TAKE8回想(飛行機中編3外村兄貴奮闘記 『真実』)- そーす 様



(1週間後)

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1位東城綾
2位西野つかさ
3位北大路さつき
4位南戸唯
5位向井こずえ
6位端本ちなみ
7位外村美鈴

『ん?あれ?ちなみちゃん票が急激に伸び始めてるな・・・・』
『このまえのバトルを見てまたお見舞い投票でもはじまったんだろうか?』

だが・・・・事態は思っていたほど甘くはなかった

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1位東城綾
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4位南戸唯
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6位向井こずえ
7位外村美鈴

『おーおーちなみちゃんが巻き返しはじめてる!』
『まぁこの3人はどちらかというと不確定要素みたいなものだから、多少の順位の
変動なんてのは十分予想できる範囲だわな・・・・』

だが、次の週から異変は
静かに起こった

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4位端本ちなみ
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6位外村美鈴
7位向井こずえ

(それにしても東城と西野すごい勢いでデッドヒートしているなぁ・・・・
北大路も善戦してるんだろうけど後一歩及ばずか、もう大分差が開いちゃってるし)

『あっ ちなみちゃんが唯ちゃんを追い抜いた〜〜すごい勢いだねぇ』
『そうだそーすさんがどういう反応しているのか面白そう』

BBSに投稿を確認しに行く

405名前: そーす 投稿日: 2004/05/24

ち、ちなみちゃん すごいですね〜
うーんやっぱり唯ちゃん人気ないのかな?
・・・・・・・(・∀・)

まぁいいかその分唯たんのこと独占できるし(〃▽〃)エヘヘ


(・・・・・な、なんか最近びみょーに危なっかしい内容の投稿になってるな)


このまま何事もなく続いて行けばいい
そう思い外村は何げなく更新ボタンを押した

406名前: プチデビル 投稿日: 2004/05/24

あーっひゃひゃひゃひゃひゃひゃ

そーすよぉざまーみさらせ

唯なんて雑魚なんだよ雑魚!このろ○おた○ー野郎がw

おめーなんか一生日陰で『唯たーん』とかゆめながらすごしてやがれ

はーやっぱりちなみちゃんは最高だよな

まぁオレのおかげなんだろうけど・・・・・



『ぐぁあああっ!なんでコイツがいるんだぁあああああっ!!』

おかしい確か3週間前にアク禁したはずだろう?



407名前: そーす 投稿日: 2004/05/24

>>406

あれ?プチデビルさんお久しぶり♪
あの日以来来ないから、てっきり逃げたのか、制限かけられてるのかと思ったよ〜

あともうアンタの相手はめんどくさいので、以後オレはスルーします
じゃそゆことで

(そ、そーすさんがスルーしてくれると助かる・・・
 ある意味一番厄介な人間が率先して行動すると全員従うもんだからな・・・)

(それにしてもどうして・・・・・・?)

408名前: プチデビル 投稿日: 2004/05/24

制限?何それ?確かに一時はこのBBSに入れなかったみたいだけどな
オレの技術にかかれば完璧よ

(串か・・・・・チッよけいな知恵をつけやがって・・・・)

カタカタカタ・・・・タン

(出た・・・・・・・)

『なんだ偉そうな事を言っているからどんな大層なものかと思ったら
 ただの漏れ串じゃん(プロバイダ串のこと)』

(BBSであんまり串規制しすぎると、迷惑がる人も多いから出来ないんだよな・・)
(まぁ・・・・・暴れない限りほっといても特に害はないか)

だが翌週外村は愕然とすることになる

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『ぶほっおおおおお!?』

き、北大路が抜かれた!?
そんな馬鹿な!?3位と4位の間では1万票以上の差があったはずだぞ!
一位の西野や二位の東城でさえ日に1000票行くかいかないかだ
この数は異常すぎる・・・・・・

『おかしい』

不審に思った外村はキーボードを叩き始める

画面に出たデータを見た瞬間

(なんで今まで気付かなかったんだ?俺・・・)

『チッ くだらないテクなんか使いやがってっ』

そう・・・・出したのは管理画面

それも投票してきた人物のIPを時系列で表す類のものである

外村の予想通り・・・・・規則正しい文字の羅列が並んでいる

プチデビルの生IPと例の漏れ串が交互に並んでいる

外村は同じ人物・・・・つまり同じIPの人間が連続投票できないように設定してある
不正投票をなくす為だ

『完全な票の裏操作じゃねぇか・・・・・』

(しょうがないな この串止めるか・・・・)

