寄り添うベンチ1話 - Sunshine 様
「好きだよ。淳平君」
淳平とつかさは夜の公園のベンチで座ってる時、つかさがいきなり告白をした。
「・・・・俺もだよ。俺も、西野が好きだ。」
するとつかさのいい香りの頭が淳平のひざに乗った。そして上目遣いで淳平を見上げた。
「・・にし・の。」
淳平はつかさの頭をなでて、やさしく微笑んだ。
「あまりしゃべらないでね。私は今の時間を頭に焼き付けておきたいんだ。」
「う、うん。」
すると、ベンチの向かい合ってる草のあつまりから蛍が何匹かとびちった。それはとても不思議な空間だった。
「あたし、このまま死んだとしても幸せかな。・・・だって淳平君のぬくもりを感じれるほど、あたしたちの距離が近いから。幸せよ。」
淳平はつかさを見下ろし、
「俺もだよ。俺も幸せ。」
そして淳平は頭を下げてつかさにやわらかくキスをした。最初はつかさもびっくりはしたが、一度淳平の唇と重なった時、一間置いて、西野は唇を改めて強く淳平の唇に押し付けた。
「ありがとう淳平君。明日パリに行く前に淳平君と話したかったんだ。それからこうゆう事になって、これ以上の幸せはないかもね!」
「あぁ。西野・・・マジで行ってしまうのか!お願い!行かないでくれ!」・・・って言えばよかった。
そう思ってつかさの背中を淳平は見送ったのだった。
淳平は家に帰ってから泣いた。枕がびしょぬれになるほど、泣いた。
寄り添うベンチ2話 - Sunshine 様
「ママ?パジャマ知らない?」
つかさは荷物作りをしていた。明日の事をできるだけ考えないと、一生懸命忘れようとしていた。
「あぁ。そういえば、淳平君といろいろあったなぁ・・。」
淳平との出会いの瞬間から今までの記憶を思い出す。全ては今では、きれいで、青春がいっぱいつまっていた。しかし、今ではもう、切ない。
「あの、鉄棒で告白してくれた淳平君の顔、昨日見たみたいに記憶にきれいに残ってるなぁ。あと映画に出さしてもらった事とか、あたしと旅行してくれたこととか、全部・・いい思い・・出。」
つかさは一人で部屋にいた。
「あれ?おかしいなぁ・・全部いい思い出なのに、・・なんで・・?・・なんで・・うぅ。なんで涙が出てくるんだろう?・・うぅ。」
きれいな頬からつたる涙。思わず電話で淳平の家に電話した。
「もしもし?うぅ・・」
出たのは淳平だった。
「淳平君?・・もしもし、もしかして泣いてるの?」
「・・・ううん。で、何の用?」
「いや、無性に君の声が聞きたくなったから。実は、たった今まであたしも泣いてたんだ。でも、淳平君の声聞いたら、元気が出たみたい。・・・本当に淳平君って不思議だよね?」
「おれは・・・おれは!」
淳平はつかさをとめようかと迷っていた。でも夢へ向かうつかさを止める事ができなかった。
「・・・明日俺、空港で見送りに行くよ。」
「えっ?・・・本当に?ありがとう。じゃぁおやすみ!」
・・・
今は、二人ともとにかく寝るしかなかった。しかし、淳平、つかさ、ふたりとも一睡もできなかった。
寄り添うベンチ3話 - Sunshine 様
「西野・・・?」
周りが真っ暗な世界だった。そこで人間はたったの二人しか存在しなかった。
「どうした?・・・西野?・・」
いくら淳平はつかさに問いかけても無駄だった。
つかさはただ、悲しい微笑みを淳平の方に送った。
「西野ぉぉ!!・・にし・・」
体を揺さぶってもうごかない。
同じ可憐な表情をし続けるつかさ。
「うぅ・・うっ。はぁー。」
淳平はこのあまりの孤独さに泣き始めた。
そしたらつかさは口は開いた。
「悲しまないで、淳平君。あたしがどこにいっても、心は一緒のはずだもの。泣かないで、あたしの大好きな笑顔を見せてよ。」
つかさは淳平を覗き込むように顔を動かし、短いキスをした。
淳平は気持ちを抑えきれず、つかさを抱きしめた。すると、つかさの体が、ガラスのごとく、散々に飛び散った。自分のやった事にきずいてない淳平は、ただ・・ただ、何もない空気を抱きしめてた。そして、淳平とつかさの破片たちは、光をあびて、真っ黒の世界へ消えた。
「はっ!・・・朝・・か。今日は西野が旅立っちゃう日・・だな。そういえば、昨日の夢、なんだったんだろ。」
デゥルルルルルル・・・
(電話か・・・)
「もしもし?真中ですけど。。。」
「・・・グス・・うぅ・・・ぅ・・」
つかさの泣き声がした
「!?・・西野?なぁ?西野だろ?・・泣いてるのか?」
「ご・・ごめんね・・。淳平君・・。」
「え?な、なに?今どこだよ?」
「淳平くんちのマンションの近くの公園。」
稲妻のようなエネルギーが淳平の足を動かした。
ベンチに、あのベンチに座ってるつかさが見えた。
「西野ぉぉぉぉぉ〜!!」
寄り添うベンチ4話 - Sunshine 様
「なに?淳平君?そんな大きな声出して・・・。ばかだなぁ、近所迷惑でしょ!?」
つかさは案外落ち着いてる・・・つもりだった。心の中では淳平をぎゅっと抱きしめたかった。
「西野。・・・」
(西野にとって、1番良い選択肢はなんだ?俺と一緒に暮らす日々か・・・。夢を追い抱える日々・・・かぁ。どっちなんだろ・・・。)
そして淳平はこの真っ暗なよるのベンチで心を決めた。
「西野。迷わずいけよ。俺はやっぱりお前のことが好きじゃない。」
「な・・何言ってん・・・。」
淳平はつかさがなにかを言おうとしても聞かなかった。
「俺は、西野がいなくても、生きていけるし、映画監督になれるから。・・・だからパリ行けよ・・・な?。」
つかさは深刻な表情を浮かべた。そして、下を向いた。淳平に嫌われたのだろうか?いや、背中を押してくれてるのだろうか。どちらにしても、淳平はひどいと感じた。
「淳平君!・・・ぇ。」
淳平の顔をベンチから見上げると、泣いていた。子供のように大きな粒を瞳から流した。つかさは淳平を抱き、しばらくたってから、
「・・・淳平君って・・映画撮るのはうまいけど、もっと演技の仕方勉強しなくちゃ・・ね。」
「うぅ、・・・西・・野・・い、行って欲しくない!!」
淳平は正直に自分の気持ちを言った。
「淳平君・・・。わかった・・・よ。行かないよ。」
つかさも残ると断言した。でも淳平は自分に重い罪悪感が乗ったのを感じた。
「行って・・欲しくないけど、やっぱり、西野はいつでも俺の夢を応援してくれた。・・・それなのに、俺はなにも答えられなくて、ごめん・・・。俺もいつでも、どんな時も西野には笑顔でいて欲しい。だから・・・行って。俺はいつまでも一緒にいるから。」
その時の淳平の顔は、一段と男らしかったのは、つかさはいつまでも覚えてるでしょう。