TAKE11回想(飛行機中編6『大草の受難?』)- そーす様



記憶を掘り下げている外村

あの後・・・・・投票数が飛躍的に上がったにも関わらず
 
(善戦むなしく・・・・・・残された時間が少なかったんだな)

結局

端本ちなみは3位のままだった

だがプチデビルは荒らしてはこなかった・・・・・・

アクセス規制もすでに解除した

(まぁ・・・・・・口調は相変わらずだが、他の女の子やそのファンへの中傷はなくなったよな)



とにかく・・・・・・・・

外村のHPめろん100%は現在も大盛況で公開中である

コレ系サイトのある意味頂点を極めた外村

彼が次に目指す野望とは


ズバリ




新 規 開 拓





外村は常々思っていた・・・・・・・・





真中の周りには不思議と美少女達が集まる




それを利用してのサイト運営は予想通り大繁盛だった 

だが最近もう一つの事実に気付いていた





真中(エサ)に集まる美少女達


そして





美少女達(エサ2)に集まるハイエナ軍団


そのハイエナの中には数は少ないがライオン・トラ・ヒョウもいる




そう・・・・・・・外村が次に目指しているのは『女性向け投票サイト』 

もう名前はすでに決めている・・・・・・その名も





 バ ナ ナ 1 0 0 % 



この合宿にきたのもそのBL系HPの栄えある

第一号モデル 大草と天地を撮る必要があったからだ


そして・・・・・・・・ 


時は 動き出す



目の前のトモ子は少し訝しげな顔をしている

『大草・・・・の写真がほしい?(ハッ)って・・・・貴方・・・・・まさかっ!』

トモ子は思わず口元を抑え、

(そ、そうなの・・・・そういうことなの・・・・・)

外村に ちらり と視線を送っては顔を赤らめる

(キャー♪いやーん♪まさかこの旅行でそんな女性向けな展開がまっていたなんて・・・・・)

『あの〜〜〜〜』

(・・・・・・・どんなことを想像しているのか大体は想像つくんだけど・・・・・・)

外村はげんなりした表情で様子を伺う


『結局・・・・・・どうするの?』

『おねがいするわ!』

(即答!?)

目がキラキラ いや 爛々と輝いている

心持ち鼻息も荒い


(さっきの・・・・対応と随分違うんですけど)

『じゃあ・・・・・・行ってきます』

『頑張ってねぇ〜〜〜〜〜♪』

なぜかハンカチを振りながら

外村にエールを送るトモ子

(くくく・・・・・・・・・外村君と大草がくっつけば、もう大丈夫じゃ・・・ひぇひぇひぇ)


ぎぃ・・・・・・・

化粧室のドアを開ける外村

『カメラマンのご到着です〜〜〜〜』

しかし中の光景を見て愕然とする

なんと

唯以下桜海4人衆が


全員大草のフェロモンにやられて倒れている


『お、大草しゃん・・・・・はにゃ〜〜』
『す、素晴らしいです・・・・大草様〜』
『お、大草さん・・・・・そんな・・・・瞳でハァハァ』

『お、大草さん・・・・駄目・・・・私なんて・・・・ダラダラ』

約1名 鼻血を噴き出しているものもいるが

(こんな状況じゃ、とてもじゃないが撮影なんてできねぇ)

外村はとりあえず4人とも部屋の外へ避難させることにした

(くぅ・・・・・お、重い・・・・・脱力してるからだけじゃないだろ・・・・)

(ダイエットくらいしとけよ)

自分の非力さを棚に上げて一人愚痴りだす外村

(クソ・・・・後で 肉体労働分の必要経費請求してやるからな・・・・)

そしてトモ子の方を睨み付ける



(☆∀☆)きゅぴーん

何かを納得したのか、おもむろにうなずくトモ子

(この子達は私にまかせといて・・・・・・)


(ん?結構太っ腹なんだな・・・・・)


思惑のすれ違い


そして外村はまた戻っていく

『ふ、ふっふっふっふっふ・・・・・・・・ふがっ がははっははっはっははははははははっ!!!!』

先ほどとは違い、今度は品のないオヤジの様に大声で笑い出すトモ子


ぞぞぞおぞぞぞぞぞぞぞぞおぞぞぞおぞおおっっっ!!!!!

