ひびき様作
いちご100% 99話より ショートストーリー「絆」
「じゃあここでいいよ。」
「えっ?でも確かまだ先だろ?」
「ううん、平気!もうすぐそこだからさ。ありがとう!」
「あ、あぁ・・・それじゃ、西野、お休み!!」
「お休みなさい!」
すぐそこの路地を曲がると自分の家までの一本道。
道路わきの街灯はぼんやりと路面を照らし、空に浮かぶ月が仄かに景色を軒並みを浮かび上がらせていた
「ふ〜〜っ・・・」
緊張の糸が切れたのか、思わずため息をついてしまう
「あたし・・・まだまだなのかな・・・」
1人になった瞬間、つい口から漏れる本音。
「もっと・・・淳平くんと一緒にいたかったのに・・・」
思い返すのは今日の後悔の念ばかり。
途中で淳平とはぐれてしまったことが凄く悔やまれて仕方がなかった。
ぼんやりと歩くうちに、家の前へと辿り着く
「ただいま〜〜」
「あらっ!お帰りなさい!!無事だったのね?」
「えっ?!う、うん・・・」
「テレビ見たわよ!つかさちゃん達が映ってるからもう心配で心配で!」
「あはは♪大丈夫だよ!」
「本当に?ケガとかはない?」
心配そうにつかさの顔を覗き込む母
「うん!だってさ・・・」
つかさは言葉を飲み込んだ
「だって・・?何?」
「ううん、何でもないよ〜。あ、あたしちょっと横になってからお風呂に入るね!」
つかさは2階の自分の部屋へと向かった
バフッ・・・
いつものように、ベッドにうつ伏せになり、大好きなクマのぬいぐるみを抱きしめる。
「そうだよね・・・
淳平くんがあたしのこと・・・守ってくれたんだよね・・・」
観覧車での出来事がゆっくりと甦る
「そっか・・・・
あたしからとか言っておきながら・・・
淳平くん・・・
抱きしめてくれたんじゃん・・・」
つかさはギュッとぬいぐるみを抱きしめる手を強めた
「ダメだな・・・あたしって・・・」
ゆっくりと眼を瞑り、淳平の顔を思い出す
「でも・・・
これで良かったのかも・・・」
そっとぬいぐるみを離す。
「だって・・・
2人きりでのデートじゃないもんね・・・」
つかさは自分に言い聞かせるようにぬいぐるみに話しかけた。
「ねぇ、淳平くん・・・知ってる?」
つかさは胸に手を当てて、そっと想いを募らせる
「あたし…淳平くんと2人きりで本当はデートしたかったんだよ・・・」
今日の淳平との出来事が、ゆっくりと湧き上がってくる
「淳平くんは・・・
どうなのかな・・・」
つかさは身体をゆっくりと起こした。
「あたしと2人じゃだけ・・・
嫌なのかな・・・」
階下から、母の風呂をせかす声が響く
「でも・・・
違うよね・・・」
ベッドから降り、思いにふけりながら支度を整える。
「あたしは・・・
信じてる・・・」
つかさはあの日以来、毎日のように繰り返す。
ずっと見つめては、またそっと閉じる
何度も読み返した見慣れたメール
『西野と同じ学校なら良かった・・・』
今はこれが・・・
唯一の絆