やお菓子の類いはいいとして、問題はこれだな」





ポケットから取り出したメモが多数。





「お前の携帯から返信すれば喜ばれるぞ」





「勘弁してくれ。これだけの女子をまとめて相手するなんて無理だ」





「要領よくやれば出来ると思うがな。そうやってる男子もちらほらいるぞ」





「かもしれんがいい気分はしない。ところであんた彼氏は?」





会長に突っ込んだ問い掛けをぶつける秀一郎。





「一応いる。2年先輩の大学生だ」





「その彼氏があんたの知らないところで他の女の子と仲良くしてたら嫌だろ?」





「いい気分はしないが、それくらいのことで縛りたくない。ある程度は許容しないとな。わがままを通して関係が壊れることもある」





「へえ、理解あるんだな」





「逆に言わせてもらえば、佐伯はなぜあの彼女にわがままを言わせてるのだ?お前ならあれよりもっと素直でいい子が選び放題だろう。なぜあれにこだわる?」





「まあ、いろいろダメなところがあるけど、あいつは俺を支えてくれてる。俺も結構助けられてるんだ。わがまま駄々っ子はもう慣れたっつーか諦めた。あいつも俺を好きでいてくれてるけど、俺も結構あいつに惚れてるかもな」





「そうか、なら何も言わん」





最後に会長はそう微笑んだ。











そして午後になり、講堂に移動する。





ステージ脇に設置された審査員席に腰を下ろす。





会場には多くの人が詰めかけている。





『ではこれよりミス泉坂、本戦を開催します!』





会場が一気に沸き上がる。





『午前中までに行われた予選を集計、本戦出場者は上位6人。選ばれし美女の最後のお披露目です!』





1週間前から貼り出された水着写真と午前中に各部で代表者のアピールが行われ、それが正午で締切。





これから上位出場者がそれぞれ独自の衣装で最後のアピールをして、夕方にミス泉坂発表というスケジュール。





照明が落とされた。





『ではまず予選1位、軽音楽部代表、槙田涼さんです!』





ステージ中央にスポットライトが当たる。





特に着飾ってはいない。





Tシャツに短パンというラフな姿。





それでも様になっていた。





『槙田さん、ずいぶんシンプルな衣装ですが、コンセプトは?』





司会者が涼にマイクを向ける。





『そんなのないよ。だってこれ、ライブの恰好そのままだもん』





そして司会者からマイクを奪い、





『みんな来てくれてありがとー!涼でーす!』





澄んだ声で会場に呼び掛けると、一気に沸き返った。





『みんなのおかげで1位になれた。うれしいよっ!ホントにありがとー!』





盛り上がる会場。





『本戦も投票よろしくねっ!あと午後からも校庭でライブやるからそっちもよろしくー!』





会場のテンションを上げるだけ上げて司会者にマイクを返すと、颯爽と立ち去った。





(さすが槙田だな。大観衆を前にしても動じないし、盛り上げる術も心得ている)





涼の見事なパフォーマンスに感心する秀一郎。











再び照明が落とされた。





『で、では次の方を紹介します。2位の方が2名いらっしゃいます。まずは茶道部代表、小崎真緒さんです』





スポットライトが当たる。





「おお・・・」





会場がどよめきに包まれた。





予想通り、和服。





淡い緑の服に青い帯。





それを完璧に着こなしている。





丁寧に一礼した。





いつものアクティブな印象とは完全に異なり、おしとやかな日本の美女になっていた。





『小崎さん、茶道部らしいというか、見事な和服姿ですね』





『ありがとうございます。茶道は日本の伝統、それに乗っ取り和のテイストで固めてみました』





『では会場の皆様にアピールの一言お願いします』





『あたしのような者がこのような場所に立たせて頂けるなんて光栄です。本当にありがとうございます。茶道部は地味なイメージですが、本日は和の心に触れて頂くために茶室で皆様をお待ちしております。他の部員も和服姿でお待ちしておりますのでぜひご来場お願いします。あとあたしに投票して頂けるとうれしいです。よろしくお願いします』





笑顔で丁寧に頭を下げた。





会場から大きな拍手が贈られた。





(真緒ちゃんの和服は予想通りだったけど、ここまで様になるとはな。ホントおしとやかな日本の美女だ。とても奈緒の双子とは思えん)





真緒の新たな一面に驚いていた。











真緒がステージを去り、会場が暗転する。





『では次の方、同率第2位、文芸部代表、桐山沙織さんです』





スポットライトが当たる。





「おおお!」





真緒より大きなどよめきに包まれる会場。





黒のドレスに身を包む沙織。





身体のラインがなまめかしい。





(桐山ってあんなにスタイルよかったか?)





目を疑う秀一郎。





水着写真とは明らかにラインが異なる。





「あれは既製品じゃないな。オーダーメイドのドレスだ」





会長がそう指摘した。





(オーダーメイドって、桐山が服にそこまで金かけるとは思えんけど)





『桐山さん、素晴らしいドレスですね。よくお似合いです』





『ありがとうございます。実はこのドレス、文芸部の偉大な先輩である東城綾先生のドレスをあたしの身体に合わせて少し手直ししたものなんです』





(東城綾のドレスか)





この説明で納得した。





『桐山さんは東城先輩と親しいんですか?』





『はい、去年知り合うきっかけがあって、それ以来親しくさせて頂いています。今回のミスコンのことを話したら、協力して頂けることになり、こんな素晴らしいドレスを提供して頂けました。とても感謝しています』





『偉大な先輩の強力な支援があるなら、負けられないですね?』





『皆さんの投票のおかげでこの場所に立たせて頂いてます。本当にありがとうございます。でもここまで来たからには、よりよい結果を持ち帰りたいです。何とぞご支援のほどよろしくお願いします』





大きな拍手が沸き起こった。





(いつもの桐山じゃない)





今の沙織は自信に満ちていた。











その後、残りの3人が紹介されたが、前の3人と比べると明らかに華がなかった。





実質は、





槙田涼。





小崎真緒。





桐山沙織。





この3人によるミス泉坂の争いが始まった。





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