(((((か、関わり合いにならないようにしよう・・・・・))))))
(トモ子・・・・・・どうしちゃったの?なんだかかわいそう・・・・・ぐすん)

機内の乗客は相変わらず知らん振りである


(分かったわよ〜!心に響いたわよっ!!ズドーンと来たわよっっ!!!)
(・・・・・さっきの合図)

(『二 人 っ き り に さ せ て く れ』)

(ああ・・・・もう思う存分しっぽりと楽しむがいいわ)

ひとしきり笑ったトモ子は

外村が入っていったドアを

まるで何かを見守るように愛おしく・・・・・・

みつめ続けていた



パシャ パシャ パシャ

外村は様々な角度から
大草の写真を撮っている

(大体・・・・こんなもんかな・・・・・・・)

『うーん イマイチ何か物足りないよなぁ・・・・・・』

外村が一人ごちる

(じーっ)

ビクッ

(それに・・・・・なんか視線を感じるし・・・・)


(それっ そこだっ!ガーっと行けっ!!ガーっと!!!)

トモ子は

一人拳を握りしめ

ドアの隙間から中の様子を覗いている

(もーっ♪ 外村君って 意外とシャイなのね・・・・・)

(まだ全然触れていないじゃな〜い♪)

さながら巨○軍を応援しているサラリーマンのようなトモ子に浴びせかけられる視線


((((((今度は一体何やってんだ?)))))))

(ううっ トモ子・・・・・・アンタぁいつの間にそんな娘に・・・・・しくしく)

一人つかさはハンカチで顔を抑えている


『どうしたんですか?トモ子さん・・・・(ぼそっ)』
『ひゃっ!!あんっ・・・・』
集中していて気付かなかったのか
突然の・・・しかもあらぬ場所への刺激に思わず身をすくませた

いつの間に復活したのかまゆこがそっと耳打ちしている

『まゆこっ!隊長でしょ!!今は・・・・』(ひそひそ)
『そんなことより何やってるんですか?トモ子先輩』(ひそひそ)
『めぐみも・・・・・アンタラなぁ』(ひそひそ)
鼻に脱脂綿を詰めた沙恵が頭を抱える

『(しーっ 静かに 今いい所なんだから・・・・)』
『(えっ?いい所って・・・・・・・・?)』
『(今ね・・・・・・・この中に外村君が入っているのよ・・・)』
『(外村さん・・・・・・どうしてですか?)』
『(彼・・・・・・・どうしても大草を撮影したいからって・・・・私に頼み込んできてね)』
『(貴方たちじゃ・・・・・大草を撮ることなんてできないでしょう?)』(ぎろり)
『(はぁ・・・・)』
『(面目ありません・・・・・)』(しゅん)

『(それに・・・・・フフフ・・・・・)』

そして

トモ子はもったいぶったように一拍おくと

『(外村君どうやら 大草に『ホ』の字みたいなのよっ♪)』

『・・・・・・・・・・・・・・・・・』

一瞬意味が分からなかった3人



『(・・・・・・・・カーッ)』

最初に気付いたのがまゆこ

『(そ、そんなっ!大草さんとられちゃうじゃないですか!)』

『(ま、まあまあ こんなの見る機会なんて滅多にないんだし・・・・・)』

続いてめぐみが今にもドアを開ける勢いのまゆこを制する

『(で、でも・・・このままじゃ大草さんが・・・・・)』


そこでめぐみが声のトーンを落とすと

『(まゆこ・・・・・貴方・・・・・大草さんと大草さんの裸・・・・・どっちが好き?)』

『(ええーっ・・・・・そ、そんなの・・・・答えられないよぅ♪)』

顔を両手で覆うまゆこ




『(はだか・・・・・・・・)』

振り返ると鼻に刺した脱脂綿を赤く染めあげた沙恵がすごい勢いでうなずいている


『(全員意見は一致したみたいね・・・・・)』

コクリ・・・・・

4人は同時にうなずく


ゴ ク リ


そして喉をならす



ビクッビクッ

『うーん なん・・・・か段々と悪寒がひどくなっている気がする』

外村は身震いをする

『風邪・・・・なのかな?』

そして顔を上げて大草の方を見る

『うーん・・・・・何が足りないんだろう?』

『色気・・・・・・はあるよなぁ・・・・・』 

その時

はらり

大草の前髪が何本か垂れ下がる

『おおっと・・・・・いけねぇいけねぇ』

(この部屋密封されてるから湿気がすごいんだよな・・・・)

『(あちぃ・・・・・・・・)』

外村はYシャツのボタンを何個かはずし、胸をはだける

そして

(ああ・・・そうか大草起きないんだったな・・・・・げーオレが男の髪をセットするのかよ〜)

