TAKE6 回想(飛行機中編1『大草の弱点』) - そーす 様



『大草さん!本当〜にごめんなさい!!』

先ほどからずっとうなだれたままの唯
唯達3人は大草の服をひとまず乾かそうと
化粧室の方に彼を引っ張ってきた

『もういいよ。唯ちゃん』

『唯ちゃんもドジなんだから、大草さんの洋服を汚すだなんて』まゆこ

『天然な所は相変わらずよね・・・・・』めぐみ

さらに追い討ちをかける2人組

『しゅん・・・・・』

うなだれる唯

『ま、まあまあみんな仲良くね( ̄ー ̄)ノナデナデ』

さすがに気の毒に思ったのか大草が唯をなぐさめる

『やってしまったものは仕方がないよ 僕は全然怒ってないから・・・
 うん!唯ちゃんの気持ちは十分伝わったよ ありがとう!
 ね・・・・だからそんなに謝らないで』

『は、はい・・・・(かーっ)』

大草の手は先ほどからずっと唯の頭をなで続けている

『あの・・・・大草さん・・・そろそろ手を・・・・』

『唯ちゃんが元気になるまでナデナデしてあげる』

『え・・・・・あ・・・・でも(モジモジ)』
(ど、どうしよう・・・・・すごく嬉しいけど・・・・でも、もうちょっと)

『唯ちゃ〜ん もう元気になったんじゃない?』

『そうね〜なんたって唯ちゃんから元気をとったら何ものこらないからね♪』

『う、うん・・・・・でも(ちら)』

わずかに顔を赤らめる唯。

だがまゆことめぐみを見た瞬間途端に青くなる

(う、うらやましすぎるっ!お、大草さんとあんなに親密に〜〜〜〜)
(そもそもなんで私がこの役じゃなかったのよ〜〜〜)
(しょうがないでしょう。ジャンケンで決めたんだから)

((と に か く !!!))

(唯ちゃ〜ん 後でお仕置きだからねぇ・・・・・ゴゴゴゴゴゴ)

『ぴゅいっっつ!!!!!!』

可愛らしい悲鳴をあげる唯

『も、もうもういいです。大丈夫です!お、大草さん!ほらね♪も、もう元気♪』

『うーん、でもちょっと顔色悪いよ・・・・大丈夫かな〜?』

(コツン)

『あ・・・・・・・』

青くなった顔がまた赤く火照り始める


(ぶちっ)

何かが切れる音がした

『お、大草さ〜ん そ、そろそろ服を乾かさないとね』

しびれをきらしたまゆこが提案する

声が笑っていない

『私ドライヤー持ってますんで、とにかく脱いでくださ〜い』

めぐみはドライヤーを片手にもう一方の手を差し出す

目が笑っていない

『あ・・・・う、うん・・・わかったよ』

二人の迫力に押された形で服を脱ぎ始める大草



(嫉妬されるのも好きなんだけど、もてる男はつらいよねぇ)

しかしそこはさすが百戦錬磨のモテ男

『ありがとう♪まゆこちゃん』

(  ̄ー ̄)*

大草スマイル炸裂!!!(上半身裸バージョン)

『は、ひゃい〜 ど、どどどういたしまして〜〜〜!!』

『これ よろしくね♪ めぐみちゃん』

(  ̄ー ̄)*しゃららら〜ん きらきら

めぐみに脱いだ上着を渡す

『あ、は、はい・・・・ありがたくちょうだ・・・・(ハッ)いえっっ!!!す、すぐに乾かしてきますんで』

そしてめぐみはおもむろにコンセントを差し込むとドライヤーのスイッチを入れた

完璧なフォローである


(作戦司令室)

携帯電話の回線を開きっぱなしでトモ子

『う〜ん。な〜んか頼りないなぁ・・・・本当に大丈夫かしら?』

そして次の指示を飛ばす

『北原隊員・・・・ただちに次の作戦を実行せよ』

『・・・・・・・・・・』

『?北原隊員???・・・・北原さん!!・・・おーい沙恵ちゃ〜〜ん』

『(ハッ)あ、ハ、 ハイ!なんの用でございましょうか?隊長殿・・・・・はぁ〜〜〜』

(この娘・・・・ターゲットの裸に見とれてたわね・・・・)

はぁ〜〜

 軽く額を押さえるトモ子

『そんなことで大丈夫?次の作戦を実行して、早くね!でないと服がかわいちゃう』

『は、はい・・・・・・す〜〜は〜〜〜す〜〜〜は〜〜〜〜』

長い深呼吸のあと、ややあってから返事が来た

『玉砕覚悟で頑張ります!!!』

(砕かれちゃあ困るんだけど・・・・)