『それにしても・・・まさかコイツ一人で毎日こういう作業を繰り返してきたのか?』

泣けてくる・・・・・

あまりにも無意味な時間の浪費に・・・・

(こんなことするぐらいならもっとましな時間の使い方があるだろうに)

(お前の執念だけは本物だと認めてやるよ・・・・あばよプチデビル)

そして・・・・・断罪の剣を振り下ろす

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(やっともどったな・・・・・3位と4位が5000票以上の差になった)

だが外村は忘れていた 己が認めるほどの執念の持ち主プチデビルの
おそろしさ・・・・・・いや決して過小評価していたわけではない
ただ見誤っていただけだ

次の日の夕方・・・・・・・

3位 端本ちなみ

『うがーーーーーーーっ』突如大声を張り上げる外村

ドンドンドン!

『どうしたの!?アニキ!』

あまりの大声だったのか扉の向こうの廊下から美鈴の声が聞こえる

(ど、どうやって一日で5000票以上の差をひっくり返したんだ?)
(いや・・・・まずは確認してみないと・・・・・)

管理画面を見てみる

『・・・・・・・・・・』

(こ、ここまでやるのか、普通)

『今度は匿名プロキシかよ』

そう以前と全く同じ方法である。

ただ前回と違うのは使っているのがIPナンバーのみが表示され
サーバを特定することができない類のプロキシ
色々なタイプがあるが

俗に匿名串と呼ばれるものだ

(一体いつ寝てるんだ?プチデビル)

ドンドンドンドンっ!

(あーうるさい)

ガチャ

『なんだよ美鈴うるさいなぁあ!オレは今忙しいんだよ』

『なんだはないだろ?いきなりアニキの部屋から大声が響いてきたから
心配して慌てて起きてきたんじゃないか!』

見ると美鈴の目の下にはクマができている

『あ、ああ・・・・・・・すまなかったな 起こしちまって・・・・・』

(なんでこんな時間に寝てるんだ?)

外村は自分を心配してきてくれた妹に素直に謝る

『・・・・・それより、どうしたの?』

『ああ・・・・なんでもない・・・・大したことじゃ・・・・』

ガンッ

『〜〜〜〜〜〜〜〜〜っつ!!!』

兄のすねを蹴り上げる美鈴

『大したことないんだったら、わめくな!騒ぐな!』

ドカドカドカ・・・・・

『あー心配して損した・・・・・』

美鈴はブツブツと文句をいいながら部屋に帰っていく

蹴り上げられたすねを必死に抑えながら外村
『と・・・・・とりあえずこの串も制限かけておくか・・・・』
カタカタカタ


そう・・・・・そしてこの日から始まる

外村とプチデビルの努力と根性のイタチゴッコが・・・・・・・

外村が規制する。プチデビルが別の串で投票。このくりかえし。

案の定外村がいくら制限をかけてもどこかから未使用の串を探し出してくるプチデビル

もうすでにプチデビルの生IPも規制してある

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『ふーっ』

だが、外村の努力のかいあってか・・・・・
一時期優勢だったプチデビルも徐々にその勢力を弱めつつある

『もう大丈夫だろう・・・・・・・・・・』

一人にも限界がある。
仮に今までのペースで24時間全く眠らず(と仮定して)
投票を行ったとしてもこの差をくつがえすことは出来はしない

(パソコンはしばらく見たくない・・・・・)

精も魂も尽き果て外村はベッドに横になった


『おふぁよ〜〜〜ああ・・・はふぅ』
大きな欠伸をしながら朝の挨拶をする外村

『おお ヒロシ どうだ?勉強ははかどっているか?』

朝食の席で新聞を見ながら父親が返事をする

親には勉強で徹夜している・・・・・と言ってある

その間部屋にも食事を運んでもらっていたので、父親の顔を見るのも久しぶりだ

『もー お父さん 食事の時間くらいは食べることに集中してくださいな・・・・』

『はは・・・すまん』

『そういえば・・・・・・』

美鈴は?と外村が問いかけようとした瞬間。

がちゃ・・・・バタン

玄関から声が聞こえる

『ただいま〜〜〜〜』

『おはよう・・・ お父さん お母さん ふわ・・・・』

『こらぁ!! 美鈴!!! 一体何時までどこに行ってた!?』

びくぅ

(な、なんなんだ?)

