壁のさきにあるもの - 藍 様
「淳平君っ!!今から海行こ!海!」
そう言われて俺は西野と近くの海に来た。
「西野、なんで海に来たんだ?」
「なんとなく・・・かな?ほら、海ってさ!波の音とか、鳥の声とか・・・。そういう自然の音とかで、気分転換できるでしょ?悩んでることとか、消し去ってくれそうで・・・。」
そういって西野は下を向いて黙ってしまった。
「・・・・何かあったの?」
俺がそういうと、西野は海に沿って歩き始めた。
「・・・最近、ケーキが上手く作れないんだ・・・。
日暮さんからも、ダメ出し受けちゃって・・・・。
やっぱり向いてないのかなぁ・・・?」
そういうと、俺の方を向いて、俯いたまま
「・・・・パリ・・・行かない方がいいのかな・・・。」
ポツリと、そう言った。
「西野・・・」
俺はどう言ったらいいのかわからなかった。
西野は頑張ってケーキを作っていて、作ってる時は物凄くイイ顔をしていて・・・。
思わず俺も俯いてしまった・・・。
「・・・・ごめん!
せっかく海に来たのに雰囲気台無しにしちゃったね。
もっと楽しいこと話そっか。」
そういって笑う彼女の笑顔はいつもと違うどこか悲しそうな顔をしていた。
「・・・・上手く言えないけどさ・・・。
誰だってそういう時期があると思うんだ。」
俺は必死になって西野を励まそうと思った。
「誰だって大きな壁にぶつかって、不安になると思う。でもそれを越えることが出来れば、一歩前進できるんだ。けど、そこで諦めちゃったら、その人のその道はそこで終わり。その大きな壁がゴールなんだよ。西野は皆を幸せにしたいからケーキを作るんだろ?頑張って、壁を越えて皆を幸せな気持ちにさせたくない?」
俺は自分の中にある考えを全て言った。
「・・・そうだね・・・あたし、忘れてた・・・。なんでパティシエを目指してるのか。」
西野はそういうと満面の笑みを俺にみせてくれた。
「ありがとう!
今日、淳平君を誘ってよかった!」
「いや、俺もなんか偉いこと言っちゃって・・・。
今頃になって恥ずかしかったり。」
そう言って俺は苦笑いをした。
「今日は本当にありがとね。よーしっ!ケーキ作り、再開しますか!」
「お、おう!」
「あ、そうだ!淳平君!」
「ん?どうしたの?」
「大好きだよ!!」
「・・・・ぇ!?」
「あははっ、淳平君、顔真っ赤!!」
西野は楽しそうに笑った。
「西野!その・・・お・・・俺も好きだよ!」
「ふふっ、じゃ、帰ろっか!」
「おぅ!」
俺は、西野の笑顔を守っていきたい。
いつか、このことを言える日がくるといいなと思って帰った。
〜END〜