『お、おおお、大草さんっ!!』

魔法瓶を持った沙恵が大草に声をかける

『ん?なんだい北原さん?』

(  ̄ー ̄)*大草すまーーいる

よろっ・・・・

突然たちくらむ沙恵

(大草さんの裸・・・裸・・・・裸・・・・・ハァハァ)

『だ、大丈夫かい?沙恵ちゃん!?』

ブッ

(お、大草さんが私を名前で・・・・しかも両腕で私をっっ・・・・沙恵、幸せ・・・もう、死んでもいい)

『さ、さえちんっ!はなぢ〜〜てぃ、ティッシュ てぃっしゅ〜〜』

唯が慌てだす

『あ〜〜私は今手が離せないからまゆこっ!!!カバンから取って来てっ!!!』

『う、うん!』

座席の方にティッシュを取りに行くまゆこ

(沙恵普段が大人しい分、こういう時の刺激に一番弱いからなぁ)

ちーん・・・・

沙恵は鼻にティッシュをつめたままもういちどチャレンジする

『ところで何かな?用事?』

『は、は、はいっ!そのままじゃあ風邪を引くと思って・・・暖かいの、飲み物を用意したんです!』

『そうなの?ありがとうっ!いただくよ♪』


(再び作戦司令室)

携帯を通して会話を聞いていたトモ子はほくそえむ

『ふふふ・・・・・一時はどうなることかと思ったけど何とかうまく行きそうね・・・・
 つかさにちょっかいを出す野獣大草よ〜〜〜貴方の命運ももうすぐ尽きるわ』

ドボドボドボドボ・・・・・

カップに飲み物をそそぐ音が聞こえる・・・・

(それそれ〜〜ぐーっとイケ!ぐーっと・・・・!)

一人拳を握り締めるトモ子

『・・・・・・・・・(しーん)・・・・・・・・・・・』

『???(何かあったの?)』

向こうの音が静かになった

聞こえるのはめぐみのドライヤーの音だけだ

『あの〜〜ちょっと聞きたいんですけど・・・・』

沈黙を破ったのは大草の声

『何ですか?コレは』



大草に質問された沙恵・・・まさかこんな事態になるとは思っていなかった

『何って・・・・あの・・・・』

『いや・・・・・何が入っているのかな?というかすでに飲み物でもないような・・・・ハハ、ハ』

そう・・・・・魔法瓶からカップにそそいだ液体は
奇妙な緑色・・・・しかも常にブクブクと泡立っており、硫黄の匂いがする

(しーん)

『か、か、か、身体に良いものですっ!!!』

サッ

結局うまい言い訳が思いつかなかった沙恵は大草にカップを差し出す

『か、身体にいいのなら、沙恵ちゃんのみなよ〜〜』

見た目まさに『毒』の液体に大草はたじろいでいる

『ぞ、ぞんなぁ・・・・・』

半ば涙声になる沙恵

『お、大草さん飲んでくださいっ!』
『そ、そうですよ〜大草さんのために入れたんですっ!』

友人の助けがはいった

『き、きっともっとかっこよくなりますぅっ』
やや見当ハズレな気もするが・・・・

飲んで〜〜飲んで〜〜〜

娘たちの背後に無言のプレッシャー感じた大草

さすがに命の危険を感じたのか

『め、めぐみちゃんっ!!もうそろそろ乾いただろっ!服貸して!』

『ま、まだ・・・・・あっ!!』

多少は濡れているが、体温で乾かないこともない

服を来ながらそそくさと出て行こうとする


(作戦司令室)

『た、隊長!どうしましょう!大草さんが出て行っちゃいます』

沙恵の悲痛な叫びが聞こえる

(な、なぜだ〜〜〜〜〜!)

(私の作戦は完璧だったはずなのに・・・)

トモ子は頭を抱える

『あの・・・・ところで、これ一体なんなのですか?』

もうすでに作戦失敗の予感が脳内を占めていたトモ子はわずらわしそうに返事をする

『こんな時のために用意しておいたトモ子特製スペシャルドリンクよっっ!!見た目イマイチだけど、効果は抜群っ!!』

『あ、味は・・・・?』

『どろりくどい味よっ!!!!!』

『・・・・・・・・・・・・・』

言葉を失う

(こんなの無理にきまってる・・・・)

匂いをかぐだけでも吐き気をもよおしてきそう


(あ〜〜〜どうしようどうしよう あの男 座席にもどったらきっとまたつかさにちょっかいを
出すに決まってるわっ!!!そして不埒なことなんかも・・・・きーっ)
(とにかく次の手を考えないと)

そして
トモ子が次の策を講じようと考えた刹那・・・・・・・救世主が現れた


『あ〜〜あ、大草さんの『ちょっといい所見てみたかったのに〜!』』

何気ない一言を唯が口にした瞬間

ぴくっ

今にも外に出ようとしていた大草が立ち止まる

(反応したっ!!??)