父親の突然の大声に内心びびる外村

『ど、どうしたの?』

(もぐもぐ)

外村は朝食のパンを咀嚼しながら母親に事情を訊く


『言いなさい!誰の家に泊まっていたんだ?』

『だから何度も言ってるでしょ!?そういうんじゃないって・・・・』

『やましいことがないのなら、理由をきちんと言いなさい!』

『うるさいっ!私だって言いたくないことの一つや二つはあるのよ!』

『なんだとっ!それが親に向かって言う言葉かっ!!!』

(ど修羅場・・・・・・)

『実はね・・・・美鈴ちゃん最近夜家に帰ってきてないの・・・・』

『ふーん・・・・』

(反抗期・・・・・なのかな?)

外村は大して気にならなかった

子供はいつか親の元から巣立って行くものなんだから・・・・


その日の午後

『いってきます』

学校から帰ってきた美鈴は夕食を食べた後・・・・
外出の支度を始める

『美鈴ちゃん・・・・今日は何時に帰れそう?』

明らかに心配の入り混じった様子で母親が問う

『ん・・・・ごめん。お母さんわからない・・・・』

表情に一瞬翳りを落とし美鈴は申し訳なさそうに答える

『母さん!そんな親不孝な娘は放っておきなさい!』

居間から父親の怒鳴り声が聞こえる

『来月・・・・にはいつもの私に戻っているから・・・・』
『もう少しだけまって・・・お願い』

美鈴はこみあげてくるものを必死に抑え
声を震わせながら答える

『じゃあ・・・・行ってきます』



『一体何があったんだ?』

あれから数日経っても、美鈴は毎日夜になると同じようにどこかにでかける

『よし・・・・・!』

(たまにはアニキらしいことしてやらないとな・・・・)


『いってきます・・・・・』

今日も申し訳なさそうに玄関に出る美鈴
最近顔色もひどく悪い
頬もこけ見た目にもわかるくらいやつれ果てている


(それに・・・・)

『・・・・・・・・』
『・・・・・・美鈴ちゃ・・・うっ』

父親は何も言わない
母親は時折思い出しては口元を押さえている

(このままだと家庭崩壊にもなりかねんしな・・・・)


美鈴の後をつけていく外村。
美鈴は慣れている道なのかスタスタと迷わずに目的地を目指し歩いていく

(美鈴・・・一体どこへ行く気なんだ・・・・?)

外村の不安とは裏腹にどんどん先の方へ進んでいく美鈴

(あれ・・・・?ここは?)

そこは外村にとっても馴染みのある場所であった

(どうして・・・・こんなところに・・・・何の用があるっていうんだ?)

美鈴は建物の一角に向かっているらしい・・・・・

(あ、あそこは・・・・!?)


看板を見てみる

(インターネットカフェ・・・・『バイナリティ』?)

『まさか・・・・』

きょろきょろ

案の定

周りに誰かいないか確認した美鈴はそそくさとその店へ入っていく

少し遅れて外村もついていく

(どうしてこんな所に用があるんだ?)

『いらっしゃいませ♪ 毎度ありがとうございます』

制服に身を包んだ若い店員らしき男が美鈴に頭をさげている

(毎度・・・そんなに常連なのか)

美鈴は店員に何かを注文したあと、レジで清算をして奥の方に入っていく

(ちょうどいい・・・・真相を確かめてやる)