大草の方に向かって歩きはじめる


一方その頃 扉一枚を隔てた外では・・・・・

『(いったーーーーーーーーーーっ!)』トモ子の声が喜びに打ち震えた
『(きゃーーーーーーーーーっ!!)』いつの間にかまゆこものりのりだ
『(服をはだけるなんてとうとうヤル気ね)』一人冷静に分析するめぐみ
『(お、大草さん ハァハァ)』すでにこの先に起こりうる展開を想像して身もだえする沙恵


全員目が血走っている

(どきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどきどき・・・・・・)

ダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラダラ

鼻血もたれている


『うげ・・・・・・男がつけるコロンって対女性専用のものなのか?』
外村は大草の髪をかきあげる
クンクンっ
(うーんやっぱり男のオレには合わんな・・・・この匂い)


『(外村いったーーーーーーーーーーっキ○か!?いきなりキ○なのか!?うーんあなどれん)』
一人感心してつぶやくトモ子

『(あ・・・・・・あっあ・・・・・・ち、近づいてますよう!!顔が・・・・特に口がっ!!!とにかく口がぁ!!!!!』
まゆこがやたら興奮して実況している

『(うーん私としてはもうちょっとムードがあった方がいいんだけど・・・・・・)』
めぐみはいささか物足りない様子だ

『(お、大草さん!!!ハァハァハァアハァ)』
耐え切れなくなったのかやおら顔を扉に押し付ける沙恵

『(ちょっちょっと沙恵押さないでよぉっっ!)』

いきなり背中を押されためぐみが不満を口にする

『(大草さんが・・・・・大草さんがハァハァハァハァ・・・・・・)』

沙恵は目の前の光景に心を奪われたらしい
制止の声が聞こえていない

『(ちょっ痛っ!沙恵ちゃん落ち着きなさいっ!!!)』トモ子

『(ちょ、ちょっとこのままドアを開けて入る気!?)』まゆこ

『(大草・・・・さん・・・・美しいハァハァ)』

『(沙恵ちゃんやめなさいっ!)』

ドアの前では押し合いへしあいが繰り返されている
中に入ろうとする沙恵を全員がおさえつけている・・・・・

と そこへ



『あれーーーっ!みんなぁっ!こんなところで何してるの?』



いつの間に起きてきたのか唯が大声で騒ぎ出す

『わーなんかあるの?その中』

全員人差し指を口に当てて(しーっ)のポーズ

『しーっ?』

沙恵も今の声で正気にもどったのか振り返る

『あはははは・・・・・!沙恵ちんっ!また鼻血でてるぅ!』

『『『『(しーっしーっしーっしーっしーっしーっしーっしーっしーっ)』』』』

全員が必死になっている様がよほどツボにはまったのか

唯の笑い声が止まらない・・・・・

『あははっははっはははははははははははは・・・・・・』

がちゃ・・・・・

『何やってんだ?お前ら・・・・・・』
外の物音に気付いたのか
トモ子達が振り返ると
外村が扉を開けて立っていた


外村はしばらく不思議そうな顔をしていたが、
ふと思い立ったように手をぽんと叩く

『ああ・・・・ちょうどよかった・・・・アンタラちょっとモデルやってくんない?』

『『『『『  は ぁ っ ?』』』』』

決定的シーンを見逃してしまった無念さもいつのまにやら消えうせ

全員思わず外村に聞き返した



『じゃあいくよ〜〜〜〜シーン1 スタートぅッ!』

今目の前では唯と大草が並んで座っている

じーっ

外村は今度はビデオカメラに持ち替えた

(そう・・・・・足りなかったのはムード)

目の前の光景を撮りつつも驚きの表情が隠せない外村

(思ったとおりだな・・・・・)
(女と並んだだけで・・・・存在感がぐっと増しやがった)

『唯ちゃーん もっとムード盛り上げて〜〜〜』

『む、む、む、・・・・む〜ど?』

今ひとつ分かっていないようだ・・・・・

(というかガチガチに緊張しているし・・・)

唯は先ほどからぴくりとも動かない・・・・・

(いや・・・・・・・)

緊張しているときの癖なのか・・・・

ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち
ぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱちぱち・・・・・・

(こ、高速でまばたきしてる・・・・)

