「喪失」 2 - お〜ちゃん 様
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『こんにちは、西野つかさ様。いや、つかさちゃん。
僕たちはいつも君のことをずっと見ているんだよ。すっごくかわいいつかさちゃんをね。
でも、つかさちゃんは僕たちのこと何て全く見てもくれないんだね。
どうしてなのかな?僕たちが一番つかさちゃんのことを思ってるのに。
つかさちゃんの大事な友達を預かってる。
今日、一緒にいたかわいい女の子って言えばわかるかな?
彼女には何もしていない。
まだね。
この意味がわかるよね?
つかさちゃんの返答次第だよ。
誰にも言わずに、黙って下の住所の場所に来て欲しい。そうすれば、彼女には何もしない。
警察や他の誰かに知らせたとわかった時点で、この子に対して、ちょっと大人な行動を取らさせてもらうよ。
着いたら部屋の番号を押せば、オートロックを開ける。
黙って部屋まで来ていただきたい。
あぁ、そうそう。この手紙がイタヅラだと思ってるかもしれないね
証拠の写真を同封したから確認してよ
それで、俺たちの行動を判断して欲しい
つかさちゃんの良心に期待しているよ 』
手紙の内容が何度もアタマの中で繰り返される
そして、何よりも封筒に入っていたあの写真だ
背景は明らかに唯の部屋だった。女の子らしい部屋であることと、以前一緒に買い物したクマのぬいぐるみが見えたことで確信できる
そのかわいらしい部屋の中で、眼から大粒の涙を流し、口にタオルを巻きつけられ、両手と両足を縛られ顔に足を押し付けられてる唯の姿
制服は乱れ、スカートは捲し上がりかわいらしい下着が見える。シャツのボタンがはじかれていた。胸元から覗いた白いものが、唯の今の危険な状況を知らしめるに充分であった。
大通りから少し離れた閑静な住宅街。
綺麗な茶色の今風な外壁と、オレンジ色の照明が建物の高級感をかもしだしている。
「ここね・・・・唯ちゃん、待っててね・・・」
恐る恐る部屋番号を押す
『やぁ、つかさちゃん。待ってたよ。どうぞ。』
低い男の声が聞こえ、同時に玄関のドアが開いた
エレベーターの前には小さなソファがあり、壁際には観葉植物が置かれている。
オレンジを主体とした灯りは、本来なら高級な雰囲気を出すのであろうが、今はなぜか不気味に感じる
やっぱり・・・淳平くんに知らせたほうがいいかな・・・
携帯を握り締める。
まだ見ぬ相手と、唯への思いが不安となって込み上げて来る
・・・ダメ・・・
もし相手にバレたら、きっと唯ちゃんが・・・
チン
エレベーターの扉が開いた。
行き先階のボタンを押し、ゆっくりとエレベーターが動き出す
階数を知らせる数字の進み具合がとてもゆっくりに感じられた
チン
扉が開くと、目の前に真っ直ぐに伸びる薄暗い廊下
その廊下の一番奥、407号が唯のいる部屋だ
[407号 南戸 唯]
表札にしっかりと書かれている唯の名前。
扉にはかわいらしいクマのリースがかかっている。
唯ちゃん・・・
握り締めた手に更に力を込める。
手に持った写真の光景が甦る
ためらってる場合ではない
今は早く、唯を助けなくては・・・
一つ深呼吸をすると、小さく震えた指をインターホンに伸ばす
プーーー
返事があるまでの時間がとても長く感じる
『やぁ、つかさちゃん。どうぞ、カギは開いてるよ』
汗ばむ手をドアノブにかけ、ツバを飲み込むと同時につかさはゆっくりとドアを開けた・・・
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