ぴんぽーん

がーっ

美鈴が視界から消えたのを確認して、外村は店内に入る

『いらっしゃいませ♪会員証はお持ちですか?新規の方でしたらメンバーズカードをお作り致しますので、
 この用紙にご記入ください』

『あ・・・・はい』

外村は差し出された用紙に文字を記入していく

必要項目に一通り記入し終わった頃・・・・
先ほど美鈴に挨拶をしていた店員が空のトレイを片手に戻ってきた

『あの・・・・ちょっとお聞きしたいんですけど』

『はい?』

『いや・・・・さっき高校生くらいの女の子が入ってきたでしょ?こう黒髪のおかっぱで額のところで分けている・・・・・・・・・・』

『あの・・・・お客様 どちら様でしょうか?』

明らかに不審がった店員が訝しげに外村に質問する

『あ、ああ すみません 申し遅れました 外村ヒロシと言います。』
『さっき入ってった美鈴の兄でして・・・・・』

『ああ♪美鈴ちゃんのお兄さん?』
学生証を提示するとすぐに信用してもらえたようだ

『いや・・・・最近ね 美鈴の帰りが遅いとかで親が心配しているんですよ』
『それでこっそり後をつけてきたらこの店に入っていくのが見えたもので』

『なるほど・・・・・・』
店員さんはすぐに納得したようにうなずいている
いい人みたいだ・・・・・

『なので、出来ればこのことは美鈴にはご内密に・・・・』
『おまかせください』
合点がいったのか軽く自分の胸をたたく

『それで肝心の美鈴についてなんですけど、アイツいつもはここで何をやっているんですか?』

『うーん・・・・・ちょうど1〜2週間前あたりから利用され始めたお客様ですけど、毎日これくらいの時間にご来店されてはインターネットをされているくらいですかね?おい・・・今日は何時間になってる?』

『あ、はい。店長。ええ・・・・と12時間・・・・ですね』

この人どうやら店の責任者らしい

『すごいな・・・・今までで最長記録なんじゃないか・・・・』

異常な時間である

『あの・・・・ひょっとして美鈴。まさかずっとここで?』

『はい・・・・大体朝方近くまでパソコンをご使用になられてお帰りになります』

(うーん)

外村は考え込む

『あの・・・・・・』
バイトらしき店員がおずおずとカードを差し出す

『あ、ハイ!』

『会員証ができましたので、これを』

『あ、すみません』

『本日は何時間ご利用になられますか?追加料金は一時間毎に1000円となります』

『ええっととりあえず2時間で・・・・・』

ピッピッレジに何か打ち込む店員

『あの・・・・・できれば美鈴からは死角になるような席でお願いします』

『お飲み物はいかがいたしますか?』

『じゃあコーヒーをおねがいします・・・・』

『では2階席へどうぞ』

代金を支払うと
店員が案内してくれる

(ふーん この店清潔だし、店員の対応も丁寧だよな 今度からはたまに利用してみるか・・・)

客が集中しやすいよう、
快適に利用できるようにするためだろうか
席と席の間は普通のネットカフェよりはるかに広い。
だがその分1フロアに対してPCの占有数が少なくなっている。

(だから2階席もあるのか・・・・・・)

そして案内された席につくと

(なるほど・・・・・)

美鈴の席は1階にある

向こうからは階段と手すりが死角になっていてこちら側は見えないが、
こちらからは常に美鈴の後姿を確認することが出来る

『いい席ですね。どうもありがとうございます』

『お飲み物はすぐにお持ちいたしますので・・・』

案内した店員はすぐにさがっていく。

(さて・・・・・)

(潜入は成功した・・・後はあいつに気付かれないようにっと・・・)

(とりあえず)

じっと・・・・・・美鈴の行動を見張ってみる

先ほどからPCの画面に向かって何やら打ち込んでいるみたいだ・・・・

(何を見てるんだ?)

しばらく様子を見守っていると

店長と呼ばれていた男の人がコーヒーを運んできた

『あっ すみません』

『どうです?何かわかりました?』

『いや・・・・・さっきからじーっとPCに向かって作業しているみたいなのですが、一体何を

やっているのかなぁって?』

『さぁ・・・・・詳しくは私も存じ上げませんが、どうやら投票系のサイトによく行かれているみたいですね』

『投票系・・・・・ですか?どうしてそのように?』

『私も一度拝見させていただいたことがあるのですが、彼女のところにお食事を持っていった
他の店員達に話を聞きましても、どうやら同じ内容の掲示板にアクセスしていたらしくて・・・・』

『なるほど・・・・・・』

外村はあごに手をあてて考え込む

(何かひっかかるんだけど・・・・・・)

『あっ そうそう!』
突如店長が何か思い出したように掌の上でぽんと叩く

『これは直接的には関係のないことと思われますが、たまにお友達と名乗られる方がいらっしゃいます』

『お友達?』

『・・・・・特に不審という方ではありませんが・・・背格好も妹さんと同じくらいでしょうか?』

『当店ではいつもお食事をされて帰られますよ』

(特に・・・・・めずらしくないな)

事実、食事だけが目当てでネットカフェに出入りする客もいる

この店もどちらかというとそちらの方が売りなのだろう?