『うう・・・・・・んっ・・・・すぅ〜〜〜』

その時大草の体が少しかしぃだ


ぽてっ


『(ボッ!!!!!!)』

『(〜〜〜〜〜〜〜お、大草しゃんっ!!!)』

寝返りをうった大草の頭がいつの間にか唯の肩にのっている

『(ドキドキドキドキドキドキドキドキドキ・・・・・・)』

『いい、いいよ〜〜〜その表情っ!恋人みたいだっ!!』

ノッテきた外村が非常に無責任なことを口にする

『こ、こ、こ こいびと〜〜〜〜〜〜〜っ!?』

ますます赤くなった唯がもじもじしはじめる




その様子を見ていると

『っつ!!!』
『(ま、まゆこっ!!!!落ち着きなさいっ!!!)』
めぐみは突然暴れだしたまゆこを抑えつける
体の下では未だにじたばたともがき続けている

『(ちょっとっ沙恵も手伝いなさい!!)』

沙恵の方をみるが彼女はまゆことは別の意味でヤバそうだ

フラフラ・・・・

今にも倒れそうである

『(沙恵ちゃんは自分の順番までもたないんだから外で待機してなさいっ!!!)』

トモ子が沙恵に指示をする

いつのまにか呼び方も素に戻っている

『(だ、だってぇ・・・・さっきから唯ちゃんばっかり)』
少し正気に戻ったのか、まゆこがぶつくさと文句を言う

『(落ち着きなさいってば・・・・次アンタの番でしょ!?)』
『(う、うん)』


『((☆∀☆)もっとすごいことすればいいじゃな〜い)』

めぐみの言葉が悪魔の囁きに聞こえたまゆこであった


『はい、次〜〜〜〜』

『はにゃら〜〜〜〜ほにゃら〜〜〜ふら〜〜〜〜ふら〜〜〜〜』

まだまだ熱の覚めやらない唯はフラフラしている

結局

あの後も動かずじまいだったのだが

それで本人は満足しているようで・・・・・

『は〜〜〜〜〜一生の思い出・・・・』

そんなおおげさな・・・・・

サブタイトル《電車の中で ぽっぽ・・・》





『まゆ子早くしなさいっ!!!』

『(すーっ はーっ すーっ はーっ)』

『まゆ子っ いっきまーすぅ!!!』

勢いよく歩きはじめるまゆ子

(すごいこと・・・・・すごいこと・・・・・・・大草さんと・・・ハァハァ)

しかし両手両足が同時に上がっている

ガッ

『あっ』

つまずいた

『きゃあっ!!!』

そのまま

大草の顔に・・・・・

(キスは・・・・・・まだ早い!)

寸前で顔をそむけたまゆこ

だが勢いあまって大草の胸に飛び込んでしまう

『あっ・・・・・』

自分がしてしまったことを今更ながらはずかしく思い

慌てて離れようとする


しかし


すっ

『あっ・・・・・』

『おいで・・・・・僕のかわいい子猫ちゃんたち・・・・・ムニャムニャ』

夢の中でも女の子に追いかけられまくっているのだろう・・・・

大草はまゆこを抱き寄せたまま微動だにしない

あげく・・・・・


すりすりすりすりすりすりすり


『あひゃああ・・・はぁ・・はっ・・・ちょっ・・・・大草・・・さ・・・みんな・・・みてます・・っって』

まゆこのほっぺたにほお擦りまでする始末


(本当は起きているんじゃないのか・・・・・・?)

トモ子は今更ながら不安になる


『はにゃら〜〜〜〜 ほへ〜〜〜〜〜〜ふら〜〜〜〜ふらふら〜〜〜〜〜』

さっきの唯と同様 

まゆこもフラフラになりながら外に出て行く・・・・

(サブタイトル《(子猫ちゃんと)午後のまどろみ》)



『はい!次〜』

『は〜い♪』

どうやらこの中ではめぐみが一番まともらしい

緊張が微塵も感じられない

(なかなか・・・度胸のすわった娘よね・・・・)

その様子を見たトモ子は感心する

すたすたと大草のもとに歩いてゆくと



バッ



いきなり

大草のシャツの前をはだけた

((やりすぎだ〜〜〜))


そして・・・・・・そのままの勢いでズボンを・・・・・

ガゴンッ!!!

『あたぁっ!!!』

振り返るとトモ子が拳骨を握り締めたままめぐみを見下ろしている

『あ・ん・た・わ・ね・ぇ・〜』

『へへへ・・・・・・・』

『へへへじゃなーーーーーい!』

サブタイトル《悪い魔法使いに囚われた王子様救出大作戦!》



『沙恵ちゃん〜〜〜次出番よ』

『は、は〜い・・・・・・ふらふら〜〜』

(本当に大丈夫かしら・・・・・・?)