慌て携帯へと指示を飛ばすトモ子

『北原隊員!とにかく褒めて褒めて褒めまくるのよ』

『は、はいっ!』

『お、大草さんかっこいいです〜』

『素敵ですっ 最高ですぅ 大草さん』

まゆこも続く

『かっこよすぎて私・・・わたし』

ちらっ

((((やりすぎだーーーー))))

だが、効果がなかったのか

めぐみの身体を張った行動には目もくれず

そそくさと大草は外に出ようとする

(反応しない!?じゃあどうして!?さっきは反応したのに!)

トモ子は先ほどの言葉を反芻した

『ちょっと いい所見てみたい・・・・』

少し調子を合わせてみる

『ちょっといいトコみってみったい♪・・・・(ハッ)』

そ、そうかーーーーーーーー!

『北原隊員!大草の所属クラブを教えてっ!!!』

『さ、サッカー部ですけど』

瞬間

トモ子の脳内コンピューターが作動する

彼女の頭の中には都内の高校の部活動コンパ全てのデータが詰まっている

『泉坂高校 サッカー部 検索完了』

ぴーん

時間にしてコンマ一秒

『北原隊員っ!今から言うことをちゃんと聞いてねっ!』

『は、はい』



大草はドアノブに手をかけまさに出ようとしている

『えっ?でも私・・・・・そんな』

『いいからやりなさ〜〜〜いっ!!!』

トモ子の声は携帯を通しても唯たちにも聞こえるほど大きかった


『じゃあね・・・・』

大草は振り返り手を振り、ドアを・・・・・・・・・・・・・・・

『かっこい〜い オ・オ・ク・サ・サン〜』(森のくまさんのメロディ)

びっくーん

音が聞こえるほど反応する大草

『いいと・こ・ろ・・・みてみ〜た〜いっ!!』

そして驚愕の表情で振り返る

『ど、どうしてそれをっ!!!』

『あっ そーれ いっきっき〜のき〜〜〜〜 あそ〜れっ いっきっき〜〜の〜〜〜き〜〜〜』

『う、うううっ』

頭を抱え込む大草
心なしか沙恵の方に・・・・・・・
いや沙恵の持っているカップのほうに近づき始めている。


(フフフッ)

(体 育 会 系 体 質 !)

(断れまい・・・・・・断ったら最後よ〜〜先輩のシゴキがまっているのよ〜)

そして

  大草を死へと導く

   魔の合唱が始まる

『『『『
かっこ〜い〜いっ!!おおく〜さ〜さん いいと・こ・ろ〜〜〜みてみ〜た〜い〜

あっ そーれ いっきっき〜のき〜〜〜〜 あそ〜れっ いっきっき〜〜の〜〜〜き〜〜〜

たくま〜し〜いっ!!おおく〜さ〜さん いいと・こ・ろ〜〜〜みてみ〜た〜い〜

あっ そーれ いっきっき〜のき〜〜〜〜 あそ〜れっ いっきっき〜〜の〜〜〜き〜〜〜』』』』


『ああ・・・・・あ・・・・』

もうすでに大草はカップを手にしている

そして意に反して謎の毒液を口に・・・・・口に・・・・




『今よっっ!!!!娘達』



唯が音頭をとる



『お、大草さんのぉ〜〜〜〜!ちょっとい〜いトっコ みってみったい あそーれっ!』


『『『『イッキっ!イッキっ!イッキっ!イッキっ!イッキっ!イッキっ!イッキっ!』』』』



『イッキッ!イッキッ!イッキッ!イッキッ!イッキッ!イッキッ!イッキッ!イッキッ!』

トモ子も電話越しに叫ぶ


(もう・・・・・・・・・駄目だ)

諦めた瞬間

今までの態度がなんのその

大草は背筋をシャンと伸ばし左手を腰に当てる

そして軽快に

『大草っ いっきま〜〜すっ♪』

ごくごくごく どろどろどろ

『・・・・・・・・・・』

自分たちが勧めた行為とはいえ

全員言葉を失っていた

ややあって・・・・・・・・

(ぱたり)

『ふ、ふふふっ あははははっはっは・・・・・ おーっほっほほほほほ!!!!』

トモ子は抑えきれない喜びのせいか いきなり声高らかに笑い出した

ぞぞぞおぞぞぞおおおぉおぉ

(か、関わり合いにならない方が・・・・・)

機内の乗客は見てみぬふりである

(作戦・・・・・成功っ!!!)

喜びに打ち震えているトモ子

と、そこへ・・・・・・

『あ、あのののの・・・・・トトトト、トモ子さん?』

電話の向こうで沙恵の声が震えている

『な〜にぃ?』

間違った呼び方であったが、気にしない

『大草さん・・・・・・・・・・・動いてないんですけど、心臓が・・・・』


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