奥の方には食事専用の座席もある

シンプルだが、手入れが行き届いていて、くつろげそうな雰囲気だ

(でないとこれだけのスペースを無駄遣いして採算が合うわけないだろうし・・・・)

『そのお友達が何か?』

『いつもこれくらいの時間に来られては妹さんと何か会話されています』

ブイーーーーーン

『あっ来られましたよ。あのお客様です』
『すみません・・・・私用事の方がありますので、これで失礼いたします』
『お力になれず申し訳ありません』

『いえ・・・・・』

外村は目を見張った



『すごく・・・・・参考になりました』


意外な人物がやってきたからだ


その女生徒は軽快にスカートを翻しながら、一目散に美鈴の元へ駆けていく



『お客様〜店内ではお静かに』


彼女の事は外村もしっている




『ちなみはいいんですぅ♪』



(端本・・・ちなみ・・・)

するっ

頭のどこかで・・・・

複雑にからみあっていたひもが徐々にほどけていく





2人の会話が気になった外村は階段の陰に隠れながら

美鈴の席に近づいていく

(ここまでか・・・・)

これ以上近づけば、彼女らの視界に入ってしまう

『っ・・・・っい・・・・つ・・・・』これは美鈴の声か

『だっ・・・・す・・・・・っ・・・・』こっちは端本のだな

♪〜♪ 〜〜〜〜〜♪

店内の音楽のボリュームのせいだろうか?

彼女たちも少し声のトーンを落としているようだ

『き、聞き取れねぇ・・・・・』

(しょうがない・・・・危険を承知でもう少し近づくか)

思いさらに2人に近づこうとしたとき

(あれっ?心なしか音量が下がったような・・・・)

すこしたつと音楽自体が止んでいた

見るとレジの方で店長が何事かを店員に指示し、CDのようなものを渡している

(曲目を変更する時間だったのか・・・・・)


千載一遇のチャンス!!


とばかりに外村は2人の会話に再度聞き耳を立てる

だが

それでも声が小さすぎて正確には聞き取れそうもない

(単語くらいなら拾えそうだな・・・・)



『ねぇ・・・みすず・・ちゃ・・・今日 ・・・・ルマ・・・・で・・た?』
ちなみが何事かを美鈴に聞いている

『は・・・も・・さ ゴメン・・・な・・い まだ・・・で・・・ない』
疲れた表情で美鈴が答える

『つかえ・・い・・・・ね あ・・・ない・・・と あの・・・ヒミツ・・・・ばら・・しちゃう・・・』
ちなみ少し不機嫌になったらしい・・・・

『やめ・・・ぇっ・・・やくそ・・・く いうこ・・・ ・・・くからぁ』
美鈴の顔が愕然とする

『だっ・・て・・・いう・・・と・・・けない こ・・・・っき・・ちゃうんだから!!』

そこでパソコンの画面の方をみるちなみ

美鈴が身体をずらしたおかげだろうか
一瞬
スクリーンが外村の目に映る

(あれは・・・・!?)

つい先日まで昼夜問わず見つめていたレイアウト

見間違いようもない・・・・

(オレのサイト!?)

『・・んだ・・・・んぜん・・・駄目・・・ない』
ちなみの顔がますます不機嫌になっていく

『ごめ・・・・さい・・・でも・・・・ひ・・じゃ むり・・・・・・』
もう半分失神寸前のような表情で美鈴はちなみに懇願する

『きょ・・・ノルマ・・・・ふや・・・・しか・・・みたいね』
意地悪い笑みを浮かべたちなみが美鈴の耳のそばに口を近づける

『えっ?・・・あ わた・・・し・・・・えれ・・・ない・・いえ・・・・に』
美鈴は泣きそうな顔でちなみに詰め寄る

それを軽くあしらいながら
『じゃ・・・・ばらし・・う・・から・・・・そ・・・が・・・いや・・ら さっ・・・と はたら・・・・さい!!』
それを最後にちなみは身を翻す

(やべっコッチに来るっ!!)
慌てて階段の陰に身を隠す外村

だがどうやらこちら(2階)の方に用があるわけではないらしい

外村のいる階段のそばを通ったまさにその時

『一位はこのちなみがふさわしいんだからっ!!』

そしてちなみは奥のテーブルの方に向かっていった



(・・・・・・そうか・・・・・・・・そういうことか・・・美鈴)

外村は今までの話を頭の中で整理してみた

(美鈴は端本に何かヒミツを握られ脅されている・・・・)

(毎晩明け方近くまでここでパソコンを使用している)

(そして見ているのはオレのサイト)


(美鈴が見ていたという投票画面・・・)

(ちなみの『一位』という発言・・・)

導き出した一つの推論

(おそらく・・・・・いや・・・かなり濃厚な可能性だ)






『プチデビルは端本ちなみ・・・・・』


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