トモ子は途端に不安になる

大草の元へゆっくりと歩み寄る沙恵

そしてゆったりと・・・・・・・



倒れこんだ



『お、大草さん・・・・幸せですぅハァハァ』


がくぅ


貧血のせいか沙恵は床に顔を押し付けた状態で

気を失ってしまった

あたり一面には血溜まりが広がり続けている


倒れたときについたのか大草の手首にもベットリ沙恵の鼻血が付着している


((ふ、不吉だーーーー!!))


サブタイトル《 無 理 ○ 中 〜アンタもこ○してアタシも〜》


『ろ、ろくなもんがとれなかったわね・・・・・』
『後は・・・・・・アンタだけだな・・・頼りは・・・・』
『え?私は嫌よ・・・こんな野獣と○○(ピー)なんて』
『だ、誰もそこまでは・・・・(汗)』

『と、とにかく嫌よ!!』
トモ子は叫び部屋を出ようとする

その背中に外村は声をかける

『西野がとられても・・・いいのか?』

びくっ

『ひ、卑怯だわ・・・つかさのことを持ち出すだなんて』

外村に恨みがましい視線を投げつけるトモ子

『アンタもあの娘達に同じ事を言っていただろう?』

勝利を確信したような笑みで意地悪く答える外村



しばしにらみ合いが続き

『くっっっ!!!!!』

トモ子が折れた



『・・・・・・すー・・・・・・・・・・はー』

(もう・・・・・・こうなったらやぶれかぶれよっ!)

半ばやけくそ気味につぶやいたトモ子

カッ

『さぁー最後の仕上げだ!シーン5 すたーとぅ!!』




カメラが回った瞬間・・・・奇跡が起こった


突如


大草の首に抱きつく


いや


正確には体全体を使って巻きつくトモ子


スラッ


幻想的な空気の中

切れ長の瞳がいっそう印象的に映る



(想像通り・・・・・いい素材だ・・・・・)


(しかも自分で表情まで作ってやがるし・・・・・)



女は化ける



(女狐め・・・・・・)

外村の頭にそんな言葉がふと浮かんだ・・・・・


『そこ 胸の中に手を差し入れて』

すっ

なんの逡巡もなく

開きかけた大草のシャツに手を差し込む

(プロ・・・・・・だな)

先ほどの躊躇いなど微塵も感じさせない

流れるように

そしてまるでそうすることが当然のようにポーズをとり続けるトモ子

(いい・・・・作品・・・・・・になりそうだ)



『は〜〜〜〜〜〜ふぅ これが・・・・・大人の・・・・女性』

いつの間に戻ってきたのか4人衆がその2人の姿に見とれている


『トモ子さん・・・・・すごく綺麗』


『すごくお似合いって感じ・・・・・・』
 批判家のめぐみさえ嘆息している

『トモ子さん・・・・・・・・ああ・・・・・・・・』
 沙恵は・・・・・・・妄想はしていない

 ユメより素晴らしい光景が目の前にあるから


そして



いよいよクライマックス


『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』


全員・・・・彼女たち

いや彼女の一挙一動足を見守っている

トモ子が大草の斜め上に移動し

おもむろに彼の頭を抱きかかえる・・・・・



まるで


愛しい恋人を包み込むかのように


自慢の黒髪が


何本か大草の頬にかかっている


すっ


それらを払わず

大草の顎を

 持ち上げると・・・・・・




そして・・・・・・


まるで眠り姫に口付けをする

王子様のよう


トモ子の・・・・・・唇が


大草の・・・・・無防備な・・・・・


サラララララ


黒髪が

優雅にこぼれた




『『『『〜〜〜〜(ポーッ)〜〜〜〜〜〜〜〜』』』』


(・・・・・・まさか・・・・・ここまでやるとはな・・・・)

『ヘッ』

(アンタの『覚悟』と『心意気』・・・・・しっかり受け取ったぜ!!)


