「南の扉をたたく者」 - 明日(めいび)様
――――――序章 <大草の晩ごはん計画>――――――
「ふぅ――――」
大草は考えていた。
「・・・失敗したなぁ、この前は。
あの機会に西野を落とそうと思ってたんだけど。
やっばり、ガード固いままなんだな、真中とは別れたってのに」
自室。
椅子に座って机に頬杖をつきながら、大草は独語していた。
「・・・いい案が浮かばないな。
この前みたいにダブルデートなら西野を誘えると思うけど。
あれは西野と真中が近づいただけに終わった。
油断してたよ。俺がカメラ買ってる時に真中が来るなんてね・・・」
―――そして、俺のいない間に西野は、観覧車に真中と乗った。
これだけでも俺が西野に好意的に思われていないのは判る。
そのうえ、帰り道で、西野が俺に言った言葉・・・・・・
「信用できない人間ナンバー1、・・・だったかな。
これは少し骨が折れそうだ――――――」
軽く首を振って、溜め息をつく。
西野を落とすという野心は、全く折れてはいなかったが。
「駄目だな、今日は。日が悪い。
西野落としは今度また考えるとして、今日は―――
――――――暇潰しでもするかな」
獲物は。
「ダブルデートの時に来てた・・・・・・前の合コンで高木が騒いでた女――――
ああ、―――南戸 唯ちゃん、だったっけ」
つーか、高木のやつ、ロリコン趣味だとは知らなかった・・・・・・
どこかで利用できるかも知れないな。――またいつか。
・・・あとは、真中になついていた、たしか―――東尾 繭子とか言う女。
あれもついでに。
「まずは繭子ちゃんからかな。
前菜は」
ひとり微笑んで、大草は立ち上がった。