『はい!カットーーーーーーーーー!!』

外村が合図したと同時に
緊張していた空気が一気に弛緩する

『『『『 は ぁ − っ・・・・・・』』』』

後ろで熱っぽいため息が聞こえる



『あああああっ!汚らわしいっ!!!私がこんな野獣にっ!野獣に〜〜〜〜〜〜〜』

素にもどったトモ子が、今にも死にかけている大草に止めを刺そうとしている

『うーん・・・・・うーん・・・・・・・・・・・』

身の危険を感じてか大草は蒼白い顔のまま苦しそうに唸っていた・・・・・


サブタイトル『魔性の女神』

その後 伝説へと語り継がれていくことになる名シーンだ



(あああああ・・・・・・・・・・・・・・・・・・)
頭を抱え髪をかきむしるトモ子

『があああああああああああぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!』

そしてよっぽど我慢がならなかったのか突如大声を張り上げている


『だ、大丈夫ですか!?お姉さまぁぁああああん♪』まゆこが心配そうな表情でトモ子に歩み寄る
『た、タオルどうぞっ!トモ子姉さまっ!』ここぞとばかりにめぐみがタオルを差し出す
『す、すごいっ とにかく すごかったよぅ・・・トモ子先輩・・・』唯まで尊敬の眼差しでモジモジしている
『と、トモ子さん・・・・・あの・・・・その・・・・・今度・・・・・・』なぜか沙恵はハァハァしている

たらーっ

鼻血が垂れた

『あ、またっ!?大丈夫?沙恵ちゃん』

(と、トモ子様が私を名前で・・・・しかも両腕で私をっっ・・・・沙恵、幸せ・・・もう、死んでもいい)

『お、お姉さま・・・・』

がくりっ

『さ、沙恵ちゃんっ!沙恵ちゃんーーーっ』

『さ、さえちんっ!またはなぢ〜〜てぃ、ティッシュ てぃっしゅ〜〜』

唯が慌てだす

めぐみは倒れてきた沙恵をささえながら

『あ〜〜私は今手が離せないからまゆこっ!!!カバンから取って来てっ!!!』

『う、うん!』



(何やってんだ・・・・・あいつら?)

トモ子を見る視線が妙に熱っぽくなっている桜海4人衆


外村はさっきのシーンをもう一度確認する

(これは・・・・・・・よかったのだろうか?)

唇は

重なっていない?

いや・・・・

正確にはその瞬間こぼれてきた黒髪のせいで

肝心な所が見えないでいる

(しかし・・・・妄想を掻き立てるのなら、コッチのほうが)


そしてもう一度彼女らの方を見る

『『『『 お 姉 様 〜〜 ♪』』』』

『えーい 近寄るなっ!うっとおしい!!』

一年生たちの妙に色気のある視線に身震いをしたトモ子は

彼女らを蹴散らしながら自分の席に戻っていく


(まぁ・・・一件落着か・・・・・・・)

『撤収〜〜〜〜〜お疲れ〜〜みんな〜』

誰もいなくなった化粧室の中

外村の声だけが空しく響いた



だが・・・・

何か忘れていないだろうか?

そう・・・・・非常に大事な事を・・・・・


『・・・・・・・・・・・・』

化粧室に駆け込んだ綾 
彼女の心は入り乱れている
つい先ほどとは全く別の意味で

目の前で繰り広げられている光景に思わず絶句してしまう

そう・・・・彼女がその目にしたものとはっっ!!!!


『お、大草君!?』

目の前ではひごくやつれた表情の大草が
あられもない格好で放置されている
明らかに様子がおかしい

(お、男の人のは、はだか・・・・・)

一瞬躊躇い
少し顔を赤らめながら

(綾・・・・違う・・・これは・・・確認よ・・・・)

一歩一歩近づいていく

『お、大草君・・・・』

ゆさゆさ

ゆさゆさゆさ・・・・

起きないかととりあえずゆすってみる


近くで見てみると顔色が悪いのが一層分かる

(ま、まさか・・・・・・)

震え上がりそうな脚を必死で抑えつけながら

脈をはかろうと

大草の腕をとる


にちゃり・・・・・


綾は見た

自分の手が真っ赤な血で濡れているのを


そして 見た

大草の手首が血で真っ赤に染まっているのを


『きっ・・・・・・・・・』


ゴツン


『・・・・・ぁ・・・・』

ぱたり


『ふーっ 間一髪だったわね』

『ああ・・・・・危うく俺たちの計画がばれる所だった・・・・』

『肝心なことを忘れていたわ・・・・』

『すっかり忘れていたからな・・・・・』

足元には頭に大きなたんこぶをつくっている綾が倒れている

(だ、れ・・・・?)

『とにかく処理しましょう・・・・・』

『了解・・・アイツにばれると後々面倒だし』




(この・・・・・・声・・・・どこ・・・・・か・・・・・・・・)
(・・・・・・・・・・・・・・・・・)


何者かの声を最後に


綾の意識は


急速に


闇に落ちていった・・・・・


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